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苦境の「車内ワゴン販売」に未来はあるか

東洋経済オンライン 11月29日(土)6時0分配信

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苦境の「車内ワゴン販売」に未来はあるか

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苦境の「車内ワゴン販売」に未来はあるか
特急「やくも」は、すでに2009年に車内販売を廃止

 「コーヒーに缶ビール、お弁当にお土産品はいかがですか? 」

 かつて、特急列車の車内では、こうした呼び声とともに車内販売のワゴンが回ってくるのが当たり前であった。そして、長旅の「オアシス」として、親しまれてきたものだ。ついつい呼び止めて、コーヒーの一杯も買ってしまう。

【詳細な表】車内販売をやめた主な特急の路線

■ こだまは車内販売「廃止」、ワゴン販売は風前の灯? 

ところが最近、こうした"伝統的"な車内販売が急速に姿を消しつつある。別表では、車内販売を廃止した主な特急をまとめてみた。東海道・山陽新幹線の「こだま」や北陸本線の「サンダーバード」といった列車であっても、今はワゴンが回ってこないのだ。 「スーパーはくと」や「しおかぜ」のように、車内販売の廃止と復活を繰り返している列車もある。売り上げの減少と「車内販売がないと不便、寂しい」という声の板挟みになっている状況がうかがえる。

 車内販売が残る列車には「東高西低」の傾向があり、JR東日本では新幹線・在来線問わず、まだ広く実施されているのに対し、JR東海の在来線特急では全廃。JR西日本の在来線とJR四国では風前の灯火だ。

 あっという間に凋落した背景には、もちろん収益性の悪化がある。販売そのものに手がかかるのはもちろん、列車への販売品の積み下ろしにもかなりの人手を要するのも一因だ。

 大きくないように見えて、車内販売のワゴンは時に60キログラムぐらいにもなる。揺れる車内でこれを押して歩くのは、女性にとってかなりの重労働である。

 このところ駅構内にある「KIOSK」などの売店が、コンビニへと模様替えするケースが相次いでいることも原因として挙げられよう。

 設置スペースに余裕がある場合は、ブースタイプによる対面販売店舗から、レジを設けたウォークインタイプの店舗に改装し、取り扱い商品数のアップや効率化を図ったもので、例えばJR東日本では、グループ会社のJR東日本リテールネットが経営するコンビニ「NEWDAYS」が、駅内のみならずホーム上にも進出している。

 また、大手鉄道会社グループがローソン(東京メトロ、東急など)やセブン-イレブン(JR西日本、京急など)といった既存のコンビニチェーンと提携。ミニ店舗を駅内あるいはホーム上に出店するケースも増えている。

 むろん、長距離列車が発着する主要駅における「エキナカ」の発展ぶりは言うまでもない。例えば、東京駅などにある駅弁店「旨囲門」には、東日本各地の人気駅弁が毎日入荷し、現地へ行かずとも入手できてしまう。

 要するに、品揃えにおいては車内販売のワゴンより充実しており、人手もかからないコンビニや飲食店、物販店が駅の内外に相当増えたことが、車内販売廃止に拍車をかけていることに間違いはない。

 私は東海道新幹線「のぞみ」でしばしば新横浜〜新大阪間を往復するが、2時間10数分の乗車時間のうちに、車内販売が回ってくるのはまず2回まで。混雑している(イコール呼び止める客が多い)列車だと、1回のこともある。 飲みたい、食べたい時に、すぐワゴンがやってくる状況ではない。

 ならば、乗車前に駅で飲みたいもの、食べたいものを入手しておく方がストレスもなく、選択肢も広がってよい。そういう理屈になってしまう。

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最終更新:11月29日(土)16時15分

東洋経済オンライン

 

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