谷崎潤一郎の未公開の手紙 288通11月25日 17時53分
日本の近代文学を代表する作家、谷崎潤一郎が、代表作の「細雪」のモデルになった妻の松子やその妹に宛てた手紙など、これまで公になっていない288通の手紙があることが分かりました。
このうち妻の妹への手紙には、「創作力の源泉」などと記されていて、専門家は「2人の女性が谷崎の創作を刺激していたことが分かる極めて貴重な資料だ」と話しています。
手紙は、谷崎潤一郎の養女が保管していたもので、昭和2年から谷崎が亡くなる2年前の昭和38年までに書かれた合わせて288通で、これまで公になっていませんでした。
このうち184通は、谷崎と妻の松子が交わした手紙でしたが、102通は、松子の妹、重子との手紙で、そのほとんどは谷崎から宛てたものでした。
このうち、昭和26年8月1日に送られた手紙には、重子のことを「自分の生きがいの一つ」で「創作力の源泉」であり、「精神的の支え」などと記していました。
昭和17年から執筆された谷崎の代表作「細雪」は、松子の4姉妹をモデルに創作された作品で、なかなかいい見合い相手が見つからない美人の三女「雪子」が重子に当たります。
谷崎は、妻の松子だけでなく、創作の上で重子もモデルにしていたことはこれまでも知られていましたが、今回の手紙で、重子が谷崎の文学活動を精神面で支える重要な役割を担っていたことが分かります。
また、妻の松子には、結婚前の昭和7年と8年に、結婚を約束する「誓約書」を書いていて、このうち昭和8年の誓約書には、「忠僕として御奉公申上げ主従の分を守り候」などと記し、松子に尽くしたいという谷崎の強い決意が分かります。
谷崎文学を研究している早稲田大学の千葉俊二教授は「妻の松子のみならず、妹、重子の存在が谷崎の創作を刺激する重要な役割を担っていたことが、新たな資料で明らかになった。今後、谷崎文学の研究を進めるうえで極めて貴重な資料だ」と話しています。