2014年10月度のABC部数が明らかになった。それによると、朝日新聞は、対前月差で-19万2642部で、読売新聞は-12万8489部だった。朝日、読売とも大幅に部数を減らしている。
対前年同月差は、朝日が-51万8764部、読売が-51万1522部である。
朝日バッシングの後の時期なので、その影響がどのように現れるかが注目されていたが、新聞の衰退傾向がそのまま現れたにすぎず、バッシングの影響はほとんど見られなかったと言えるだろう。新聞の影響力がなくなっている証ともいえる。
読売は、11月2日の「発刊140年」にあわせて拡販キャンペーン(新聞の無料配布など、冒頭の写真参照)を行ったが、増部数どころか、約13万何部も減らしている。
次に掲載するのは、米国のインターネット新聞『ハフィントン・ポスト』に掲載された全米主要紙の発行部数である。記事の日付は、2013年4月30日。データの出典はABC部数。米国のABC部数は、日本とは違って電子版(デジタル)の購読者を含んだ数字が表示される。
その背景には、 電子版のデータがなければ、ABC部数はマーケット戦略の道具にはならなくなっている事情があるようだ。
1. The Wall Street Journal — 2,378,827 (898,102 デジタルを含む)
2. The New York Times — 1,865,318 (1,133,923 デジタルを含む)
3. USA Today — 1,674,306 (249,900 デジタルを含む)
4. Los Angeles Times — 653,868 (177,720 デジタル、 43,275特別版を含む )
5. Daily News of New York — 516,165 (155,706デジタルを含む)
6. New York Post — 500,521 (200,571 デジタルを含む)
7. The Washington Post — 474,767 (42,313デジタル、 1,305 特別版を含む)
8. Chicago Sun-Times — 470,548 (77,660デジタル、 208,087 特別版を含む)
9. The Denver Post — 416,676 (192,805デジタル、 10,041 特別版を含む)
10. Chicago Tribune — 414,930 ( 46,785デジタルを含む)
次に示すのは、イギリスにおける新聞の部数変動である。The Sunなどタブロイド判の大衆紙を含む。下記の引用は、The Sunを例に引くと、次のようなデータ構成になっている。
The Sun・・・新聞社名、2,258,359・・・2013年8月のABC部数、
(2,502,691)・・・2012年8月のABC部数、-9.76・・・対前年比
The Sun: 2,258,359(2,502,691)-9.76
Daily Mirror: 1,045,971(1,088,724)-3.93
Daily Star: 547,955(600,304) -8.72
Daily Record: 252,575(276,270)-8.58
Daily Mail: 1:802,083(1,914,126)-5.85
Daily Express: 530,631(550,502)-3.61
Daily Telegraph: 557,536(584,089)-4.55
The Times: 391,643 (407,720)-3.94
Financial Times: 236,281(280,124)-15.65
The Guardian: 189,646(204,271)-7.16
The Independent: 68,696(81,804)-16.02
i: 295,179 (281,530)4.85
イギリスの主要な新聞は、「i」を除いて、すべて部数を減らしている。しかも、なかには「Financial Times」(フィナンシャル・タイムズ)のように、前年比でマイナス15.65%にも達している新聞社もある。
これに対して日本の新聞の減部数率は、昨年の9月から今年の9月までの1年で、中央紙が4.16%、中央紙以外が4.59%である。
イギリスでは全般的に日本の新聞よりも早いスピードで新聞ばなれが進んでいる。しかし、日本のABC部数は必ずしも、実際に販売されている新聞の部数を正確に反映しているとは限らない。
新聞の公称部数を示す9月のABC部数によると、以下に示すように中央紙よりも、地方紙(ブロック紙・子ども新聞等を含む)の方がより部数を減らしている。減部数率が高い。
