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見直しませんか あなたの街のパトロール
11月29日 10時23分

見直しませんか あなたの街のパトロール

例年、犯罪が増えるこれからの時期、地域の防犯ボランティアによるパトロールを目にすることが多くなるのではないでしょうか。
今、このパトロールに犯罪社会学の最新の成果を取り入れようという動きが始まっています。

犯罪学の手法をパトロールに

東京・北区では、59の防犯ボランティア団体が活動しています。区は28日から、こうした団体を対象にした講習会を始めました。指導するのは犯罪社会学が専門の立正大学の小宮信夫教授です。
海外の犯罪防止対策を研究してきた小宮さんが提唱するのは、「ホットスポット」と呼ばれる場所を集中的にパトロールする方法です。「ホットスポット」とは犯罪が起こりやすい場所のことで、「誰もが入りやすく、外から見えにくい」のが特徴です。犯罪者から見ると「犯行が行いやすく、気付かれにくい」場所となります。

「ホットスポット」を探せ

「ホットスポット」を探せ

28日は、実際に地区の中を歩いて、ホットスポットがどんな場所なのかを見て回りました。
小宮さんがまず気になったのは、荒川の土手と工場の高い塀に囲まれた道路です。
犯罪者が最も気にするのは目撃されることですが、この場所なら人の目が届きません。
ゴミや放置自転車が多く、地域の無関心を裏付けていると言います。

次に気になったのは、子どもたちが遊ぶ公園です。
ボランティア団体の人たちは、団地やマンションに囲まれているので安全だと思っていました。
しかし、小宮さんは、木が茂って見通しが悪いうえに、入り口がたくさんあって、誰でも不審に思われることなく中に入れるので、極めて危険だと指摘しました。
小宮さんは「ただランダムにパトロールする方法は犯罪抑止の効果がほとんどないことはアメリカでの実験で証明されています。そうしたパトロールの方法は変えるべきです」と説明していました。
講習会に参加した市川満智子さんは「これまでは暗いと犯罪が起こると思い込んで、街灯の設置などをお願いしたこともありましたが、場所が犯罪発生の要因になることが分かりました。早速、パトロールに生かしていこうと思います」と話していました。

意外な場所がホットスポット

意外な場所がホットスポット

ほかにも小宮さんがホットスポットとして指摘する場所があります。その1つが駐車場です。
複数犯の場合、車の中で計画を練ることが多いためです。
また、一般的な公衆トイレにも危険が潜んでいるといいます。
男女別になっていないところも多く、性犯罪などが起きやすくなっているからです。

ボランティアの高齢化で注目

「ホットスポット」パトロールは、ほかにも神奈川県藤沢市と青森県が相次いで取り入れています。
背景の1つには防犯ボランティアの人たちの高齢化があります。
東京都は3年前、都内の3700余りの防犯ボランティア団体を対象に課題について、アンケート調査を行いました。
その結果、最も多かったのが「メンバーの高齢化」で、複数回答で68%の団体に上っています。
次いで、「メンバーの確保」を挙げる団体も54%ありました。
「ホットスポットパトロール」は、パトロールを効率的なものに変え、負担を減らすことになるため今、注目されているのです。

まちづくりに防犯の視点を

さらに、ホットスポットのような危険な場所を無くそうという試みも始まっています。
東京都は、ことし9月から都内の区市町村や住民と一緒に、犯罪の危険がある場所を見つけて改善する計画を作っています。
このうち府中市では、見通しを悪くしていた公園の草刈りをする対策を行いました。
今後は都内各地で、公共施設の設計に生かすなど防犯の視点を取り入れたまちづくりを進めていく考えです。
小宮さんは「これまでは動機が犯罪を起こすと考えられてきたが、それは間違いで、犯罪が成功しそうだと思える環境が加わって初めて起きる。住民のパトロールが物理的に限界に達している今、正しい知識を広め、都市計画など社会全体で取り組んでいく必要がある」と話しています。

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