原発再稼働差し止め:却下決定「再稼働あり得ない」指摘も
毎日新聞 2014年11月28日 01時13分
滋賀、大阪、京都3府県の住民計178人が関西電力に対し、福井県の大飯原発3、4号機と高浜原発3、4号機の再稼働差し止めを求めた仮処分申請で、27日に大津地裁が出した却下の決定は、事故対策などが進んでいない現状を指摘した上で仮処分の緊急性がないと判断した。住民側は、裁判所の認識と再稼働に向けた実際の動きの「ずれ」を批判する一方で、避難計画策定の遅れなどへの言及を一定程度評価した。
住民側は「事故で琵琶湖が放射能汚染されれば健康被害は計り知れない」などと主張。関電は「安全性は十分確保されている」として却下を求めていた。
決定は、4原発について「事故に対応する組織や地元自治体との連携・役割分担、住民の避難計画などが何ら策定されていない」と指摘。「これらの作業が進まなければ再稼働はあり得ず、原子力規制委がいたずらに早急に、新規制基準に適合すると判断して再稼働を容認するとは到底考えがたい」とした。
27日午後に記者会見した住民側代表の辻義則さん(67)は、早急な再稼働を否定した決定理由について「両原発は近く再稼働の前提となる原子炉設置変更許可が認められると見込まれており、社会の一般的な認識に反する」と批判した。
一方、決定が避難計画の策定作業などが進まなければ再稼働はあり得ないとしたことを「再稼働にまい進する政府・電力会社の姿勢に対する不信と批判」と評価。住民側代理人の井戸謙一弁護士(60)は「常識的に考えれば、こんな状態で再稼働は容認できないという裁判所のメッセージだ」と述べた。【田中将隆、村松洋】