November 27, 2014
衛星データを基に大海原を行き来する船舶の世界地図を作成した結果、この20年で世界の海の交通量が4倍に増加していることがわかった。
今月17日付で「Geophysical Research Letters」誌に発表されたこの研究では、電波高度計を搭載した人工衛星のデータを利用した。
ブルターニュにあるフランス国立海洋開発研究所の研究者ジャン・トゥールナドル(Jean Tournadre)は、船舶の交通量が世界の貿易量を上回るペースで急増していることを明らかにした。船舶の交通量が急増しているということは、環境への影響も急激に大きくなっているということだ。
◆混雑する海
トゥールナドル氏は1992~2012年に電波高度計に記録された30万以上の船舶の痕跡か・・・
今月17日付で「Geophysical Research Letters」誌に発表されたこの研究では、電波高度計を搭載した人工衛星のデータを利用した。
ブルターニュにあるフランス国立海洋開発研究所の研究者ジャン・トゥールナドル(Jean Tournadre)は、船舶の交通量が世界の貿易量を上回るペースで急増していることを明らかにした。船舶の交通量が急増しているということは、環境への影響も急激に大きくなっているということだ。
◆混雑する海
トゥールナドル氏は1992~2012年に電波高度計に記録された30万以上の船舶の痕跡から、交通量の変化がわかる世界地図を作成。その結果、最初の10年は年間約6%、2002年以降は10%のペースで交通量が増加していたことがわかった。
世界の貿易の90%が船で行われているため、船舶の交通量の変化は世界経済の変化を反映する。大西洋の場合、全世界の交通量に占める割合は1992年の40%弱から2012年には32%まで減少しているが、太平洋は35%から39%に増えていた。
東シナ海や南シナ海を含む中国周辺の海とインド洋の交通量は1992年には17%だったが、現在は25~30%を占める。
交通量の急増の原動力は中国だ。国際連合貿易開発会議(UNCTAD)によれば、中国は現在、石炭や鉄鉱石といった固体の商品と原油の世界最大の輸入国だという。固体の商品は主にブラジルとオーストラリア、原油は湾岸諸国から輸送される。中国がアフリカ諸国にとって唯一最大の貿易相手国である事実も、アジアと南アフリカを結ぶケープ・ルートの交通量の急増という形で表れている。
パリにあるフランス国立科学研究センターで全世界の船舶の動きを研究するセザール・デュクリュエ(Cesar Ducruet)氏は、「インド洋と中国周辺の海は“中国効果”の直接的な影響を受けている」と分析する。
デュクリュエ氏によれば、中国をはじめとするアジア諸国での需要拡大の影響で、ヨーロッパとアジアを結ぶスエズ・ルートに船舶が集中しているという。スエズ・ルートはインド洋とスエズ運河を通過する経路で、シンガポールやスリランカ、エジプト、イタリア、スペインのハブ港を中継する。
◆排出量も急増
商船はさまざまな汚染物質をまき散らす。最も大きな不安の種はおそらく二酸化窒素(NO2)だろう。呼吸器疾患、土や水の酸性化、オゾン形成の原因となる化合物だ。NO2の排出量がわかる衛星画像では、トゥールナドル氏の地図と同様、一部の主要な航路がくっきり浮かび上がって見える。
ドイツ、ブレーメンの環境物議学研究所(Institute of Environmental Physics)に所属する大気科学の専門家アンドレアス・リヒター(Andreas Richter)氏は、「人工衛星による観測では、船舶が排出するNO2は1990年代前半から急激に増加している。船舶の数や商品の輸送量の増加と一致しているようだ」と指摘する。
リヒター氏によれば、エジプトやサウジアラビアでは、スエズ運河を行き来する船舶が最大級の汚染源になっているという。世界を見渡しても、船舶はNO2排出量の15~30%を占めている。
Photograpy by Daniel Reinhardt/picture-alliance/dpa/AP Images