省エネや環境問題への意識の高まりを受け、今では街角の大型ディスプレーから白熱灯や蛍光灯に代わる照明まで、発光ダイオード(LED)は私たちの生活に深く浸透した▼中でも青色LEDの技術は画期的で、この開発がなければスマートフォンなどは世に現れていないと言われるほどだ。その基礎技術を切り開いた赤崎勇さんと天野浩さん、そして製品化につなげた中村修二さんがノーベル物理学賞に決まった▼20世紀中には無理と言われた開発である。それを可能にした理由を京都大出身の赤崎さんは「成否を考えず、好きなことをやってきただけ」と謙虚に語った▼小さなことでも何か新しいことをやろうという気持ちは京都で芽生えた。故西堀栄三郎氏らの固定観念にとらわれないチャレンジ精神を京大で学び、伝統と先進性が共存する京都の風土を体感したことが研究に生きたという▼コバルトブルーの光に魅せられ、多くの研究者が脱落する中でも「一人荒野を行く心境」で研究を続けた。若い人には、はやりのテーマにとらわれず、未知への挑戦をと呼び掛ける▼STAP細胞問題は日本の科学への信頼を揺るがせたが、底力を3氏の受賞はあらためて世界に示した。「将来芽の出る研究をきちんと評価できる人をもっと」。赤崎さんの願いだ。
[京都新聞 2014年10月08日掲載] |