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J1仙台残留 渡辺監督、奮闘7ヵ月

J1残留を決め、笑顔でスタンドのサポーターに手を振る仙台の渡辺監督

◎心つかみ苦境救う

 サッカーJ1仙台は29日、来季のJ1残留を決めた。苦しいシーズン。序盤に沈んだチームを立て直したのが、4月上旬から指揮を執った渡辺晋監督(41)だ。選手、コーチとして在籍14年目。周囲から「ナベさん」と慕われる実直な人柄でチームを支え続けた。

 この日、仙台市泉区のユアテックスタジアム仙台で徳島に2−1で勝利した瞬間のベンチ。渡辺監督は雨でぬれたスーツ姿のまま、選手、スタッフの肩をたたき、ねぎらった。
 大宮が負けてJ1残留が確定した。渡辺監督はピッチで行われたセレモニーで「このような成績になり、おわび申し上げる。悔しい。残留が目標ではなかったが、何とか一つのノルマを達成できた」と神妙な面持ちで報告。約1万7000人の大観衆から「ワタナベ」コールが起きた。
 今季序盤、グラハム・アーノルド前監督の下、チームは危機的状況にあった。4月6日、開幕から6戦勝ちなしに終わったアウェー浦和戦の控室。「言った通り動かない選手が悪い」と試合中に采配を放棄した前監督は反省会もせず球場を出ようとした。慌てて連れ戻したのが当時ヘッドコーチだった渡辺監督。チームの空中分解を懸念しての行動だった。
 選手起用などで前監督への不満をコーチ陣にぶつける選手もいた。「常に監督と選手の板挟みで心を砕いた彼の存在が、当時のチームを救った」と、首脳陣の一人はみる。手倉森誠元監督(青森県五戸町出身)も「ナベは人望があるので惨状から立て直せた」と話す。
 渡辺体制になると5月に4連勝。流れに乗った。8月下旬から5連敗を喫し降格圏に近づくと、守備重視の戦術に切り替え、堅調な戦いを取り戻した。
 選手の士気を高める人心掌握術も巧みだ。不振が続いたFWウイルソン選手には「気楽にいこうぜ」と接し、伸び悩んだFW武藤雄樹選手には厳しい言葉も交えて鼓舞した。2人はシーズン後半、躍動した。
 「途中でシステム変更することもあったが、選手がついてきてくれた。サポーターは最後まで応援してくれた。最終戦も勝って、いいサッカーを見せたい」。指揮官の口からは感謝の言葉が自然に出ていた。


2014年11月30日日曜日

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