衆院選:「アベノミクス」で応酬 8党幹事長・書記局長ら討論会詳報

2014年11月30日

8党幹事長クラス討論会で各党の訴えを掲げて記念撮影に応じる(左から)自民党の谷垣禎一幹事長、公明党の井上義久幹事長、民主党の枝野幸男幹事長、維新の党の松井一郎幹事長、次世代の党の江口克彦顧問、共産党の山下芳生書記局長、生活の党の村上史好幹事長代理、社民党の服部良一幹事長代理=大阪市北区で2014年11月29日午後2時1分、西本勝撮影
8党幹事長クラス討論会で各党の訴えを掲げて記念撮影に応じる(左から)自民党の谷垣禎一幹事長、公明党の井上義久幹事長、民主党の枝野幸男幹事長、維新の党の松井一郎幹事長、次世代の党の江口克彦顧問、共産党の山下芳生書記局長、生活の党の村上史好幹事長代理、社民党の服部良一幹事長代理=大阪市北区で2014年11月29日午後2時1分、西本勝撮影

 12月2日の衆院選公示を控え、与野党8党の幹事長・書記局長らが29日、大阪市北区のヒルトン大阪で開かれた政治討論会に出席した。関西プレスクラブの主催で、討論会は各党の主張▽クラブ側からの質問▽各党同士の討論の3部構成で進んだ。出席者は▽消費増税の延期▽アベノミクス▽原発▽安全保障▽議員定数の削減−−などをテーマに、約1時間半にわたって議論を展開した。

 ◇消費増税延期

 −−今回ほど違和感を覚える解散はない。議席を減らすリスクを冒してまで、なぜこのタイミングで700億円もの税金を使ってやるのか。首相の本音は?

 谷垣禎一氏(自民幹事長) 消費税10%への引き上げを1年半先送りすると、国民生活、日本の財政、社会保障にも大きな影響がある。こういうことで国民の信を問おうと決断された。私自身は(2段階で消費税10%に引き上げる)3党合意を、民主党の野田佳彦前首相と公明党と話して作ったので、非常に思いがある。先送りで国民に信を問うのは、すとんと落ちた。こんなにわかりやすい論理はない。ここから先、いつ信を問えるのか。来年度予算編成などを考えると、この時期になった。私は野党の時、早く解散に追い込むことを考えたので、野党から賛成していただけると思う。

 −−1年半先送りという首相の方針、判断をどう思うか。

 山下芳生氏(共産書記局長) 1年半先送りした後は景気がどうあれ、10%に上げるという増税宣言だ。今の景気悪化の一番の原因は消費税を8%に上げたことにある。これでGDP(国内総生産)が2期連続マイナスになり、個人消費が7カ月連続落ち込んだ。1997年に5%に上げた時も、今回8%に上げた時も暮らしは冷え込み、経済も落ち込み、財政も悪くなった。17年4月にそうならない根拠、保証はどこにあるのか、問われる。

 −−民主党内からは引き上げを凍結すべきだとの声もあり、増税時期も含めて党の考えが不明確だ。3党合意は破綻したのか。

 枝野幸男氏(民主幹事長) 現在の家計が痛んでいるのは、4月に8%へ消費増税したためではない。実質GDPは昨年12月期からマイナスに入り、消費税の駆け込み需要と反動減を挟んで現在も続いている。こうした状況では先送りはやむを得ない。しかし、先送りすれば家計が立ち直るのかは疑問で、(景気悪化時に増税を一時停止できる)景気条項を付けなければ無責任だ。3党合意は、定数削減と社会保障の充実が満たされてないという意味では壊れているとも言ええるが、この二つをしっかりやれということは、国会の中でさらに求めていきたい。

 −−10%への増税分を財源に、年金受給額の少ない高齢者800万人に月5000円を支給予定だったが、延期でできなくなった。

 枝野氏 他の予算を削減してでも、当初の約束通り実施すべきだ。無駄の削減と公共事業の財源で、社会保障の安定・充実に回すべきだ。

 −−公明党が主張する軽減税率は、自民党や財務省の一部が反対している。17年4月の増税実施時期に実現できるか。

 井上義久氏(公明幹事長) 自公の間で17年度を目指すと合意しており、17年4月に確実に実施したい。財源など課題はあるが、延期になった1年半の間に課題解決は十分可能だ。

