「原子力にはもう将来性がない」と全員が口をそろえて話したことを昨日のことのように思い出します。原子力に夢を持っていた新入社員はもうどこにもいなくなり、全員が20代だというのにあきらめきった中年社員になりはてていました。原子力に長くいればいるほど、夢も希望もなくなり、ただ生活のために原子力の仕事をするようになる。だまされて入って、(生活のために)仕方なしに続ける。
全社員がそうだといっても言い過ぎではないと今でも感じています。つまり、自分で考える頭があれば、原子力推進派から、原子力否定派になるのはごく自然な流れなのです。それは、総理の時に原発推進派だった、小泉の変身ぶりを見てもわかるでしょう。知れば知るほど反対派になる−それがしがらみのない人間がたどることのできる自然な道筋というわけです。
しかしながら、実際に原子力村から抜けられる人は残念ながら、ほとんどいません。私が会社を辞めるといったときに、「いいなあ〜」と感想を述べた人は一人ではありませんでした。そして、引き留める際にも
「原子力は将来性のある素晴らしいエネルギーだから一緒にやろうよ」
といった説得は皆無で、
「東電より、楽でそれなりの給料をもらえる会社はほかにないよ」
というものばかりでした。入社7年の社員に嘘は通用しませんからね。
ところが、この自然の流れに反する−原発否定派から賛成派に変わる−といった映画が公開されました。その名も「パンドラの約束」
原子力エネルギーに異を唱えながらも、主張を180度転換させた人々の声を集めた映画『Pandora‘s Promise(パンドラの約束)』は、米国で開催されたサンダンス映画祭2013で上映。観客の75%が原子力反対者であったにもかかわらず、映画終了時にはその8割が原子力支持に変わったという。
この映画に、「原子力反対派から、賛成派寝返った人たち」が出てきます。それも、全員が例の環境問題を理由にして、放射性廃棄物など怖くもないと主張するわけです。核廃棄物がこの世に生まれて、70年たっているのに、未だに最終処分ができていないにもかかわらずです。
スチュアート・ブランド Stewart Brand
アメリカにおける環境保護運動の“巨頭”として、あまりにも有名な存在。第二次世界大戦後の反戦運動が環境運動へと展開していった仕掛け人で、60年代後半から70年初頭にかけてアメリカ中心に活発化した国土回復運動のバイブル「全世界カタログ」の発行人として知られる。(
(略)
環境プラグマティストの教祖ともいうべきスチュアート・ブランドが、旧来の環境保護派が最も嫌う原子力推進派となったのは21世紀に入って間もなくのことであった。2003年、政府による「気候変動に関する研究会」に請われて参加し、ユッカマウンテンの核廃棄物貯蔵所などで新エネルギーに関する真剣な検討を行ううちに、原子力こそが“地球温暖化の解決手段”であり“人口増加に対応できる新エネルギー源”であることを確信。「数十年にわたって環境保護派たちをミスリードしてしまったと後悔した」という。彼は未だに環境保護派たちに影響を与え続けていることからも、この映画に出演することで自分の主義・主張を改めて確認してもらいたいとしている。
(略)
環境プラグマティストの教祖ともいうべきスチュアート・ブランドが、旧来の環境保護派が最も嫌う原子力推進派となったのは21世紀に入って間もなくのことであった。2003年、政府による「気候変動に関する研究会」に請われて参加し、ユッカマウンテンの核廃棄物貯蔵所などで新エネルギーに関する真剣な検討を行ううちに、原子力こそが“地球温暖化の解決手段”であり“人口増加に対応できる新エネルギー源”であることを確信。「数十年にわたって環境保護派たちをミスリードしてしまったと後悔した」という。彼は未だに環境保護派たちに影響を与え続けていることからも、この映画に出演することで自分の主義・主張を改めて確認してもらいたいとしている。
マーク・ライナースMark Lynas
イギリスの作家・ジャーナリスト。環境活動家としても有名で、気候変動に関しては専門家である。著書『温暖化する地球での私たち』は王室科学賞を受賞するとともに、22の言語に翻訳出版されている。2005年にオックスフォードでの代替エネルギー会議に出席し、原子力が温暖化ガスを排出しないことを初めて自覚、あわせて太陽光や風力はエネルギー供給量において未だ微弱であると認識する。その後の論文で「環境保護派は原子力を見直さねばならない」と述べ、大論争を引き起こすことになった。だが、2009年のコペンハーゲン気候サミットでは、モルジブの気候変動アドバイザーとして「太陽光発電をもとに2020年までに化石燃料から完全脱却する」と表明。ここから分かるように気候変動への解決手段としての原子力を支持しつつ、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの推進を実践している。
