今年6月以降続く原油価格下落が加速しています。下のグラフには反映されていませんが、直近ではさらに下落して70ドル/バレルを割り込んでいます。
その背景には、サウジアラビアがアメリカのシェールオイル潰しを狙っていることがあるようです。
コラム:OPECの静観が示す「新石油秩序」 | コラム | Reuters
OPEC最大の生産国であるサウジアラビアが米国のシェールオイルブームが沈静化するのを期待して、進んで当座の利益を犠牲にしたようだ。
Inside OPEC room, Naimi declares price war on U.S. shale oil | Reuters
シェール開発もあってアメリカの原油生産は驚異的に増加しており、約20年ぶりに輸入を上回っています。
2004年以降の原油価格の急騰は、高コストの油田開発を促進することになりました。
Citi Breakeven Oil Production Prices - Business Insider
これらの新規開発を採算割れに追い込むことがサウジアラビアの狙いと見られています。ロシアの石油王は、ドットコムブームのように、弱者が淘汰されて強者だけが生き残ると予想しています。
OPEC Policy Ensures U.S. Shale Crash, Russian Tycoon Says - Bloomberg
“In 2016, when OPEC completes this objective of cleaning up the American marginal market, the oil price will start growing again,” said Fedun, who’s made a fortune of more than $4 billion in the oil business, according to data compiled by Bloomberg. “The shale boom is on a par with the dot-com boom. The strong players will remain, the weak ones will vanish.”
原油価格の下落は日本経済にとっては朗報です。2003~07年や2011年~の景気拡大が実感を伴わなかった理由の一つは、産油国への所得移転が大きかったことにあります。所得移転が減少すれば、実感を伴った景気拡大が実現する可能性が出てきます。
原油価格が下がっている間に、経済再建の足掛かりを確実にしておきたいものです。*1
*1:あまり期待はできませんが。