「見えない幽霊が存在している感覚」を実験室で再現することに成功 ―Current Biology
1970年、ヒマラヤ山系ナンガ・パルパットのルパール壁初登攀に成功した登山家のラインホルト・メスナーは、極度の疲労と凍傷を抱えた状態で下山する途中、同行していた弟ギュンター以外の目に見えない「三人目」が突然背後に現れたと後に語っています。
メスナーの例に限らず、極限状態に身を置く登山家や冒険家からは、こうした「霊的体験」に遭遇したという報告が数多く挙げられているものの、その科学的メカニズムは長年にわたって謎とされてきました。しかしこのたび、スイス連邦工科大学のOlaf Blankeらのグループが、同様の現象を実験室の中で再現することに成功し、そのメカニズムを明らかにしたと報告しています。
研究グループは最初に、てんかんなどの神経疾患を患っており、且つこれまでに心霊的な体験をしたことがあると主張する12名の被験者の脳をMRIで調べました。その結果、島皮質(insular cortex)、前頭頂葉皮質(parietal-frontal cortex)、側頭頭頂皮質(temporo-parietal cortex)といった三つの領域に何らかの損傷が見つかります。
これらの領域は、自己認識や体の動作、空間知覚といった認知機能に関与していることが知られています。このことから研究グループでは、そうした機能の欠落が自己以外の存在認識に繋がっていると仮定し、これまでに心霊体験のない健康な被験者の協力を得た二番目の実験によって、その検証を行っています。
この実験では、目隠しをされた状態で前方に設置されているハンドルを操作するよう指示されます(上図)。このハンドルの動きは、被験者の背後に設置されているロボットアームへと伝えられ、被験者が描いたパターンが自身の背中にそのまま描かれることになります。
被験者が操作しているハンドルの動きと背中側のロボットアームの動きがリアルタイムに同期されている場合では、特に何も起こらなかったのですが、両者のタイミングにわざと遅延を発生させる(ハンドルで描いたパターンが一定時間遅れて背中に伝わる)と、際立った変化が現れました。
遅延設定を設けた状態で3分間にわたってハンドルを操作してもらった後、被験者がどのような感覚を覚えたか尋ねたところ、およそ3分の1が背後に何者かの存在を感じたと回答し、室内に四体の幽霊が存在していると答えた人もいたとのこと。この時、彼らが感じていた「幽霊」の気配は決して曖昧なものではなく、中には耐え難くなり実験を中止するよう求める人もいたそうです。
こうした結果について、研究を主導したGiulio Rognini氏は「我々の脳は、空間内に複数の身体肖像(representations of our body)を配置している。平常であれば、それらが統合された自己知覚として自分自身を組み立てることが可能だが、病気や、今回のようなロボット操作によって脳が誤作動を起こすと、自分自身と認識できない “2番目の自分” が出現することになる」と語っています。
自己認識と空間知覚とのバランスが崩れることで「幽霊」が出現することを実証した今回の研究ですが、こうした知見によって、統合失調症の患者に特有な幻覚・幻視といった症状改善にも寄与するものと期待されています。
ところで、今回の実験ではコンピューター制御されたロボットを用いてタイミングの調整を行っていますが、例えば目隠しをした状態での自分の手の動きを、友人などにタイミングをずらして背中になぞってもらうことで、似たような体験が出来るかもしれませんね(本人の気配を遮断する工夫が必要になりそうですが…)。興味のある方はチャレンジされてみてはいかがでしょう?
[Current Biology via Sciencedaily] [Gizmag]
ソーシャルシェア
著者
企業の研究所でR&D業務に携わっておりましたが、2013年4月をもって退職し、当サイトの専属となりました。Techinityはソース明示のポイントを押さえた解説を、Cul-Onはちょっとした小ネタ紹介的な内容にしていければと思っております。
俺霊感あるよってドヤってる人には馬鹿にする訳じゃなくてもちょっと病院行ってこいって事かな?
その通りですね
もろSence of Agencyとか関係するから、Premotor Cortexとか運動野とかかかわってないと不思議だけど、そういうのないのか?
モルダー、あなた疲れてるのよ
このニュースでディスカッション . ← このボッチも
幽霊かなんかですかね? みんなにも見える?
7人が同時に金縛りにあって同じように薄っすらとした老兵の姿を見たという知り合いがいるんだけど全員病気扱いされるの?てんかんも統失も病気を患っている人は誰もいないけど。
この研究グループは最初にてんかんなどの神経疾患を患っており、且つこれまでに心霊的な体験をしたことがある人だけを集めたんだよね。
それならあくまでてんかん患者で霊体験があるという人は幻覚を見ている可能性があることが科学的に立証できたというだけで、それ以外の健常者(これも確認が必要だけど)には必ずしも当てはまらないよね。
なんでも科学的に解明しようとすると結果に歪みが生じる。分からないから研究するのであって科学で分かっている範囲内に無理に押し込めて否定することは非科学的な手法で愚の骨頂だよね。それとも近代の科学ではこの世の全てを分かっていると言うのかな。
だから霊の一部は虚偽や幻覚と分かっているけどその全てが解明された訳ではない。よってまだ分からないことがある、と私は思うのだよ。
霊的感覚を全部解明できたとは誰も言ってないので問題ない。
あくまで感覚を再現する方法が1つ分かったというだけで(それでもすごいけど)、病気かどうかを判断するものじゃないよ。
そもそも論理的な科学者なら、「科学で全て分かった」などと早とちりせずに謙虚に考えることができるはず。
記憶の改竄なんて簡単に起きるし、人間の目ってセンサーとしてそこまで良いものじゃないし
幽霊なんて人間本意な概念を頭っから信じてる奴って
往々にして揚げ足取るばかりで脳みそ使ってねーもん。
いない証明よりいる証明の方が遥かに楽っての理解できてる?
霊的感覚を真面目に科学する勇気がすごい。
これに関して再現性ある手法を公表できるとは、俺なら思いもしなかったろう。
「目隠しをした状態での自分の手の動きを、友人などにタイミングをずらして背中になぞってもらう」
これって、幽霊でなくその友人の存在を感じるだけなのでは。
お世話になっております。アイマスクに加えて耳栓なりをした状態で気配を遮断&被験者本人には実験内容を知らせないなどの工夫を取り入れれば似たようなことが出来ないかな?と思ったのですが、念のため追記しておきました。
何故科学者はいる前提で調べないでいない前提で進めようとするのかね?「いる」「いない」で争ってる奴って本当馬鹿 「わからない」だろ?
いろんな科学者が「いる証明」をしようとして早々に挫折してんだろ
これは「いない証明」というより脳みそにはこういうバグもありますよって話だろ。
オカルト信者ってほんと頭使ってなくて嫌い。
自分の頭で考えられる事は過去に誰かが考えてるなんて思いも寄らないんだろうね。
オカルトというか、不思議な事を自分勝手に解釈して解剖も解析もせず、妄想だけで幽霊だとか化物だとか言う奴は頭がすこぶる悪く、それだけなら良いが大抵人に罪悪感なく害を与える奴だから嫌い。
そいつらは物事をありのまま受け取ることはせず、都合の良いように現実の認識を捻じ曲げ、それによって関わる人間を不幸にする。
宗教信者も同じ。
科学(で今まで常識とされているもの等も)を盲信しすぎる奴も。
世界はまだ知らない事、解らない事だらけで、わかっている事が数えきれないくらいあるからといって、もっと数え切れない不思議が無いと思ってる奴は大嫌いだ。