パンクがイスラム法を穢す?アチェ州政府に丸刈りにされた若者達の現在
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事件の概要
2011年12月10日、インドネシア・スマトラ島のアチェ州で事件は起きた。孤児院の子供たちに向け、チャリティーでライブを行っていたパンクスたちが逮捕されたのだ。逮捕されたのは、会場にいた59人の男と5人の女。突然入ってきた警察がパンクスを取り押さえると、髪を剃り、湖に入れ、着替えるように指示。神に祈るよう強制した。
警察はこれを”再教育”だと説明している。パンクスを違法とするような法律は存在しないが、集団逮捕を指揮したバンダ・アチェ副市長の Illiza Sa’aduddin Djamal 氏は、「若者たちの活動によって我が州で実施されているイスラム法が穢(けが)されることを恐れた」と述べている。
“東南アジアNo.1の民主主義国家”で、何故?
最大の要因は、ライブ会場がアチェ州だったことだ。1998年にスハルト政権が倒れて以降、数少ない民主主義制を成功させたイスラム国家として、政治界や経済界から評価を集めてきたインドネシアだが、分離独立を求めるアチェ州では、1980年代後半より開始した武力闘争が止むことはなかった。数回停戦のチャンスも訪れ、2001年にはイスラム政府が部分的にイスラム法を認めるなど譲歩の姿勢を見せていたが、完全に衝突が止む事はなかった。
結局最終的なきっかけとなったのは、2004年12月26日に起きたスマトラ島沖地震だ。翌年よりアチェ州は自治を獲得、シャーリア法を適用した。それ以来、法律は徐々に厳格化している。今年9月には、同性愛を最大100回むち打ちの刑に処すという条例も成立した。
かつてはパンクスだったが、今はアチェ州の公立大学Syiah Kuala Universityに務めるイスラム法哲学者、Reza Idriaは次のように述べている。「イスラム法を受け入れないということは、神を信じていないということになってしまう。そこが難しいところなんだ。」