 −−谷垣氏は軽減税率についてどう考えるか。

 谷垣氏 準備作業はこれから詰めていき、合意の実現を目指す。

 ◇アベノミクス

 −−アベノミクスについて。円安・株高がここ2年、同時進行してきたが、賃金の伸びが物価上昇に追いついていない。消費税も上がり、消費が冷え込んでいる。

 枝野氏 トリクルダウン(富裕層が豊かになれば、その富が貧困層に流れ落ちるという理論)の考え方が時代に合っていない。国内のグローバル企業は、人件費の安い国と競争している。収益が少しくらい上がっても、国内で作っているものは限られていて輸出数量も増えず、国内の賃金は上がらない。高度成長の時代は円安で輸出産業が潤ったが、今は違う。消費の低迷を改善するには、貯蓄を持っている高齢者にお金を使ってもらうことが必要。医療、介護、年金を充実させることが重要だ。

 山下氏 アベノミクスは格差拡大と景気悪化をもたらしただけ。この道を進めば暮らしも経済も壊される。枝野氏に共感する。トリクルダウンはグローバル化の中では通用しなくなった。国内では、雇用の破壊の問題もある。雇用の規制緩和の結果、派遣労働者は1990年に50万人だったが、2008年には400万人になった。企業収益が労働者の安定した雇用と賃金上昇に結びつかない仕組みになってしまった。これを変えないといけない。

 江口克彦氏(次世代顧問) アベノミクスの方向性は正しい。ただ、軌道修正をしなければならない点が多々ある。例えば金融政策で、大量に日銀からお札を流すことは、どこまでやるのか。これは麻薬みたいなもので、自民はどんどんこの緩和政策を拡大していくのではないか。さらに、財政出動はバラマキ傾向になってきている。本当に必要なものと、そうでないものをしっかりチェックしないといけない。

 松井一郎氏(維新幹事長) アベノミクスは否定しないが、自民は、既得権益に縛られて規制改革ができていない。政府に対し、大阪の中小企業が望んでいる規制緩和を要望し続けているが、いまだに議論中だ。アベノミクスの第三の矢のはずだった「岩盤規制」(業界団体などが改革に反対する規制)を打破させないのは、さまざまな団体から支援してもらっている自民の議員たちだ。農業、医療の規制緩和は自民の族議員が反対している。安倍政権が第三の矢を放てなかったことが経済がよくなっていない原因だ。

 谷垣氏 (経済政策については)いろいろな考え方があると思う。民主党政権で欠けていたのは経済成長への関心だった。初めから成長に関心がないという議論にくみすることはできない。成長政策をとった時、成長の過程でチャンスをとらえて伸びた人と、苦しくなった人がいる。そこをどう折り合いを付けるかが一番のポイントだ。成長の過程では必ず格差が起こるので、それを防ぎながらいかに全体の底上げを図るか。野党の議論でもどんどん取り入れていきたい。岩盤規制の突破など規制改革もやっていきたいが、全く不必要だと言えない規制もあり、議論に時間がかかっている。バランスを取らないといけない。

 村上史好氏(生活幹事長代理) 今回は経済政策の転換をはかる選挙だ。アベノミクスは国民の生活実態から見れば成功していない。谷垣氏は3党合意を実施すべきだと主張してきたが、消費増税先送りは失敗を認めたことになる。

 谷垣氏 個人消費が落ち込んだことを安倍首相は重く見たが、あらゆる手を打ち、必ず約束の期限には10%に持っていける。

 服部良一氏(社民幹事長代理) 残業代を支払う、勝手に労働者を解雇しないなど、当たり前のことが揺らいでいる。当然と思って享受してきた価値観、仕組みが揺らごうとしている。格差が広がり、2000万人の非正規労働者は飯が食えない社会でいいのか。当たり前の社会をいかに作っていくかが大事だ。

 ◇原発・エネルギー

 −−自民党は原発を「ベースロード電源」と位置付けている。前回衆院選で公約した「原発に依存しない経済・社会構造」から軌道修正したのか。

 谷垣氏 前回衆院選ではすぐに脱原発できるかのような議論が多かったが、そう考えていなかった。「原発はベースロード」という言い方をしているが、エネルギーにはいろいろな特質がある。エネルギー安全保障やコスト、環境負荷などさまざまな観点からベストミックスを探る必要がある。再生エネルギーの可能性を追求していくことははっきりしているが、すぐには代替し得ない。安全性を確認した上で原発の再稼働を進めることも必要だ。

