香港中心街で「雨傘革命」が始まって50日余り。世界が見つめる学生らの街頭運動が、ついに行き詰まってきた。

 当局はバリケードの撤去と強制排除に乗り出した。当局は引き続き流血を避け、冷静に対応するよう努めねばならない。

 学生らも、民主主義を求める声を内外に響かせた成果を誇りつつ、次の目標を考える時だ。

 異例の運動にとって、潮目が変わった一番の理由は、地元の民意の離反である。占拠活動の長期化で経済的影響が深まり、最新の世論調査では市民の7~8割が撤退を求めている。

 当局も周到に準備を整えた。道路を使うビル管理会社やバス会社の訴えにより、裁判所が強制執行を命じたのを機に、排除に踏み切った。背後には、国際的な非難を避けたい習近平(シーチンピン)政権の思惑があったのだろう。

 そもそも学生らが立ち上がったのは、香港の行政長官を選ぶ選挙制度をめぐる対立からだ。習政権は、候補者をあらかじめ2~3人に制限して、中国側の意に沿わない候補を除外できる制度の導入を決めた。

 異議を唱えた学生らは、今回の運動で、香港政府との対話を実現させた。「中国の決定は永久に適用されるものではない」という、譲歩とも受けとれる発言を引き出した。

 ただ、彼らが輝いていたのはそこまでだ。抵抗運動は、有効な目標を設定し、実行し続けなければ、活力を失う。占拠場所で「広場投票」をすると提案しては中止したり、北京へ行こうとしては空港で断られたりして、方向感を失った。

 それでも、この運動には歴史的な意義がある。

 「一定の市民の支持があれば誰でも立候補できる制度を」という当然の主張を掲げて香港当局と習政権と対峙(たいじ)した姿は、多くの国で共感を呼んだ。

 10代を含む若者が牽引(けんいん)役となったことは特筆される。97年に英国から返還されて以降、日々強まる中国の影響力への反作用もあって、香港アイデンティティーと呼ぶべきものが根付いている。

 彼らは生まれ育った地を愛するからこそ、選挙にこだわるのである。

 いちど決まった制度を覆すのは難しい。だが、梁振英行政長官が明言したように、候補者を決める指名委員会の1200人の構成をどうするかなど、制度には検討の余地がある。

 次の選挙は3年後だが、民主主義の模索に終わりはない。様々なスタイルで問題提起を続ける運動を考えてほしい。