原発廃炉:消費者に負担転嫁導入、検討入り 経産省

毎日新聞 2014年11月26日 20時34分(最終更新 11月27日 02時03分)

 経済産業省は26日、運転終了後の原子力発電所の廃炉費用について、2018〜20年に予定される電気料金の完全自由化後も大手電力会社が消費者に負担を転嫁できる仕組みを導入する方向で検討に入った。発電部門と送電部門を切り離す発送電分離が実施された後、事業所や家庭への送配電を請け負う電力会社の利用料金に上乗せする形で負担を求める案が浮上している。電力自由化後に予想される価格競争に影響されずに廃炉費用を安定して回収できるようにすることで、電力会社による早期の廃炉判断につなげたい意向だ。

 原発を保有する電力大手は、原発の廃炉費用を年度ごとに分割して計上し、電気料金に上乗せしている。13年7月の制度改正で原発の運転期間が原則40年に限定されたことで、より長期の運転を想定していた老朽原発の廃炉が前倒しされ、電力会社が運転計画期間に分割計上する予定の廃炉費用を前倒しで計上する必要が生じ、多額の損失が生じる可能性が出ている。

 経産省は、16年7月に運転期限を迎える原発7基を廃炉にした場合、1基当たりの損失は約210億円と試算している。原発の再稼働が遅れて財務が悪化している電力各社は多額の損失計上に慎重で、廃炉が円滑に進まない懸念があった。このため、経産省は、廃炉となった場合も、原発設備の多くを複数年度に分割して計上できるようにし、電力会社の財務が一気に悪化しないようにする方針だ。

 新たな仕組みの検討を急ぐのは、18〜20年をめどに電気料金の完全自由化が予定され、それに合わせて廃炉費用を電気料金に上乗せする現行の料金制度が廃止されるため。16年の電力小売り全面自由化後、大手電力会社の電気料金だけに廃炉費用が上乗せされた場合、新規参入の電力小売会社が料金設定で有利となる。そうなれば、大手からの顧客流出が進み、廃炉費用の回収に困難をきたしかねない。経産省はこうした懸念を解消することで、大手電力による予定通りの廃炉を後押しする。【中井正裕】

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