 村上氏 我々の目指す方向とは全く違う。改めて問いたいのは福島の原発事故の教訓をどう生かすかだ。原発が稼働していない現状でもエネルギーは十分足りている。電気料金が上がる一つの要因は、円安による原油の輸入高にある。今の円安は異常なので、適正な円レートに戻す経済政策が必要だ。原発事故が起きれば復旧に何十兆円という費用がかかる。一時的な電気料金の値上げだけに目を奪われるべきではなく、将来にわたって日本のエネルギー政策をどうするか、考えることがより重要だ。

 ◇安保・憲法

 −−安全保障も国民の関心が高い。民主党は集団的自衛権の問題をどのように訴えるのか。

 枝野氏 安全保障は大きな争点だ。集団的自衛権が将来にわたって議論すべきテーマであることは否定しないが、尖閣諸島の問題など日本の領土・領海をどう守るかが今、問われている。民主党は領域警備法案を先の国会に提出した。領土・領海と直接関係ない集団的自衛権を議論するよりも、領土・領海を守る個別的自衛権の充実のための法整備を我々は着実に進める。集団的自衛権の解釈変更は立憲主義に反するものであり、許されない。

 −−民主党内も一枚岩ではないという指摘もある。

 枝野氏 どの党にもいろんな意見がある。私が申し上げたことは党内で決定しており、この考え方で結束している。

 服部氏 安倍首相が解散したのは、憲法改悪のための長期政権を作りたいからだ。集団的自衛権は他人のケンカを日本が買おうということで、歴代の政府見解も否定している。また、特定秘密保護法は民主主義の根幹を揺るがす大変危険な法律だ。施行されても、あくまで廃止を求める。沖縄の辺野古問題(米軍普天間飛行場の名護市への移設問題)といった問題が、本来の最も重要な争点だ。

 谷垣氏 誤解、歪曲(わいきょく)がある。我々が考えているのは、切れ目のない安全保障体制をどう作っていくかだ。閣議決定のポイントは▽離島防衛などの米軍防護▽PKO(国連平和維持活動)での他国軍隊の支援▽憲法9条の下で許容される武力行使とは何か−−の三つ。集団的自衛権の見直しによる武力行使には▽我が国、あるいは我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること▽これを排除して我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと▽必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと−−という三つの要件を課しており、非常に厳しい歯止めとなっている。

 ◇議員定数削減

 谷垣氏 「衆議院の定数削減もやらないで解散したのはいかがか」との意見がある。公明と相談して小選挙区の「0増5減」と比例を30議席削減する案をまとめ、各党協議会で30回近く議論したがまとまらなかった。自公で300議席以上持っているのにやらないと言うが、他党の考えを自公の数で押しつぶせとおっしゃっているように聞こえる。選挙制度はそういう議論はしない方がいい。

 枝野氏 比例だけを削減するとの提案は、選挙制度改革と定数削減を混同した提案だ。比例と小選挙区を同じ比率で減らす提案でなければ、少数政党は納得するわけがない。(自公政権が定数削減をやらないのは)全く理由にならない。

 松井氏 身を切る改革とは、政治家そのものが議席を失うことだ。これは過半数を持った政党が押し切るしかない。民主は09年衆院選の公約に掲げたのに、政権を取った時、なぜやらなかったのか。少数政党に責任転嫁するのはおかしい。

 枝野氏 選挙制度を変えるなら、少数政党にも配慮しないと権力の暴走になる。これは民主主義の原則だ。与党が自分たちに都合のいい案を出したら、少数政党が反対するのは当たり前だ。選挙制度は勝手に与党だけ、多数党だけで変えてはいけない。

 松井氏 増税に向けての定数削減なのだから、政権が身を切ることなくして増税なし、という態度は絶対必要だ。

 江口氏 松井氏と枝野氏が選挙制度でこれだけ対立している。野党で選挙協力してまとまるのか。政府と対抗するよりも、野党間で抗争が始まるのではと心配している。選挙協力という哲学について、もっと考えていただきたい。

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