マイケル・シェレンバーガー (Michael Shellenberger)
1990年代にナイキ従業員によって始められた、アジア地域での森林保護運動のリーダーとして活動したことが、環境活動家としてのスタートになった。その後、テッド・ノードハウスとともにオークランドにブレイクスルー研究所を設立、エネルギー・気候・安全保障などに関する研究を行っている。2004年に『環境保護主義の死』を上梓。それまでの環境保護主義が“気候変動に対して何の有効対策も持てないことが証明された”と述べ、若手の環境保護主義者に多大な影響を与えることになった。07年出版の『環境保護主義の死から、可能性の政治へ』は、環境論の発端となったレイチェルカーソン『沈黙の春』以来の名著とされている。シェレンバーガーは、スチュアート・ブランドの原子力推進への転換に影響されているだけでなく、独自の調査によって“再生可能エネルギーは90億人にもなる将来世界には適さない”として、自他ともに認める次世代原発のスポークスマン的存在となっている。
グイネス・クレイヴンズ
雑誌編集者・ジャーナリストで作家。彼女の専門ジャンルは多岐にわたり、フィクション・ノンフィクションの両面でベストセラーを生んでいる。「New Yorker」所属の時代から気候変動についても興味を持ち、当初は筋金入りともいえる反原発派だった。しかし、自然派科学者であるリチャード・アンダーソン博士夫妻と行動をともにするうち、原子力関係文献の調査や原子力発電所の訪問をもとに『原子力の真実』を発表。それ以降、原発賛成派のスポークスマンとして“気候変動危機の解決手段としての原子力”についての講演をアメリカ内外で行っている。
リチャード・ローズ(Richard Rhodes)
作家。これまでに24点の著作を発表しているが、最も有名なのがピューリッツァー賞ノンフィクション部門受賞作の『原子力爆弾の製造』(1986)。ヒロシマ・ナガサキ原爆の研究となったマンハッタン・プロジェクトに関する歴史と関係者を描いたもので、核時代の始まりを書いたものとして歴史学者・原子力学者からも評価を得ている。原子力発電に関しては当初、反原発の立場で記事を書いていたが、科学者やエンジニアが原子力の高いエネルギー変換効率に着目していることから考えを変えた。1993年発表の『エネルギーの常識』では、アメリカ原子力産業内での問題を日本とフランスの状況と比較検討した。また、一般市民がいかに核爆弾と原子力エネルギーを混同しているかについて強調。最終的に、原子力こそが最もクリーンで安全なエネルギーであると結論付けている。
御用学者は、日本だけではないことがよくおわかりでしょう。これらの人の主張を見て、おわかりでしょうか。原発に賛成する理由が「気候変動」ただ一つしかないのです。環境問題から原発賛成を主張するにはこの論点しかない。
原発、核エネルギーに反対する人たちが、遺伝の問題や、生命自体の問題、最終処分場の問題など、各人様々な理由があるにもかかわらずに、推進派の理論は非常にうすっぺらのペラペラ。
国連に署名を出せば、日本を救ってくれると運動していた人たちは、世界には日本の御用学者などとは比べものにならないような御用学者が世界にはたくさんいることをきちんと勉強するべきです。
そして、この映画の紹介文に書かれている「75%の人が原発推進派になった」という宣伝文句も深く受け止める必要があります。裏を返せば、原発反対運動にどれだけの根があるかが、問われているのです。ヒロシマ、ナガサキの被爆者の生き様を本当に知っている人、世界の被爆者たちの苦しみ、そしてフクシマの人の苦しみを本当に知っていれば、原発推進になることなどあり得ませんが、たんなる「流行」で原発に反対している人たちは、うまいプロパガンダを見せられると、原発賛成に変わる可能性があるともいえます。
このパンドラの約束でググりますと、いやはや、これまで出てきたご用メディア、ご用文化人にことごとくつながります。
反原発を放棄した人々 冷厳な事実描いた「パンドラの約束」 湯浅博2014.2.11 13:02
(前略)
だが、ブランドさんやライナースさんは石油など化石燃料を燃やしていれば、世界で年間300万人が大気汚染で死んでいると強調する。原発は風力についで安全な上に、太陽光は日照時間が足らない。米国の電力の20%が原発で賄われ、その半分がロシアの核兵器廃棄から再利用されるという。
