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昨年の参院選「違憲状態」 最高裁判決

昨年の参院選「一票の格差」訴訟の上告審判決後、記者の質問に答える升永英俊弁護士(左から2人目)ら=26日午後、最高裁前で(岩本旭人撮影)

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 「一票の格差」が最大四・七七倍だった昨年七月の参院選は一票の価値が不平等で憲法違反だとして、弁護士の二グループが選挙無効(やり直し)を求めた十六件の訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は二十六日、違憲状態だったとする判断を示した。選挙無効の請求は退けたが、一人が個別意見の中で、参院選訴訟として初めて「無効」に踏み込んだ。参院選をめぐる違憲状態判決は三回目。

 一審の高裁・支部で三件の違憲判決が出ており、このうち一件は選挙無効も認めたが、大法廷は、二〇一六年選挙までに抜本改革するとした国会の取り組みを考慮し、違憲判断を回避した。その上で、前回大法廷判決に続き、都道府県単位の選挙区割りの見直しを求め、国会に抜本改革の着実な実施を迫った。

 判決は、十五人の裁判官のうち十一人の多数意見。うち六人は、抜本改革をしないまま一六年選挙を実施した場合は、次回判決では違憲判断もありうると示唆する補足意見を述べた。

 残りの四人は「違憲」との反対意見。このうち山本庸幸(つねゆき)裁判官は「議員一人当たりの有権者数が少ない選挙区については即時、無効とすべきだ」とした。

 昨年七月の参院選は、格差が最大五・〇〇倍だった一〇年選挙をめぐる一二年の前回大法廷判決が違憲状態だったため、定数を四増四減して行われた。格差は多少、改善されたが五倍前後で推移した。

 参院は制度の抜本改革について、一三年選挙では見送ったものの、一六年選挙までに行うとしている。今回の判決はこれを評価し、「単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、都道府県単位の選挙区設定となっている現行方式を改めるなど、できるだけ速やかに不平等状態を解消する必要がある」と付言した。

◆「次は違憲」改革迫る

 <解説>

 参院選一票の格差訴訟の最高裁判決は前回判決に続き「違憲状態」の警告を国会に示した。二〇一六年選挙までに抜本的な是正に取り組むことを前提に国会の裁量を尊重はしたが、約束が果たされなければ次は違憲判決、という最後通告に近い厳しい判断だ。

 参院は三年ごとに半数を改選する仕組みで、有権者が少ない選挙区にも最低二議席を割り当てなければならず、格差が縮まりにくいという特有の事情がある。このため衆院より寛容な「五倍程度の格差なら合憲」との見方が国会に浸透し、司法もこれを容認してきた。

 しかし近年は衆参のねじれで参院の役割が重くなる事態もあり、司法が投票価値の平等をより厳格に捉える傾向にある。「五倍なら合憲」とみられていた判決相場は変わり、五・〇〇倍の一〇年選挙も、四・七七倍の一三年選挙も憲法違反の不平等選挙と判断された。

 衆院、参院がいずれも「違憲状態」という異常な国会で、抜本改革に向けた議論は一向に進まない。今回、十五裁判官中の一人とはいえ、初めて「無効」の意見表明があったことは、司法の忍耐が限界を超えつつあることを端的に示している。

 最高裁が、司法と立法府の関係を配慮したぎりぎりの表現で選挙制度改革を求めているのは明白だ。二年後の参院選までに都道府県単位を基本とする選挙区割りを変えられるか。重い課題が突き付けられた。

 (共同・川上宏)

 <参院選 「一票の格差」> 議員1人当たりの有権者数が選挙区ごとに異なるため、一票の価値に格差が生じる問題。衆議院に比べて参議院は定数が少なく、3年ごとの半数改選のため各選挙区の定数は必ず偶数になり、格差が拡大しやすい。訴訟では、法の下の平等を定めた憲法に違反する著しい不平等が生じている場合は「違憲状態」、さらに格差是正に必要な期間が過ぎ国会の裁量権の限界を超えていれば「違憲」、選挙をやり直しても公益を著しく害さないと判断すれば「無効」の判決になる。

 

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