地方紙の総計部数:1566万9925部(対前月差は、7万2273部)
これに対して中央紙(朝日、読売、毎日、産経、日経)の総計部数は次の通りである。
中央紙の総計部数:2412万840部(対前月差は、3万4079部)
9月度の減部数率を整理すると次にようになる。
地方紙の減紙率:0.46%(対前月比)
中央紙の減紙率:0.14%(対前月比)
しかし、この1年の部数動向は、次に示すように、地方紙も中央紙もほどんど変わらない。
中央紙の減紙率 4.16%(対前年比)
地方紙の減紙率 4.59%(対前年比)
相対的に新聞産業の衰退が進んでいることを示している。
従軍慰安婦の問題で朝日新聞に対するバッシングが始まったのは、8月の下旬だった。この機に乗じて、読売新聞が「朝日叩き」のリーフレットをポスティングすると同時に、新聞拡販に乗り出したことは周知の事実である。
が、読売は肝心の購読者を増やすことに成功したのだろうか。次に示すのが9月のABC部数である。(括弧)内は対前月差。
【2014年9月ABC部数(読売朝刊)】
読売(北海道) 210,259(-535)
読売(東京) 5,684,468 (9,102)
読売(中部) 159,489(181)
読売(大阪) 2,293,649 (17)
読売(西部) 797,781(-139)
読売(北陸) 96,968(144)
読売(合計) 9,242,614 (8,770)
結論を先に言えば、読売新聞が9月中に増やした部数は、全国でたったの8770部だった。読売の9月のABC部数は、924万2614部であるから、その1000分の1に満たない。拡販戦略に失敗したと評するのが妥当だ。
一方、週刊誌や月刊誌が「読者ばなれ」を報じていた朝日新聞は、本当に部数を減らしたのだろうか?
次に紹介するのは、過去にも何度か紹介した読売新聞の即売部数(駅やコンビニなどで販売される新聞)の変遷である。今年の部数は把握していないが、昨年までの部数を見る限りは、順調に増えている。
2002年7月に約2万5000部だったものが、2013年1月には、約15万3000部に。6倍の伸びである。
2002.7ー 12月平均:25,037
2008.7ー12月平均 :67,736
2012.7-12月平均 :151,657
2013.7-12月平均 :160,005
このような傾向は、朝日新聞や毎日新聞には見られない。
本日(10月10日)発売の『週刊金曜日』が、読売新聞社の部数減について書いた記事(黒薮執筆)を掲載している。タイトルは、「昨年11月から77万部以上、部数減に歯止めなし」、「読売新聞が朝日叩きに熱心なわけ」。
この記事では、「押し紙」問題にも言及している。読売の「押し紙」については、司法判断が異なる2つの代表的な判例がある。
■読売の「押し紙」を認定した判例
読売と新聞販売店の間で起きた訴訟-真村訴訟で、2007年に福岡高裁(西理裁判長)は、読売の「押し紙」政策を認定した。判決の一部を引用してみよう。
このように、一方で定数(黒薮注:新聞の搬入部数)と実配数が異なることを(黒薮注:読売は)知りながら、あえて定数と実配数を一致させることをせず、定数だけをABC協会に報告して広告料計算の基礎としているという態度が見られるのであり、これは、自らの利益のためには定数と実配数の齟齬をある程度容認するかのような姿勢であると評されても仕方のないところである。
そうであれば、一審原告真村の虚偽報告を一方的に厳しく非難することは、上記のような自らの利益優先の態度と比較して身勝手のそしりを免れないものというべきである。
判決は2007年12月に、最高裁が上告を棄却するかたちで確定した。
■読売の「押し紙」を否認した判例
読売が新潮社(黒薮)に対して起こした裁判で、読売の「押し紙」が争点になった裁判(村上正敏裁判長)。東京地裁は読売に「押し紙」は存在しないと認定した。また、被告が証拠として提出した「押し紙」についての記述がある魚住昭氏の『メディアと権力』などの書籍には、記述の裏付けがないと認定した。
控訴審、上告審とも読売が勝訴した
2012.05.30
2012.05.22
2009.12.17
2013.05.15
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出版社の紹介、取材と執筆、編集、配本までをプロジュース ...
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