分裂勘違い君劇場の別館

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日本の景気回復には格差是正が必要か?

■前置き

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ネットで「『現在の日本』において、格差を是正しなければ景気回復しない」という主張をよく見るので、それがどんな実証研究で支持されているのかとGoogleで検索したが、私にはそれが見つからなかった。もしそれを見かけた、という人がいたら、ぜひそのURLを教えて欲しい。

 

■本題
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「現在の日本の景気回復には格差是正が必要ですか?」
とクルーグマン(リベラル寄りの経済学者)に訊いたとしたら、どう答えるだろうか?

結論から先に言うと、少なくとも、
「クルーグマンが『「大きな格差」は経済成長に悪影響がある』と書いている」
ということから、
「『日本の景気回復には所得の再配分が必要』とクルーグマンは書いている」
と主張するのは、論理の飛躍があると思う。

以下、その根拠を書く。

 

■根拠
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クルーグマンは、「大きな格差は経済成長の重石になる」と信じる良い理由があると書いている。
http://www.nytimes.com/2014/08/08/opinion/paul-krugman-inequality-is-a-drag.html?_r=0

また、アメリカとフランスの経済成長を比較し、再分配は経済成長にマイナスの影響を与えないとも書いている。
http://econ101.jp/%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%B0%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%80%8C%E6%A0%BC%E5%B7%AE%E3%82%92%E3%82%88%E3%81%8F%E3%82%88%E3%81%8F%E8%A6%8B%E3%81%A6%E3%81%BF%E3%82%8B/

一方で、自著の中で、「日本は格差の小さい国」とも書いている。
http://www.amazon.co.jp/dp/4152089318

クルーグマンの書いた本を何冊か読んだが、
クルーグマンのいつも言ってる「大きな格差」は、現在のアメリカの格差のような格差のことだろう。

クルーグマンは、自著の中で、アメリカでは「富裕層ですら貧しくなっている」と言っている。
じゃあ、一体、その金はどこへ行ったのか?
「超富裕層」のお財布の中だ。
クルーグマンが言うには、アメリカでは「超富裕層とそれ以外の格差」が開いていて、それが問題だと。

超富裕層っていうのは、大豪邸に住んでるとか、クルーザーとか高級車を何台も持っているとか、そういう人たちのことですよ。(少なくとも、私とは全くの別人種だ)

日本の格差はアメリカの格差と構造が違う。
日本の格差は「貧困層と中間層の格差」なんだ。

だから、アメリカでの格差是正は、0.1%の超富裕層に重税をかけて、それを、残り99.9%に再配分するということになる。
日本での格差是正は、中間層に重税をかけて、それを貧困層に再分配するということになる。

つまり、クルーグマンが「格差は経済成長に悪影響がある」と書くときに念頭においている「格差」と、現在の日本の格差は、だいぶ中身が違う。

これを一緒くたにするのがまず微妙だし、それに加えて、「日本の景気回復」のための政策へのクルーグマンの言及としては、金融緩和や消費税率の引き上げ延期の効果ははっきり主張しているのは何度も見かけたが、今の日本の景気回復には所得の再配分が必要だとクルーグマンが書いているのは、見たことがない。

見かけたことがある、という人がいたら、ぜひとも、この記事にはてブコメントで、その記事のURLを書いて欲しい。

 

■「書いても思ってもないことを読み取るマン」たちへの事前の返答
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こういう記事を書くと、「格差を拡大すべきだと主張している」「金持ちのポジショントーク」「金持ち優遇にしろと主張している」と騒ぎ出す「書いても思ってもないことを読み取るマン」が沸いてくるので、最初にそれに返答しておく。

まず、私が匿名でネットに記事やコメントを書くことで日本の政治に影響があるとは、寸毫たりとも思わない。心底思ってない。だから、私は日本の政治を変えようという意図で何かをネットに書いているわけではない。
また、私は格差を拡大して欲しいわけではない。格差が拡大しても、とくに私にメリットはない。また、所得税率や法人税率が上がって、所得の再分配が強化されても、とくに私は困らない。今以上に大きく資産を増やしたいと熱望しているわけではないからだ。たくさん稼がなければ所得税も法人税もたいしてかからない。相続税の累進性が上がっても困らない。子孫に財産を残したいわけでもないし、両親も資産を持っていないからだ。さらに、特に金持ちを優遇してもらいたいとも思わない。金持ちだけ特別に優遇されるような社会制度など必要としていない。