政治資金:自民へ企業献金43%増 証券、重電が急増

毎日新聞 2014年11月29日 05時00分(最終更新 11月29日 05時52分)

 アベノミクスによる円安・株高などで業績を伸ばす大企業が、昨年1年間で自民党の政治資金団体「国民政治協会」への献金額を軒並み増やしたことが、28日に公表された政治資金収支報告書で分かった。証券大手では前年比で5倍以上増やしたところもあり、重電も2〜3倍増。自動車メーカー各社も一斉に増やした。自民党は2012年末の総選挙で与党に返り咲き、同協会への献金総額も野党だった前年の約1.5倍に膨らんだ。

 同協会の13年分収支報告書によると、企業・団体からの献金総額は19億5408万円で、前年比43%増。野党時代の10〜12年は13億円台だった。しかし、リーマン・ショックの前年で与党だった07年は30億円を超えていた。

 昨年の献金額上位50社を見ると、前年より減らしたのは1社、同額は3社で、残りは増やした。

 増額幅が大きかったのは、株式市場の活況を受けて業績をリーマン・ショック前のレベルに急回復させた証券大手2社。

 野村ホールディングスが5.6倍の2800万円、大和証券グループ本社も3.6倍の2500万円を寄付した。

 商社も13年度に最高益を記録した伊藤忠商事と丸紅がそれぞれ4.5倍の1800万円と3.7倍の1300万円、三菱商事、三井物産、住友商事も4倍近い2300万円を納めた。

 重電の増え方も目を引く。東芝と日立製作所は横並びで前年の約2倍の2850万円。三菱重工業は3倍の3000万円だった。

 企業献金額のトップは前年に続きトヨタ自動車で6440万円。12年までの3年間は毎年5140万円で、1300万円増やした。トヨタは12年末からの3カ月間で円安効果により営業利益を1500億円増やし、献金は4月に行った。

 自動車メーカーでは日産が850万円増の2900万円、ホンダも700万円増の2500万円で、他の5社も増額した。

 法人税率引き下げや原発の早期再稼働などを求めている経団連は今年、加盟企業に政治献金の呼びかけを5年ぶりに再開しており、14年の総額はさらに増えるとみられる。しかし、企業・団体献金は癒着を生むとして長年問題視されてきた。アベノミクスによる大企業の利益の一部が自民党に“還流”しているとの批判もある。【鈴木泰広、関谷俊介】

 ◇「庶民を置き去り」加速を懸念

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