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(奥が伊藤秀樹石巻災害復興支援協議会・会長、手前が被災当初から入った上野祥法さん)

 宮城県石巻市は、今回の津波でもっとも多くの犠牲者を出した地域である。その宮城県石巻市で活動する「一般社団法人石巻災害復興支援協議会」を訪ねた。今回の大震災後、ボランティアがなかなか被災地現地に入れない中で、石巻では「石巻方式」と呼ばれるようなユニークな体制を確立し、のべ10万人近い人たちが汗を流してきたと聞いたからだ。石巻専修大学は石巻市と災害協定を締結すべく準備をしていた。そこに大震災と津波が襲った。協定は未締結だが、専修大学を防災拠点として活用することが決められて、ボランティアの活動拠点ともなった。

 一月半ほど前に、ロフト社員として石巻現地で活動してきた上野さんから、興味深い話しを聞いた。被災直後にあちこちから集まってきたNGO/NPOがバラバラに活動し、重複して焚き出しを企画したり、同じ地域に偏在して支援に入ったりしてきた関係で、石巻で活動する団体が横断的に集まって連絡調整のために「NGO/NPO支援連絡会」をつくったという。その会議が活発に稼働し、多くのボランティアを受け入れているというのだ。話を聞いて、一度、現地の様子に見に行きたいと思った。

 石巻専修大学の一角に石巻災害復興支援協議会の事務所があった。整然と区分けされた事務所には活発に人の出入りがあり、また電話がひっきりなしにかかってくる。被災直後から、大学の一角を事務所として始めた協議会は、一日千人のボランティアを効率的に配置し、石巻市や自衛隊とも連携しながらダイナミックに動いている。

「ここまで、石巻方式と言われるほどに本格的な活動が出来たのは、伊藤さんがいたから」と上野さんは語る。伊藤さんは阪神大震災でボランティア体験があり、建設業を営んで、地元の青年会議所などで活発に活動してきた。何より、市長との関係も潤滑だ。被災自治体と、瓦礫撤去などの実務、そしてNGO/NPOの特性を把握しているという「人間交差点」的な位置にいる。個人ボランティアとして焚き出しや物資配布などをしていた伊藤さんは、上野さんたち外部から石巻に入ってきた団体も多く参加する連絡調整会議の議長となり、テキパキと議事をまとめだした。

 4月2日には、「石巻災害復興支援協議会」と改称し、5月13日には一般社団法人化する。そうしていくうちに、登録団体はうなぎのぼりに増えて6月4日現在で264団体を数えた。「何しろ昼間の活動で疲れていて、夜延々と議論するのではいけない。短く終えるのが自分き役割だった」と語る伊藤さん。その秘訣は、分科会方式だった。次の図を見て頂いた方が判りやすい。

石巻災害復興支援協議会 団体概要

→現在、移送・キッズ・心のケア・生活支援(仮設支援)・炊き出し・ダニバスターズ(避難所衛生改善)・復興マインド・マッドバスターズ(泥清掃)・メディカル・リラクゼーションの10の分科会があり、団体の枠を越えて協働しています。

とあるように、団体やグループの特性をふまえて支援テーマ別の分科会を開いてきた。また、特筆するべきは、市役所で開催される災害対策本部の会議に出席し、市と自衛隊との連携を強めていったことだろう。全国から集まってきたボランティアは専修大学の構内でテントを張っていた。「仮設トイレ10をバキュームの汲み取り付きで手配してくれ」と伊藤さんは市に交渉、すぐに実現した。「ボランティア活動も食事や睡眠、排泄を無視しては出来ないですよ」

これまでの「ボランティア」にはありえない分野での作業もどんどん進めた。そのひとつが、「重機」の使用だ。「ボランティアは未経験の若者だけが来るわけではない。今回は重機の免許を持ったベテランの人も『自分が役に立てば』とやってきた。道路にうずたかく積まれていた瓦礫をなくすには6〜7回かかる。最初に取り払うと、路肩にあった瓦礫が道路に出てくる。これも片づけると、家の中に漂着した瓦礫が吐き出される。さらに、次は家具が出てきて、畳が出てくる。道路の片づけは相当に力を注いだ」と伊藤さん。

現在は側溝にたまっている泥を取る作業をしているという。「道路だけがきれいになっても、側溝に泥がたまっていると水がたまり溢れだすので見えない部分だけど大事な仕事です」と上野さん。

約1時間にわたって、行政の補完ではなくてパートナーとしてボランティアを組織して行動と成果を重ねた石巻災害復興支援協議会のこれからに強い関心を抱いた。これまでに存在していなジャンルの活動だけに、国や行政からの支援は乏しく、避難所から仮設住宅へと人々が移り住む中での同協議会の中長期的な役割について注目していきたい。

これがハエ満載のハエ袋だった

 



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