こうして、あらゆる制作工程をネット経由でアウトソーシングし、ゲームを作り上げていった。主力のプログラマーは台湾に住むフリーランスのエンジニア。BGMなどの音楽を制作したのは学生だった。ゲームのメーンキャラクターや背景を描いたイラストレーターは絵描きが本職ではないという。「海外のクラウドソーシングサイトも試したが、納期や作業内容がいい加減なユーザーが多くて失敗した。仕事に対するコミットメントは日本のクラウドソーシングサービスに集まるユーザーが一番高い」
■課金収益は月に数十万円、既に黒字化
運営や開発費もネットで募った。今年7月にクラウドファンディングサイト「キャンプファイア」で運営資金10万円を募ると、応募金額は1カ月もしないで10万円を突破。募集締め切りの9月2日時点で20人から合計33万2500円を集めた。「20年前に思い描いた夢がネットの力で現実になるなんて思いもしなかった」。赤裸々なマさんの告白に、多くの支援者が現れた。
台湾に生まれたが、子どもの頃から日本の漫画やゲームが大好きだった。高校を卒業すると、日本の上智大学に留学。比較文化学を学んだ。卒業後は憧れのゲーム業界で働こうと名だたるメーカーを片っ端からまわったが望みはかなわなかった。
中古ゲームの販売会社に勤めるなどしたが、スマホゲーム人気に感化されて一念発起。「家庭用ゲームは無理でも、スマホゲームなら1人で作れるかもしれない」。学生時代にはなかったクラウドソーシングなどネットサービスの充実もチャンスに見えた。制作期間は1年半。部屋に籠もる日々が続き、体重は20キログラムも増えた。
ヒストリカの運営費はサーバー代などの固定費で月約10万円で、追加コンテンツの制作費で月20万円程度かかる。一方、課金収益は多い月で数十万円に達し、単月で黒字を達成している。妻子持ちだけに足元の状況にはホッとした様子だが、「年商6億円以上を稼ぐゲームを作る」と意気込む。
最近ではヒストリカの完成度を見て、ゲーム制作のために設立した個人運営の株式会社GOPA(東京・中野)に出資の提案もあるという。故郷の台湾でもサービスを開始し、米国進出も検討している。たった1人で始めたゲーム作りが、ネットの向こう側にいる数十人のデザイナーやエンジニアを巻き込み、今まさに大きなうねりとなりつつある。
(新田祐司)
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