(2014年11月24日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
軍隊は、戦いたいと思う戦争ではなく、戦える戦争を戦わなければならないという軍事関連のことわざがある。これは西側の首脳がロシアとの対立において検討すべき金言だ。
オーストラリアのブリスベーンで先日行われた主要20カ国・地域(G20)首脳会議でロシアのウラジーミル・プーチン大統領を痛い目に遭わせたことは、西側の首脳に生ぬるい道徳的満足感を与えたが、ウクライナの和平を進展させることはなかった。
抑止力としては効果がなかった経済制裁
西側の制裁でロシアのウラジーミル・プーチン大統領の支持率が高まった〔AFPBB News〕
形ばかりのジェスチャー政治は、ソ連崩壊後、最も憂慮すべき欧州の安全保障に対する脅威に対処するために必要な一貫した戦略に代わるものではない。
一方的に国境線を書き換えたことについて、西側の首脳がロシアに制裁を科したのは正しかった。
ロシアによるクリミア併合とウクライナ東部への介入は、再び欧州に無秩序をもたらした。そのような武力侵攻は、とがめないわけにはいかない。
しかし、制裁は必要な罰だったが、抑止力としてはあまり効果がなかった。制裁はロシアの行動を変えなかった。実際、むしろ悪化させただけだった可能性もある。制裁の影響は、プーチン体制の支持率を高め、孤立を楽しむクレムリンの強硬派を勢いづけることだったからだ。
では、次は何か? 現実主義は、西側とウクライナがロシアとの取引を試みる時が来たことを物語っている。
国境沿いに敵対的なロシアがいる限り、ウクライナの繁栄と安全はない
制裁の発動――および追加制裁の脅し――は、取引に必要な影響力を与えてくれた。ウクライナの安定のために、西側はその影響力を駆使し、理想的に西側が願うかもしれない解決策ではなく、達成可能な外交的解決を成し遂げるべきだ。
西側の最大の優先事項は、この混乱から豊かで安全なウクライナが姿を現す手助けをすることでなければならない。それは途方もなく大きな難題だ。しかし、政治的、経済的な存在としてのウクライナを骨抜きにする決意を固めた敵対的なロシアが国境沿い(および国境の内側)に存在していると、これは絶対に成功しない。