(英エコノミスト誌 2014年11月22日号)
人口動態が長期停滞を説明してくれるかもしれない。
1930年代後半、恐慌がなぜ10年近くも続くのかを説明しようとしていたエコノミストらは、問題は人口不足かもしれないと考えた。「人口の増加局面から減少局面への転換は非常に破滅的かもしれない」。ジョン・メイナード・ケインズは1937年にこう述べた。
その翌年、やはり著名経済学者のアルヴィン・ハンセンは、米国では、人口と領土、新しいアイデアが尽きつつあると懸念した。ハンセンいわく、その結果が「長期停滞――すなわち、初期段階で死んでいく弱い景気回復と、自己増殖し、固くて一見取り除けないように見える失業の芯を残す恐慌」だった。
先進国を苦しめる「長期停滞(secular stagnation)」
1年前、ハーバード大学のラリー・サマーズが、先進国の長引く病を表現するために、この「長期停滞(secular stagnation)」という言葉を復活させた。そして、弱い需要と過剰貯蓄が、低い短期金利というお決まりの手段で成長を刺激するのを不可能にしていると主張した。
サマーズ氏が表現した病において、人口動態が中心的な役割を果たしているのかもしれない。それも、1930年代以上に重要な役割を果たしている可能性がある。
高齢化する人口は複数の経路を通じて成長と金利を抑え込む。最も直接的なのが、労働供給を通じて、だ。経済の潜在的な生産量は、労働者の数と生産性で決まる。ドイツと日本では、生産年齢人口が10年以上も縮小しており、減少率は今後数年で加速する見込みだ(図参照)。
英国の潜在労働力は今後数十年のうちに成長が止まる。米国の潜在労働力の伸びは、2000年から2013年にかけて続いた0.9%というペースの3分の1程度に落ち込む見通しだ。
他の条件がすべて同じだった場合、労働力の伸びが0.5ポイント下がると、経済成長もほぼ同じだけ落ち込む。そのような効果は徐々に感じられるはずだ。だが、景気後退は、多くの労働者に早期退職を促すことで、このプロセスを加速させた可能性がある。
米国では、第1次ベビーブーム世代が62歳になった2008年に、公的年金のソーシャルセキュリティーを受給する権利を得た。
複数の研究によれば、これが恐らく、それ以降、仕事に就いているか仕事を探している生産年齢人口の割合が66%から63%未満に低下した落ち込み幅の半分を説明できるという(これは日本の経験とも似ている。日本は1990年代に、生産年齢人口が減少し始めたのと同じころに停滞とデフレに陥った)。