ドットインストールのシステムを1人で支えるF.Ko-Ji氏の抱えるジレンマ【30分対談Liveモイめし】
2014/11/27公開
『ツイキャス』を運営するモイの代表取締役で、経験豊富なエンジニア赤松洋介氏が、週替わりで旬なスタートアップのエンジニアや起業家を招いて放談する「モイめし」。今回のゲストは、3分動画でマスターする初心者向けプログラミング学習サイト『ドットインストール』を開発・運営する株式会社ドットインストールCTO/Co-FounderのF.Ko-Ji氏だ。
放送翌日の11月27日でサービスリリースから丸3年となる『ドットインストール』だが、人気ブログ『百式』管理人でもあるCEOの田口元氏と、システム開発を担当するCTOのF.Ko-Ji氏のほかは、学生アルバイト数人がいるだけという小所帯。昨年までの少数精鋭体制から急速に組織を拡大しているモイ赤松氏との放談は、少人数で働くことのメリット、スケールさせていく際に直面するジレンマといった話題に及んだ。
本業の合間に8時間で作った『#グラドル自画撮り部 の部室』
F.Ko-Ji氏が仕事の合間にわずか8時間で制作したという『#グラドル自画撮り部 の部室』
赤松 F.Ko-Jiさんとは知り合ってもう長いんですよね。以前はRSS系のフィードフォースという会社にお勤めでしたが、当時はブロガーとしての認識しかありませんでした。ブログ(『F.Ko-Jiの「一秒後は未来」』)の方も長く続けておられるんですか?
F.Ko-Ji 10年くらいになりますね。
F.Ko-Ji フィードフォース在職中から個人でもサービスをたくさん立ち上げていますね。
F.Ko-Ji ちょくちょく作っていましたね。ユーザー登録のあるちゃんとしたサービスとしては、『梅酒.in』という梅酒の感想を投稿するサービスを作ったのが最初です。2008年くらいですかね。
赤松 気合の入ったサービスですよね。梅酒に対する愛情が感じられる。
F.Ko-Ji 梅酒がとにかく好きなので。当時ほかに梅酒を扱うようなWebサービスがなかったので、自分が好きなものをガッツリやってみた感じです。
赤松 ほかには『Meity』というサービスもやってますね。あれはどうして作ろうと?
F.Ko-Ji Twitterのアカウントで使える非公開の掲示板です。立ち上げたのはまだFacebookが流行する前で、オフ会の日程調整などがTwitter上の公の場で行われていました。ですが、中には公開できないものもありますよね? DMだと1対1でしか使えないので、大人数で投稿できる場があったら便利なんじゃないかと思ったのがきっかけです。
赤松 淡々と作って淡々とリリースまでやってしまうのがすごいですよね。多くの人は作ってもリリースまでいかず、内輪で使って終わってしまうのに。最近も『#グラドル自画撮り部 の部室』というのを作っていたけれど、完成までが本当に速かった!
F.Ko-Ji あれは8時間で作りました。ちょうどタスクの合間にTwitter上で盛り上がっているのを見かけたので、これは作ったらいいだろう、と。
赤松 「思いついたら作る」を実践しているのがすごいですよね。
最終出社は8月末。GitHubのIssuesで“一人情報共有”
『ドットインストール』のシステムを1人で開発しているF.Ko-Ji氏(左)。自宅かカフェで作業をすることがほとんどという
赤松 『Meity』の後にドットインストールにジョインすることになるわけですよね。もう何年になりましたか?
F.Ko-Ji 11月27日でちょうど丸3年になります。
赤松 それはおめでとうございます。いろいろとご苦労がありました?
F.Ko-Ji 苦労……あるといえばありますけど、開発は自分ひとりしかいないので、困ったときに悶々と悩みながらやっているという感じですね。
赤松 どういった開発体制になっているんですか?
F.Ko-Ji コードを勉強して動画を作るのは田口の担当で、自分はシステムの開発と、できた動画のチェックです。社員は自分たち2人だけで、後はアルバイトの学生が5人くらいいます。
赤松 まさに田口さんと二人三脚でやってこられたんですね。うわさによれば、福永さんはあまり会社に出ることがないとか。
F.Ko-Ji 最後に出社したのは8月末ですね(笑)。自宅かカフェで仕事をしていることが多いです。出勤時間が決まっていないので、だんだんと生活時間がずれていってしまって、どう効率よく時間を使うかを考えるようになった結果、移動時間を節約した方がいいんじゃないかという結論になりました。気楽な感じでやっているので、ストレスはあまりないですね。
赤松 どれくらいの時間を開発に充てているんですか?
F.Ko-Ji まちまちですね。1日4時間くらいのこともあれば、半日続けてやっていることも。ただ、毎日何かしらやってはいます。1日空くと忘れてしまうので。
赤松 リモートワークをする上で会社として気をつけていることはありますか?
