日本近代思想の研究で知られる評論家で麗沢大教授の松本健一(まつもと・けんいち)さんが27日、死去した。68歳だった。年明けにお別れの会を開く予定。喪主は妻久美子さん。

 群馬県出身。東大経済学部卒業後、会社勤めを経て、法政大大学院時代に書いた「若き北一輝」(1971年)で注目される。以後、右派左派のイデオロギーにとらわれず、近代日本の精神史を考察し、多数の著作を残した。

 33年かけて完成させた「評伝北一輝」(全5巻)ではファシストといったレッテルを排して、近代日本が生んだ特異な革命家の実像に迫り、司馬遼太郎賞、毎日出版文化賞を受けた。また「日本の失敗」では、第2次大戦を中国への侵略の延長ととらえ、日本が敗戦へと至った経緯を追った。冷戦終結後に勃興したナショナリズムについても論じた。

 民主党政権時には内閣官房参与も務めた。主な著作に「大川周明」「近代アジア精神史の試み」など。