日本の活路は"アジアシフト"しかない。最も愛され、必要とされ、戦いやすい場所で戦え!

2014年11月27日(木) 田村 耕太郎
Photo by Getty Images

地方創生もアジアの力を使え!

勝負がある程度見えていることもあり、こちらシンガポールではあまり話題になっていないが、日本では解散総選挙が迫る。争点はアベノミクスとなるようだが、アジアの金融ハブ・シンガポールでのアベノミクスへの評価は、期待が大きかった分、今は厳しい(ただ投資家たちは、日本経済には悲観的だが、日本株にはいまだかってないほど、短期では楽観的に見ている)。

私は人口が減り高齢化していく日本の活路はアジアの力を取り入れていくことにしかないと思っている。安倍政権の看板政策である「地方創生」にしても、日本の中で「都市」と「地方」が、現代版"列島改造論"のように、人口の奪い合いをしているようでは何の打開策にもならない。衰退する地方こそ、観光から企業誘致まで最も近くて活力のあるアジアの力を利用すべきだろう。

この"アジア"というチャンスに溢れ、課題も抱える場所について、できるだけ正確な最新事情を知ってほしいという思いで新刊『シンガポール発 最新事情から説く アジア・シフトのすすめ』(PHPビジネス新書)を書かせてもらった。

「日本がダメ」で「シンガポールをはじめとするアジアがいい」とか、その逆を語るつもりもない。そんな議論は正しいか正しくないか以前に、あまり意味がないと思うからだ。私が世界中でいろんな人と働いてみて思うのは、世界には完全無欠なパラダイスはないということ。世界を歩き、歴史を学んでみて思うのは、国家や地域の興亡はその時代にその国や地域の在り方、その住人の特性が合っているかどうかだけではないかということだ。

日本もシンガポールもパラダイスではない

私が、この本を書いた理由は「日本にこれから起こるであろうことをできるだけ正確に知ってもらいたい」と思ったからだ。そして「アジアという、今の時代に合った場所で、その勢いを感じながら、自分を成長させることに意義があるでないか」ということを訴えたいのだ。

私が今住んでいるシンガポールには素晴らしい点がたくさんあるが、課題もたくさんある。学生時代にあこがれて住んでみたパリもロンドンもボストンもロサンゼルスもニューヨークもそうだ。もちろん、愛する故郷鳥取も、長く住んだ東京も大阪もいろいろな面がある。住んだことはないが訪ねていった多くの町でも良い面も悪い面もみた。

やがて世界中の各地域の一人当たりの豊かさは同じような値に収斂してくると私は思う。もちろん格差があるので、地域の平均にどれだけ意味があるかは議論の分かれるところだが、傾向としては世界の地域ごとの豊かさの差は減っていくのではないだろうか。この見解については、本文中で紹介した各地域の一人当たりGDPの趨勢チャートをみていただけたら納得してもらえると思う。




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田村 耕太郎

(たむら・こうたろう) 前参議院議員。エール大学上席研究員、ハーバード大学研究員などを経て、世界で最も多くのノーベル賞受賞者を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で唯一の日本人研究員を務めた。
国立シンガポール大学公共政策大学院名誉顧問、新日本海新聞社取締役東京支社長。
1963年生まれ。早稲田大学卒業、慶応義塾大学大学院修了(MBA取得)。デューク大学ロースクール修了(法学修士)、エール大学大学院修了(経済学修士)、オックスフォード大学上級管理者養成プログラム修了、ハーバード大学ケネディスクール危機管理プログラム修了、スタンフォード大学ビジネススクールEコマースプログラム修了、東京大学EMP修了。
2002年から10年まで参議院議員を務めた間、内閣府大臣政務官(経済財政、金融、再チャレンジ担当)、参議院国土交通委員長などを歴任。
シンガポールの国父リー・クアンユー氏との親交を始め、欧米やインドの政治家、富豪、グローバル企業経営者たちに幅広い人脈を持つ。世界の政治、金融、研究の第一線で戦い続けてきた数少ない日本人の一人。
2014年8月、シンガポールにアジアの地政学リスクを分析するシンクタンク「日本戦略情報機構(JII)」を設立。また、国立シンガポール大学(NUS)リー・クワンユー公共政策大学院の兼任教授に就任し、日本の政府関係者やビジネスリーダーに向けたアジア地政学研修を同校教授陣とともに実施する。
著書に『君に、世界との戦い方を教えよう 「グローバルの覇者をめざす教育」の最前線から』などがある。