危険ドラッグ死者100人超 去年の10倍以上に11月29日 18時56分
危険ドラッグを使ったことが原因で死亡したとみられる人は、ことし全国ですでに100人を超え、去年の死者数の10倍以上に上っていることが警察庁の調べで分かりました。
警察庁は、依然として危険ドラッグのまん延に歯止めがかかっていないとして、取締りを強化しています。
ことし6月の東京・池袋の暴走事故など危険ドラッグに関係する事件や事故が全国で相次ぎ、警察庁は、死亡した人の身の回りから危険ドラッグが見つかったり、遺体の薬物検査で成分が検出されたりしたケースなど、危険ドラッグが関係して死亡した疑いのある事案がどれだけあるか調査しました。その結果、危険ドラッグを使ったことが原因で死亡したとみられる人は、ことしに入って先月末までに全国で99人に上り、さらに今月に入ってからも、東京や岐阜で複数の人が死亡したのが確認され、死者はすでに100人を超えたことが分かりました。
こうした死者は、おととしは8人、去年は9人で、ことしはすでにその10倍以上に上っています。
警察は、違法な成分が含まれた危険ドラッグを使ったり販売したりしたとして、先月末までに去年1年間の3倍を超える589人を検挙していますが、警察庁は、依然として危険ドラッグのまん延に歯止めがかかっておらず、さらに死者が増えるおそれがあるとみて、取締りを強化しています。
毒性強い危険ドラッグ急速に広まる
危険ドラッグを使ったことが原因で死亡する人が相次いでいる問題で、その背景には、ことし9月以降、これまでにない毒性の強い危険ドラッグが急速に広まったことがあると専門家は指摘しています。神奈川県伊勢原市にある東海大学医学部の斉藤剛准教授は、ことし9月以降、急速に広まった「ハートショット」と呼ばれる危険ドラッグについて、使用したあとに死亡する事例が相次いで報告されたことから、その成分を分析しました。
その結果、大麻に似た成分で、幻覚作用などがある「合成カンナビノイド」と呼ばれる違法な成分に近い化学構造になっていたものの、一部分だけ構造が変えられ、薬事法の規制を逃れていたことが分かりました。
厚生労働省は、「ハートショット」には僅かな量でも脳の中枢神経に大きく作用するこれまでにない毒性の強い成分が含まれているとして、先月末にその成分を薬事法で規制しました。
斉藤准教授は「危険ドラッグは数か月ごとに新しい化合物が出てきて、救急搬送される症例が相次ぐと同時に死亡例も増えている。
化合物自体の作用が強くなっており、社会が危険な状態にさらされている」と警告しています。
毒性で判定する新検査法を開発
化学構造を変えた毒性の強い危険ドラッグが出回るのを食い止めるため、次々に変化する化学構造ではなく、幻覚などを引き起こす毒性があるかどうか判定する新たな検査方法が開発され、取締りの際に役立つものと期待されています。危険ドラッグの危険性を研究している国立精神・神経医療研究センター依存性薬物研究室のフナ田正彦室長は、危険ドラッグの症状でみられる幻覚や興奮などを引き起こす毒性の強さに反応する特殊な細胞を作りました。
この細胞は、危険ドラッグに含まれる化学物質の成分を注入すると緑色に光る仕組みで、毒性が強いほど明るく光ります。
このため、薬事法で規制されている違法な成分が含まれているか特定できなくても、人体に有害なものかどうか判定できることから、水際で取り締まる際の検査方法として役立つものと期待されています。
ふな※田室長は「一つ一つ化学構造を調べていると、どうしても時間がかかってしまうので、鑑定する前の段階として“作用”によって危険性を察知することで、国内への流入を止めることに応用できれば」と話しています。
※「舟」へんに「公」。