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薬学生が知っておくべき医薬品業界の「現状」とは?

そろそろ2016年卒の学生さんの就職活動のシーズンを迎えますが、これから就職活動を始められる薬学生のみなさんが目指す「医薬品業界」の現況は、実際のところどうなっているのでしょうか?

医療従事者が語る業界展望も非常に参考になると思いますが、今回は敢えて、第三者視点を重視するという趣旨のもと、医薬品・ヘルスケアセクター専門のアナリストであるメリルリンチ日本証券株式会社の渡辺律夫さんに、注目すべきポイントを語っていただきました。

「薬剤師=安定した仕事」という認識はもう通用しない

― 薬学生も含めて一般的に、「薬剤師」というのはかなり安定した職業だと思われている傾向があります。渡辺さんから見て、その点はいかがですか?

今となっては、そのイメージは全く異なるといえるでしょう。

確かにこれまでの薬剤師は、資格を持ち、薬局に勤めて一般的な「薬剤師の仕事」に専念していれば安定を得られたかもしれません。しかし、これからはそうはいかないと思います。もちろん中には素晴らしい理念を持ち、大変なご努力をされている薬剤師の方も多くいらっしゃいます。そうした「求められる薬剤師」と、そうではない薬剤師の差が顕著に出てくると思いますよ。

求められる役割が劇的に変化していく薬局薬剤師

― 薬剤師を取り巻く状況が変わってきた背景には、どういった業界、もしくはマーケットの変化があるのでしょうか。

薬局に関していえば、大きな変化は2つあります。

1つ目は、企業のM&Aが進んでいること。現在、調剤薬局は全国におよそ5万5千店あります。しかし日本薬剤師会によれば、将来的にはこの数が3分の1程度まで減少するという見通しだといいます。現時点ではまだ人手不足で売り手市場といわれていますが、そう遠くない将来、「薬剤師の資格があるからいつでも薬局に勤められる」という考えは通用しなくなるでしょうね。

そして2つ目は、国の政策です。政府が薬剤師に求める役割が徐々に変化しているのは、みなさんもご存じですよね。

特に、外来でも診療報酬の包括化※が明確に打ち出されることになれば、その仕事内容は大きく変わっていくでしょう。この政策の方向性はおそらく、2020年頃までにははっきりしてくるはずです。そうなれば薬剤師は、在宅医療など新しい分野への取り組みはもちろんのこと、医師と連携して患者1人ひとりに対し「どうしたら病気にならずに済むか」などということを考えて対処していかなければなりません。

現場ではすでにそうした取り組みに注力しはじめている薬剤師の方もたくさんいらっしゃるでしょう。ただ、受け身のままで、決められた業務をこなしているだけでは成り立たなくなるということです。

※外来診療報酬包括化…従来の加算型で報酬が決まる出来高払いではなく、決められた一定額の報酬から治療費が差し引かれていく制度。過剰医療などを抑えることにより、医療費抑制の効果が期待されている。

社会保障費政策の影響を大きく受ける製薬会社

― では、製薬メーカーについてはいかがですか?

極端な例えかもしれませんが、現在の製薬メーカー各社の現状は、ある意味ゲーム業界などに近い、厳しいものだと思います。その背景にあるのは、主に2つの大きな変化です。

1つ目は言わずもがな、社会状況の移り変わりと国の政策ですね。現在の日本では、社会保障費の抑制が最重要課題として掲げられています。そのためには膨らみ続ける医療費を抑えるしか方法がありません。これはもう、日本の抱えるどうしようもない命題なんです。高齢化の進行によってより多くの医薬品が必要とされるという話もありますが、当然それに合わせて国の政策も変わりますから、あてにはならないでしょうね。

2つ目は医薬品の特許切れの問題で、業界では「2010年問題※」と呼ばれているものです。それを受けて、実際に大型医薬品(ブロックバスター)についても後発医薬品(ジェネリック)への切り替えが進んでいます。その影響は、各社に対し着実に表れはじめているといえるでしょう。

※2010年問題…1990年代に多数開発された大型医薬品の特許が20年の期間を経て一斉に切れ始め、大手メーカーの収益に影響を及ぼすと懸念されている問題。

投資家から見た、企業の将来を判断するための3つのポイント

― ところで、アナリストの方はどんな視点で企業の将来的な姿を予測しているのか、そのポイントを教えていただけますか。

私たちが基準とするポイントがいくつかありますので、製薬メーカーを例にご紹介します。まず1つ目、組織としての柔軟性を図る目安となるのが、外国人株主の持株保有率です。これが高い企業ほど外部環境の変化に対して柔軟であり、かつ組織内部の自由度も高いという傾向が見られます。外国人株主の動向は、その企業のカラーを判断するリトマス試験紙になりうるのです。

そして2つ目は、新薬と既存薬の売上のバランス。どちらかだけに売上の比率が偏っているのは、正直あまり望ましい状態とはいえないでしょう。新薬については、直近2年に発売された商品の動向をチェックします。いい薬であれば特許が切れるまで※は収益を得ることができ、業績もそれなりに安定するものですから。

そして最後は、その会社のM&Aの歴史をひも解いてみることです。過去のM&Aによってその企業には何が残り、何がなくなっていったのか。それを知ることによって、会社としてどんな事業、分野を重要視しているが見えてくるのです。

自分に合った企業を選ぶためには、このような情報を参考にしながら、自分が今後やっていきたいことと、その職場環境がマッチするかどうかを考えていく必要があります。就職は自分が社会人としてキャリアの一歩を踏み出す大切な選択ですから、この3つのポイント以外にも、様々な観点からじっくりと比較検討してみてください。

※医薬品の特許・・・現時点では、特許出願から20年間。

「人生のメニュー」が増えると共に、キャリアの可能性も広がっていく

― では最後に、就職活動をする学生へのメッセージをいただきたいのですが、やはり、就職活動をする時点で「将来はこういう分野、仕事に取り組みたい!」というこだわりや明確な方向性を持っていた方がよいのでしょうか?

もちろん、目指す方向性があるに越したことはありません。ただし、注意していただきたいことが1点だけあります。それは、新卒の時点であまりにも特定のことに固執しすぎるのは、ある意味危険だということです。

学生のみなさんは、どんなに優秀な方であってもまだ、いわば「人生のメニュー」のほんの一部しか見ていない状態なんですよね。そこに「今」並んでいるものだけを見て、「自分にはこれしかない」と決めつけてしまうのはもったいないですよ。

今興味があることがあったとしても、経験を積んで更に多種多様なメニューが増えてくれば、新たな分野に興味を惹かれていくこともあるはずです。ですから極端に言うと「医薬品に関わる仕事をする」というくらいの大きなフィールドで、キャリアを描く柔軟性も必要だと思いますね。

 医薬品業界のキーマンから現状とこれからのキャリアを知れるチャンス

外資系製薬会社の採用部門の元マネージャーが仕掛けるキャリアイベント。就職先を迷っている薬学生や、製薬会社志望の学生必見!採用活動が本格化する前に、医薬品業界を知る絶好のチャンスです。

Career Insights
開催日時:2014年12月11日(木) 18:00~19:30
所要時間:1時間30分
開催場所:TKPガーデンシティ永田町

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