2013年11月18日05時00分
処分場が決まっていないのは「廃炉のごみ」だけではない。国内では、原発で使い終えた核燃料から生まれる「核のごみ」を埋める最終処分場もない。原発の出口を整えないまま、安倍政権は「原発の活用」をうたい、原子力規制委員会が認めた原発を再び動かそうとしている。▼1面参照
「原発ゼロ」を訴える小泉純一郎元首相は12日の記者会見で、こう持論を語った。「(原発を)再稼働させると言っても、(核のごみの)最終処分場が見つからない」
政府は、すべての使用済み核燃料を再処理して再び燃料として使う「核燃料サイクル政策」をとっている。だが、日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)はトラブルが続き、いまだに完成していない。
たとえ工場が完成しても、核のごみの行き場はない。再処理後には「高レベル放射性廃棄物」という核のごみが出るが、これを地下深く埋める最終処分場のめどが立たないからだ。
2002年、経済産業省の外郭団体「原子力発電環境整備機構(NUMO)」は最終処分場の受け入れ先を公募した。だが、応じたのは高知県東洋町だけ。東洋町も住民の反対などですぐに撤回してしまった。
今、国内の原発の使用済み核燃料は合わせて約1・7万トンにのぼる。これらは各原発などで水をはった保管プールで冷やし、保管されたままだ。
「小泉元首相は最終処分場は夢のまた夢と言うが、各原発には(使用済み核燃料の)『中間貯蔵』はたくさんある。何年かの契約で(保管場所を)移すような方法を探ってもよい」
今月7日、原発を推進する自民党議員らでつくる電力安定供給推進議員連盟の会合で、会長を務める細田博之元官房長官はこう訴えた。使用済み核燃料を各地の回り持ちで保管し続けてはどうか、という案だ。
しかし、国内では保管プールがあと数年でいっぱいになる原発が多い。東京電力福島第一原発の事故では4号機のプールの水が減って使用済み核燃料が露出し、大量の放射性物質を放出するおそれもあった。
こうした不安から、原発が立つ地域では、細田氏が言うような案を警戒する動きがすでに出ていた。
■「消費地で貯蔵を」要請
今年6月、関西電力に「リサイクル燃料資源中間貯蔵施設設置推進プロジェクトチーム」という名の組織ができた。使用済み核燃料の中間貯蔵場を確保するのがねらいだ。7月には八木誠社長をトップとする「推進会議」もつくった。
きっかけは福井県の西川一誠知事からの要請だ。県内には関電の美浜、大飯(おおい)、高浜の3原発が立つ。
「発電は引き受けてきたが、中間貯蔵や処分まで引き受ける義務はない。消費地の火力発電所の敷地などを真剣に考えてほしい」。4月、西川知事は八木社長に大阪市などを念頭に中間貯蔵場を造るよう求めた。
ただ、美浜原発がある福井県美浜町の山口治太郎町長は「(現実には)消費地の理解は得られない」と言う。関電も「全社一丸」と強調するが、専従する社員は4人しかいない。
すでに関電の3原発は、すべてが再稼働すれば、使用済み核燃料の保管プールが7年ほどでいっぱいになってしまう。最終処分場や中間貯蔵場どころか、目先の保管もおぼつかない。
関電など5電力会社は原子力規制委に計7原発14基の再稼働を申請し、一部は年明けにも審査が終わる。だが、増え続ける使用済み核燃料や核のごみをどうするかの答えはまだない。
■運転30年以上、廃炉迫る15基
国内の原発は、たとえ廃炉をしても出口がない。
「運転開始から30年以上たつ原発の廃炉が相次ぐ」。経産省のある官僚は、今後、運転開始から30年以上たつ原発15基(東電福島第一原発を除く)の廃炉は避けられないとみる。
東日本大震災後に改正された原子炉等規制法では、原発の運転を「原則40年」と定めているからだ。各電力は古い原発の再稼働のために投資をするより、廃炉を選ぶ可能性もある。だが、廃炉で出るごみの処分場も決まっていない。
日本原子力発電東海原発(茨城県)より前に廃炉を決めた原発がある。1976年、旧日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構・JAEA)が実験炉「動力試験炉」(茨城県)の廃炉を決めた。
96年に原子炉の解体を終え、「低レベル放射性廃棄物」という廃炉のごみが3770トン出た。このうち50メートル以上の地下に埋める「余裕深度処分」が必要な制御棒などは140トンあるが、処分場のめどが立たず、今もJAEAの敷地内の施設で保管されたままだ。
商業用原発の東海原発を廃炉にすると、余裕深度処分が必要なごみは10倍以上の約1600トンに達する。中部電力浜岡原発(静岡県)の1、2号機や東電福島第一原発1~4号機の廃炉も決まっており、廃炉のごみはどんどん増える。
政府は震災前、30年までに余裕深度処分が必要な廃炉などのごみは計約5万トンに達するとの見通しを出した。だが、「原発依存」に戻るにしても「原発ゼロ」を進めるにしても、いまだに廃炉の道筋はついていない。
(松浦新、室矢英樹)
◆キーワード
<核燃料サイクル政策> 国内の原発で使い終えた核燃料はすべて、プルトニウムを取り出す「再処理」をして再び燃料として使うことになっている。青森県六ケ所村で日本原燃が再処理工場を造って1997年に完成する予定だったが、トラブルなどで今も完成していない。政府は、再処理後に出る「核のごみ」(高レベル放射性廃棄物)はガラスで固めて300メートルより深い地下に埋める最終処分をすることにしている。
◆「原発迷走」は今後、毎週月曜日の経済面に掲載します。記事へのご意見をメール(Keizai@asahi.com)でお寄せください。
おすすめコンテンツ
朝日新聞デジタルをフォローする
PR比べてお得!