本領域の説明
研究の概要
今世紀に入り注目を浴びているビッグデータは,そのデータ量の膨大さ故に,その基礎となるアルゴリズム理論に根本的な変革が迫られている.例えば,これまでは多項式時間アルゴリズムならば「速い」アルゴリズムであると考えられてきたが,ペタスケールやそれ以上のビッグデータに対してO(n^2) 時間アルゴリズムを直接適用するだけでは,計算資源や実行時間などの点で大きな困難に直面する.少なくとも線形時間,場合によっては劣線形時間や定数時間アルゴリズムが求められている.本研究では,その変革を支える劣線形時間パラダイムを提唱し,ビッグデータ用のアルゴリズムとデータ構造,およびモデリング技法を開発し,ビッグデータ時代に向けた革新的アルゴリズム基盤を構築する.また,応用分野として,大規模災害時における避難計画策定,たんぱく質立体構造と機能解明,シーケンサーデータ解析,経営データ分析の4分野に焦点を当て,これらの分野に必要な新しいビッグデータ時代のアルゴリズム基盤の構築を図る.
戦略目標への貢献
解決が必要とされる科学・工学など様々な問題,環境,バイオ分野の諸問題,防災・避難計画などの社会的危機管理の問題など,問題サイズは増大の一途である.一方,ソフトウエア,すなわち,アルゴリズムの進化とハードウエアの進歩との相乗効果により,問題解決が可能なデータサイズも飛躍的に拡大したが,データサイズの増大速度はコンピュータの進化の速度を大幅に上回り,従来のアルゴリズム理論では対応不可能になりつつある.本研究では,このような超大規模な問題の解決に共通するアルゴリズム開発の基盤となる劣線形時間パラダイムという新しい概念を提唱し,そのパラダイム実現のために劣線形アルゴリズム,劣線形データ構造,劣線形モデリングを開発する.そして,それらを統合した革新的アルゴリズム基盤を世界に先駆けて構築する.このような,劣線形アルゴリズム,劣線形データ構造,劣線形モデリングの統合によるビッグデータ向けアルゴリズム基盤は世界に類を見ない独創的な概念である.
研究成果により想定されるインパクト、将来像、イノベーションの創出など
ビッグデータに対する劣線形時間パラダイムとそれを実現するアルゴリズム基盤は計算理論やビッグデータ向けアルゴリズム開発に大きなインパクトを与え,ビッグデータ用アルゴリズムの標準として確立され,それらは,生物学や避難計画,経営学以外の広範な応用分野におけるアルゴリズム開発技術に大きな影響を与え,ビッグデータ基盤技術の中核をなすことが予想される.
メンバー
Team A: 劣線形アルゴリズムチーム(研究代表者チーム)
- 加藤直樹(京都大学・工学研究科,代表者・チームリーダー)
- 牧野和久(京都大学・数理解析研究所)
- 伊藤大雄(電気通信大学・情報理工学研究科)
- 岡本吉央(電気通信大学・情報理工学研究科)
- 吉田悠一(情報学研究所・情報学プリンシプル研究系)
- 斎藤寿樹(神戸大学・工学研究科)
- 宇野裕之(大阪府立大学・理学系研究科)
- 瀧澤重志(大阪市立大学・工学研究科)
- 東川雄哉(京都大学・工学研究科)
Team D: 劣線形データ構造チーム
- 渋谷哲朗(東京大学・医科学研究所,チームリーダー)
- 定兼邦彦(東京大学・情報理工学系研究科)
- 竹田正幸(九州大学・システム情報科学研究院)
- 坂本比呂志(九州工業大学・情報工学研究院)
- 谷川眞一(京都大学・数理解析研究所)
- 中野眞一 (群馬大学・大学院理工学府)
- 矢田勝俊 (関西大学・商学部)
- 喜田拓也(北海道大学・情報科学研究科)
Team M: 劣線形モデリングチーム
- 田中和之(東北大学・情報科学研究科,チームリーダー)
- 篠原歩(東北大学・情報科学研究科)
- 塩浦昭義(東北大学・情報科学研究科)
- 伊藤健洋(東北大学・情報科学研究科)
- 片岡駿(東北大学・情報科学研究科)
- 安田宗樹(山形大学・理工研究科)
- 大関真之(京都大学・情報学研究科)
セミナー・シンポジウム
- 定期会合
- 2015年1月9日(金)午後
- 場所未定(東京)
- 加藤CREST・宇野CREST・渡辺ELC合同会議
- 2015年2月13日(金)〜14日(土)
- 場所未定(東京)
- 合宿 ->[詳細]
- 2015年03月20日(金)〜22(日)
- 群馬大学 伊香保研修所
- 国際会議
- 2015年5月中旬を予定
- 場所未定(京都を予定)
終了したもの
リンク
計画代表者 加藤直樹(京都大学 大学院 工学研究科・教授)
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