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 誰もが知る一口サイズの「チロルチョコ」。包装紙には「東京都千代田区」の地名が記されているが、製造地は福岡県田川市だ。

 筑豊炭田の炭都として栄えた田川市。坑内労働を終えた炭鉱マンは疲れを癒やす甘味を好んだとされる。「ひよ子」や「千鳥饅頭(まんじゅう)」などの銘菓が誕生したのも筑豊だ。松尾製菓も1903年、菓子の製造を始めた。

 だが相次ぐ炭鉱閉山で業績不振に陥る。2代目社長の故松尾喜宣(よしのり)さんは当時高級品のチョコレートに着目した。62年、ヌガー(水あめ)を少量のチョコでくるみ、一口サイズを三つ連ねて10円で売り出した。

 名前は「チロル」。「チョコの本場は欧州、欧州ならチロル」という連想からだった。ところが、「チロル」の商標はすでに森永製菓(東京)が取得していた。「うちの『チャンピオン』という商標との交換を」と持ちかけ、獲得したという。