昨日の萩博ブログで紹介したベンテンウオ(全長47cm)。
一見、ふつうにいそうな魚に見えますが、ある部分を動かすと、とんでもない姿に豹変! ・・・その瞬間をお披露目する時がやってきました。 もう死んでいるので、もちろんこの魚が自分からどこかの部分を動かすことはありません。しかし、背中に目をやると背中全体に沿って細い溝が・・・ その溝は、開いてみると深さ1cmもありそう。魚の体高が10.3cmなので、かなりの深さ。その溝をのぞいてみると、黒いシートのような物体が折りたたまれて収納されていたのです! 私は、その物体をおそるおそる引っぱりだしてみました・・・ その黒いシートのような物体は、アコーディオンが広がるかのように、ズルズルとのびて出てきます。 まだまだ止まりません。引っぱっても引っぱっても出てきます。 いったい、どこまで広がるのか!? ついにこんなにも展開! 体高10cmあまりのベンテンウオが上に4倍近くにも広がってしまいました! そこで、私は今度はこの魚の腹側に目をやりました。 腹側にも、背中と同じように溝を発見! この溝も約1cmと深く、これまた黒いシートが収納されていました。 私は、今度は腹側のシートをズルズルと引き出していきました。 こちらも、背中側と同じく、引っぱれば引っぱるほど出てきます。 背中側と腹側、両方が完全にのびきった最終形! 最初の写真と見比べてください! 全長47cm・体高10cmばかりのベンテンウオが、上下70cmもあろうかという団扇のような姿に豹変! 上下に広がった黒いシートのような物体の正体・・・それは、背びれ・臀(しり)びれなのでした。 この魚は、ひごろは背びれ・臀びれを背中と腹の溝に格納していて、生きているとき、何らかのタイミングでそれをボワーっと広げるのでしょうね。 斜めから撮影。 実に優雅で神々しい姿。しかし、目の前でこんな姿を見せつけられた私は、悪魔が黒い翼をバサッと広げて何かを語りかけているような、ゾクゾクとした戦慄まで感じ、しばらく衝撃がおさまりませんでした。 このベンテンウオ、図鑑などでは水深数百 mの中層にすむ「深海魚」とされていますが、やや浅いところにも現われて捕獲されることもあるようです。 しかし、福島県から高知県の太平洋側、鳥取県、新潟県、ハワイ、バハカリフォルニア、南東太平洋などの限られた場所でごくわずかしか見つかったことのない珍魚で、山口県からは今回が初の発見となります。 なぜ今、この怪魚が萩に現われたのか・・・それは、近年初夏に相次いでいるテンガイハタ・フリソデウオなどの深海魚の出現とも関係しているのかもしれません。 いずれにしても山口県近海の環境変化を追っていく上で貴重な資料になりそうです。 このなかまの魚類に詳しい東京海洋大学の茂木先生によると、この標本は貴重とのこと。 大切に保管し研究や展示に役立てたいと思っています。昨年夏の当館の企画展「君と竜宮城へ~知られざる深海への旅~」 の第二段が近い将来に開催されれば、その場でみなさまの前に姿をあらわすかも!? (堀) ■
[PR] by hagihaku | 2008-06-26 10:42 | いきもの研究室より
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萩博物館
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