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【政治】

<安倍政治2年 くらしこう変わった> (2)生活保護

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 安倍政権は、発足した翌月の二〇一三年一月、生活保護のうち生活費にあたる「生活扶助費」を、一三年度から三年間かけて、段階的に6・5%引き下げることを決めた。厚生労働省の試算では、約96%の受給世帯で減額となる。

 実際には物価の上昇や、今年四月の消費税率引き上げを考慮して圧縮されたが、それでも一四年度の支給実績は、都市部の夫婦と子ども一人世帯で、一二年度に比べて月六千円減。子ども一人の母子世帯では月二千円の減額になった。削減額は計七百億円超と、衆院選の選挙費用に匹敵する。

 生活保護費の削減は、「自助」を重要視する自民党が、政権を奪還した一二年衆院選で公約に掲げており、約束違反ではない。

 自民党は、民主党政権では生活保護を受給しやすい運用がなされたとして、必要以上に生活保護費が「肥大化」(同年度実績で約三兆七千億円)したと問題視。この状況を「適正化」するとして、受給者への支給額を一律「原則一割カット」するとした。安倍晋三首相も当時「適正化で数千億円削減できる」と訴えている。

 一四年度の社会保障給付費は百十五兆円超だが、二五年度には約百四十九兆円に膨らむ見通しで、効率化は求められている。

 しかし、関東地方の四十代男性の受給者は「電化製品を買える状況にない。燃えないごみの日に、使えるものは拾ってくるような生活だ」と話す。「憲法が保障する生存権を侵害している」として、各地で引き下げ取り消しを求める訴訟が起きている。

 また、増え続ける受給者を抑制するため、安倍政権は生活保護法を改正(今年七月施行)。保護を申請する際、資産などを記した申請書の提出を義務付けた。自治体が申請を受け付けない「水際作戦」に拍車がかかるとの批判がでている。

 この改正では、扶養を断る親族に説明を求めることも可能にした。親族に気兼ねして、申請を断念する人が増えかねないとの懸念が指摘されている。

 生活保護費の削減をめぐっては、貧困世帯の子どもが増え、教育格差によって貧しさが世代を超えて続く「貧困の連鎖」も懸念されている。直近の一二年で、子どもの貧困率は16・3%と過去最高を記録。安倍政権は今年八月に対策の基本方針となる大綱をまとめたが、貧困率の削減目標や経済支援策は盛り込まず、実効性に疑問符がつく。

 生活保護受給者が自立するには、賃金の底上げが必要だが、最低賃金の引き上げペースも鈍い。

 安倍政権は、さらに生活保護費の削減を進める構え。今年六月に閣議決定した「骨太の方針」で、生活保護のうち家賃にあたる「住宅扶助」などを、一五年度に「適正化」するよう盛り込んだ。 (鈴木穣)

 

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