主人公の魔術師(幻惑師)を演じるのはエドワード・ノートンという俳優で、その恋人役はジェシカ・ビールという女優。二人とも顔は見覚えがあるけれど、特別に憶えているという俳優ではなかった。でも、これで多分二人とも私の記憶に留まるであろう。ジェシカ・ビールの方は、童顔だけれどとてもセクシーで、私はこの映画を観ていて所々ゾクリとしてしまった。
ストーリーは恋愛ものだ。
幻術師になることを目指す少年と王女があるキッカケで出会い、幼い恋心から駆け落ちをしようとするが捕まってしまう。そして、二人は別れ離れとなる。それから月日は流れて15年、少年は今をときめく魔術師としてウィーンに戻り、一方の王女はオーストリアの皇太子の許婚となっている。この二人が、彼のショーで出会うのだ。幼い恋は再燃する。今度こそ愛を成就したい!
しかし、一つ問題がある。彼女の許婚の皇太子である。この男はかなり感情的で、以前付き合っていた女性を殺害したという噂もある。コヤツに知れたら二人とも殺されるだろう。ここで魔術師の技が披露されるというわけだが、余り種明かしをしては、これから見る方に失礼だろう。最後のどんでん返しも有りますし。
映画を観ていて時々思い起こすのは、プラハという不思議な町のことだ。カフカはこの街の出身である。高校の時に彼の「変身」を読んでとても感動したことを思い出す。ある朝起きたら自分が巨大な甲虫になっていた、という奇抜な発想! 色々なことを私に考えさせた小説だった。
またこの街はユダヤ人のラビ、ベン・ショロムが土塊からゴーレムという人造人間を作ったとされる街だ。プラハの独特な街並みと数々の不思議な伝説…。私にとって、この神秘的な都市はヨーロッパ圏では行ってみたい都市の筆頭に挙がるのであるまする。
ところでこの映画の舞台はウィーンということなのだが、ウィーンというと心理分析のフロイトが思い出される。この人間の深層を解き明かそうとした心理学者は、これまたカフカと同じユダヤ系だ。この心理分析はその後、数々の批判を浴びることになるし、その批判も正鵠を得ているものもあると思うのだが、この時代に人間の心理的抑圧についてこれほど上手に説明してみせた人は居ないのではないのではないだろうか。彼の理論が古く臭く思える人は、このフロイトが生きた時代性というものを考慮に入れなくてならないと思う(その意味では現代には余り適用しない理論かもしれないけれど)。
この映画は観客に幻想を見せる魔術師の話である。私達の心理の深層はどんな幻想をを望んでいるのだろうか? つかの間であっても幻想師は私達にほのかな夢想を売ってくれるのかも知れない。映画もまた一つの幻想を私達に与えてくれる。
映画通はこの映画に色々と批評はあるようだが、私は最近の有名スターを使ぅてとにかく興行を成功させようとするハリウッドタイプの映画に飽き飽きしていたので、久々に映画というものを楽しんだ気がする。私としてはお勧めの映画であります。
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この作品が何時日本で公開されるかわかりませんが楽しみです。日本語のタイトルもどんな風に付くのかも!えっ?って感じの、原題とかけ離れたタイトルが多いので逆に面白く見ています。写真で見た限りですが、ジェシカビール(知りませんでした)の目がセクシーですね。
最近のハリウッド映画の中には、観る価値も無いものが有ります。有名なスターとコンピューターによる画像処理の過多。
もう少しストリー的に、楽しめる映画を観たいと思っておる時に、この映画を観たので好感を持ちました。日本では紹介されないのでしょかね?
オギ