「司法の責任放棄」住民ら憤り 大飯・高浜差し止め却下
原発の再稼働を防ごうとする京滋の住民の願いは、司法に届かなかった。福井県にある関西電力大飯、高浜原発の再稼働差し止めを求めた仮処分申請から3年3カ月余り。大津地裁は27日、却下の決定を出した。住民は悔しさをあらわにする一方、関電の安全対策にも言及した決定内容に、「再稼働への大きな足かせになる」と評価する声も上がった。
午後1時すぎ、大津地裁前で弁護団長の井戸謙一弁護士(60)が決定の主文を読み上げると、約30人の住民からため息が漏れた。申立人の一人で福島県南相馬市から避難している青田勝彦さん(72)=大津市=は「司法の責任放棄だ。裁判所は原子力規制委員会に判断を丸投げした」と憤った。
審尋は18回を数えたが、決定が出ないまま年月が流れた。その間にも九州電力川内原発が規制委に新規制基準の適合性を認められるなど、再稼働に向けた動きが進む。井戸弁護士は「申し立て当初と状況が変わった。裁判所が国民の願いを受け止め、早期に決定を出していれば違う結果になったはず」と唇をかんだ。
大津市の滋賀弁護士会館であった住民報告集会では、住民から「勇気のない決定だ」などの声が上がった。
ただ、今回の決定は関電側の安全対策にも言及。住民側が「過去の地震の平均像を算出しただけ」と問題視する基準地震動(最大規模の地震の揺れ)の策定方法に触れ、地裁は「関電からは何ら説明がない」と指摘。住民の避難計画の策定などが進んでいない現状では「再稼働はあり得ない」と言い切った。住民代表の辻義則さん(67)=長浜市=は「関電がこのまま再稼働に走ることはできない内容。非常に大きな足かせになる」と評価した。
【 2014年11月27日 23時32分 】