F.Ko-Ji 定期的にSkypeミーティングをやっているほか、自分は作業をなるべく細かくGitHubのIssuesに独り言のように書いて、共有するようにしています。
赤松 結局自分で開発するのに?
F.Ko-Ji 後で振り返る際に見つけやすいという狙いでもあります。
赤松 ドットインストールの場合は、田口さんが情報共有がうまいというのも大きそうです。なおかつ有名なブロガーでもある。リモートで働く上ではブログは結構有効なんです。その人が今何をやっていて、何を考えているのかというのが伝わりますから。
『ドットインストール』誕生には赤松氏も絡んでいた?
大学の授業でも利用されるなど、初心者向けプログラミング学習サイトとして浸透した感のある『ドットインストール』
赤松 そもそも、フリーでやられていた福永さんがドットインストールにジョインされたのはどういった経緯で?
F.Ko-Ji 個人サービスを今後どうしようか考えていたタイミングで田口から直接声をかけてもらって、こんな機会はめったにないと思って即決しました。
赤松 個人サービスをやっていたころと、どういったところが大きく変わりましたか?
F.Ko-Ji 1人でやっているころよりモチベーションが続きやすいのと、Twitterとかでディスられても、2人いるから自分だけに来ないというのは大きいですね(笑)。
赤松 ドットインストールはディスられることはないでしょう(笑)。そもそも、「3分でマスターする」というコンセプトがすばらしいと思うんですが、このコンセプトは最初からあったんですか?
F.Ko-Ji いえ、最初はなかったですね。もともと長い動画は見られないだろうから短くしようというのはあったんですが、確か何かのタイミングで赤松さんが「初心者向けがいい」とアドバイスしてくださったのでは?
赤松 え? そんなことありましたっけ(笑)?
F.Ko-Ji 「初心者向け」にしようというところが決まったことで、説明をざっくりと省き、今あるような方向性になっていったのだと思います。
赤松 田口さんの中にはもともと、誰もがプログラミングを学ぶべき、というお考えがあったようですね。プログラミングはいずれ義務教育になると思いますか?
F.Ko-Ji 現状は教える人がいないので難しいですよね。個人的には部活動レベルでいいと思っています。それもプログラミング部とかではなく、アプリ開発部のように面白そうだと思えるようなもの。義務教育にすると挫折する人とかも出てきそうですから。
赤松 いずれにしろ、『ドットインストール』が今後、教育の現場でも活用されるようになっていくといいですね。
F.Ko-Ji 実はすでに一部の大学の授業で使われているらしいですよ。TAの仕事が『ドットインストール』を再生することだとか(笑)。
赤松 すごい!雇用を生み出しているじゃないですか(笑)。
エンジニアが1人2人増えただけでは効率は悪くなる
「モイめし」当日が誕生日だったF.Ko-Ji氏。放送終盤には、モイスタッフからケーキ、ドットインストールCEOの田口氏からドローンを贈られるサプライズが
赤松 今後はどういった目標を置いているのですか?
F.Ko-Ji 直近ですとiOSアプリの開発ですね。Swiftを使って現在取り組んでいます。その後、様子を見てAndroid版を出すかどうかを決めるという感じです。
赤松 モバイルで隙間時間を使って勉強できるようにするということですか?
F.Ko-Ji それもありますが、今はプログラミング学習へのニーズもモチベーションもないという新しい層に、ちょっと面白そうなアプリがあるから、といった動機でプログラミングに興味を持ってもらえたらと思っています。あとはユーザー数。300万人いるといわれる大学生がみんな使ったことがあって、就職してエンジニアになる上でのデファクトスタンダードになれればいいですね。
赤松 そうなると開発体制も人を増やさないといけない?
F.Ko-Ji やっぱり1人だと大変なところも出てきたので。アプリをやっているとサーバサイドに手が回らず、機能追加したくても先延ばしになってしまう。一方で個人開発もできるくらいの余裕が欲しいところです。『ツイキャス』は基本、最初は全部赤松さんがやっていますよね?
赤松 そうですね。モイでも現在エンジニアを募集して人を増やしているんですが、その過去の遺産にみんなが苦しんでいますね(笑)。
F.Ko-Ji 人が増えた時に、そこのところがどうなるかが怖いですね。
赤松 そのジレンマはありますね。正直、1人でやっている時というのは1人で3人分くらい働くのがエンジニアなので、1人2人増えただけでは、共有することが多くなる分、かえって効率が悪くなる。増やすのであれば一気に、じゃないと難しい。ただ、3人でやっても1人でやっても結果は一緒ですが、サーバ、アプリ、インターフェースと切り分けができる分、スケールしやすいのは前者だと思います。
取材・文/鈴木陸夫(編集部)
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