鳥取で16万票得た候補が当選し、東京で55万票の候補が落選した。一人ひとりの投票価値に最大4・77倍の差があった。

 昨年7月の参院選について、最高裁はきのう、違憲状態にあったと判断した。

 最高裁は2年前、一票の格差が最大5・00倍だった10年の参院選について違憲状態とし、都道府県単位の区割りを改める抜本改正を促した。

 しかし、参院は「4増4減」の手直しでとどめた結果、5倍近い格差を温存してしまった。今回の判決が「違憲状態解消には足りない」と断じるのも、もっともだ。

 参院の一票の格差がここまで開くのは都道府県ごとに選挙区とし、半数ずつ改選するため、最低2人を割り振るためだ。

 この点、判決は改めて都道府県単位の区割りの見直しに言及した。これを避けては是正は無理と考えてのことだろう。

 違憲状態ではなく違憲だったと厳しく判断した少数派の中には、格差の大きい一部の選挙区について、選挙無効とまで踏み込む裁判官もいた。国会は「次はない」と覚悟するべきだ。

 前回参院選後も、選挙制度の改正議論は滞ったままだ。

 今年4月、参院選挙制度協議会で座長の脇雅史・自民党参院幹事長(当時)は、鳥取と島根など22府県の選挙区を統合する合区案を示した。しかし、自民党内の反発が強く、逆に本人が事実上更迭された。

 参院が自ら抜本改革をしてのぞむと決めた次の参院選は、16年夏に迫っている。このままでは間に合わないのではないか。

 「良識の府」と呼ばれた参院だが、選挙区と比例区からなる選挙制度はいまや衆院と重なり、政党色も強まっている。これも最高裁が参院の一票の格差により敏感になるゆえんだ。

 二院制のもとで衆院と参院がどう役割分担するか、両者が議論することが不可欠だ。参院ならではの価値を生み出せる選挙制度にする改革が必要だ。

 国会が怠ったままであれば、いずれ司法がはっきり「違憲」との判断を示すしか、是正の道はないだろう。

 深刻なのは、衆院も同じだ。最高裁は2年前の衆院選も違憲状態とし、都道府県に定数をまず1人割り当てる「1人別枠方式」の見直しを求めたが、衆院は小選挙区定数の5減だけで解散し、総選挙を迎える。

 弁護士グループは衆院選後、訴訟を起こすと明言した。選挙のたびに国会の代表性に疑問が出る状況はもう終わりにしなければならない。