阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」
「のれん代」のラビリンス
2014年11月29日 [reuters]
旧聞に属する話になるが、ファミリーレストラン・チェーンを展開する「すかいらーく」が10月9日に「再上場」した。2006年9月に創業家によるMBO(マネジメント・バイ・アウト、経営陣による企業買収)で上場廃止となって以来のことだから、およそ8年ぶりの株式市場復帰である。
公募価格と同じ1200円で初値を付けた後、1000円を割り込む場面もあったが、最近では個人投資家の人気を集めて一時は1299円に達した。
しかしその財務内容は首を傾げたくなるような妙なものだ。
のれん代が1463億円に上り、総資産の49%を占める。9月末時点の長期借入金1396億円とほぼ見合った額であり、のれん代を長期借り入れで賄っていると見られなくもない。のれん代を計上しなければもっと資産効率の良くなったであろうし、借入金も小さく抑えられたはずだ。
資本合計は866億円でしかなく、これとの比較でものれん代の大きさは異様である。
上場廃止となる前のすかいらーくにはのれん代(当時は連結調整勘定)がほとんど計上されていなかったのと比べれば、その大きさは一目瞭然だ。
万一、すかいらーくのブランド力に傷がつくような不祥事や事故が起きれば、国際会計基準を採用しているすかいらーくはのれん代の減損処理を迫られて、あっという間に債務超過に転落するリスクを内包している。
同社の四半期有価証券報告書にはこうした点についてリスク情報として触れていないが、これでは長期投資の対象にはなりにくい。機関投資家はこうした銘柄を積極的にポートフォリオに組み入れるのか疑問だ。
「再上場」とは言いながら、実質的には別会社がすかいらーくの社名を引き継ぎ、上場廃止となった旧すかいらーくは存続会社にはならなかった。のれん代が膨らんで資産規模が大きく見えるのもMBOによるもので、資産計上が認められるかどうか議論の分かれるところだったに違いない。
さて、実はすかいらーくののれん代について長々と書いたのは、別の大企業にネタを振るため準備運動なのだ。「のれん代のラビリンス」はほかにもある。
すかいらーくよりもはるかに大きな、別業態のこの上場企業を、月刊誌FACTAは創刊以来追い続けている。だが、その巨大な影響力に他誌はおろか、新聞もテレビも触れようとしない「日本のタブー」である。このタブーを破るメディアが一つくらいあってもいい。
そのバランスシートには、海外での企業買収に伴う巨額ののれん代が計上されている。買収当時からその投下資本の大きさが話題になっていたが、買収した子会社がさらに短期間のうちに新興国企業を次々と傘下に収め、活発なM&Aを繰り返すうちに、バランスシートの上っ面を眺めただけではその内容が見えにくくなってしまった。
この会社では実力派の元経営トップが去って数年経ち、重しが外れたせいか、こうしたM&Aにまつわる様々な評判や裏話が漏れ始めている。いや、メディアでただ一誌、この巨大企業を追うFACTAには、内部を含めて様々な情報が寄せられ、着々と蓄積されている。
お心当たりの企業は、いつか、それが堰を切ったように報じられる日が来ることを覚悟されたい。
投稿者 阿部重夫 - 18:54| Permanent link | トラックバック (0)