原発の怖さは誰もが知っている。できれば避けたいが、貧困地帯に病院ができ、エアコンで快適な生活が広がれば、エネルギー使用量は増していく。「核の廃絶」を望まぬものもまたいない。だが、良心的な開発者が手を引いたとして、そうでない核開発者が携われば事態はかえって悪化する。評論家の福田恆存氏は「悪魔は一度地上に出現してしまった以上、二度と地下に戻らぬよ」という過酷な現実を語った。原発も核も、英知と技術を結集してどうコントロールするかにかかる。
だが、ブランドさんやライナースさんは石油など化石燃料を燃やしていれば、世界で年間300万人が大気汚染で死んでいると強調する。原発は風力についで安全な上に、太陽光は日照時間が足らない。米国の電力の20%が原発で賄われ、その半分がロシアの核兵器廃棄から再利用されるという。
原発の怖さは誰もが知っている。できれば避けたいが、貧困地帯に病院ができ、エアコンで快適な生活が広がれば、エネルギー使用量は増していく。「核の廃絶」を望まぬものもまたいない。だが、良心的な開発者が手を引いたとして、そうでない核開発者が携われば事態はかえって悪化する。評論家の福田恆存氏は「悪魔は一度地上に出現してしまった以上、二度と地下に戻らぬよ」という過酷な現実を語った。原発も核も、英知と技術を結集してどうコントロールするかにかかる。
いったい何がどうなっているのか、さっぱり要領を得ない記事です。嘘を書いていることが記者もわかっているんでしょう。
櫻井よしこ講演会×「パンドラの約束」特別先行試写会(日本エネルギー会議)
パンドラの約束2014年02月19日18:24 池田信夫
「原発推進映画」として話題のドキュメンタリーの試写を見た(4月19日から上映)。率直にいって、教科書としてはよくできているが、映画としてはおもしろくない。監督の主張が表に出過ぎていて、観客を引き込む力がない。
ばりばりの推進派から、酷評されています。これで、観客の75%の意見が変わったと書く米国のジャーナリスト。下手をすると日本よりも上手かもしれませんよ。映画「パンドラの約束」(上)【改訂】− 米環境派、原子力否定から容認への軌跡
石井 孝明
原発事故を経験し、人々がそれに不安を抱き続けている日本では、原子力をめぐる合意形成は難しいだろう。私は原子力の利用が必要と思うものの、日本国内での合意形成はあきらめている。その点で、手放しで原子力の未来を訴える、この映画に違和感を感じた。
推進派で著名な石井氏でも酷評せざるを得ないほどの映画のようですね。記事中には、原発事故を経験し、人々がそれに不安を抱き続けている日本では、原子力をめぐる合意形成は難しいだろう。私は原子力の利用が必要と思うものの、日本国内での合意形成はあきらめている。その点で、手放しで原子力の未来を訴える、この映画に違和感を感じた。
「現地の日本人に聞くと、米国の映画館での客の入りは多くなかったそうだ。一般市民レベルでの反響が大きいかといえば、それは違うという」
と書かれています。こんな売れもしていない、原発推進派からも酷評される映画が日本各地で公開されるのはなぜでしょうか。
冒頭に書きましたとおり、原発反対から原発推進に変わることは普通はありえません。
「環境を守るために原発を推進する」と恥知らずに述べている世界のご用活動家たちに比べれば、核エネルギーへの葛藤を訴える池田信夫氏、石井孝明氏の健全さが逆に素晴らしく思えるほどです。フクシマを経験した日本人には、譲れない一線があることが伝わってきました。今回のちょっとした収穫です
■関連ブログ
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タグ:パンドラの約束
惹句にサンダンス映画祭とあるのをみると、「消防署のほうから来ました」と自己紹介をする消化器訪問販売の話が思い起こされます。また、「観客の75%が原子力反対者で、映画終了時にはその8割が原子力支持に変わった」という数字の根拠も曖昧で、まるで「映画を見た人はみなさんそうされますよ」と言われているようです。
石井氏の記事をみてみると、映画のなかで使われている論理は、時々伝わってくる原発推進者の話と同じです。院長先生の言われるように、これらの理屈に惑わされないように、自分の意見の根をしっかりもちたいと思っております。
院長先生のご指摘どおり、その読売の記事でもそうでしたが、結局推進派は、地球温暖化を根拠にしか原発の利点を唱えられなくなりつつありますね。
結局人類は、
地球温暖化で多大の犠牲者を出すか?
それとも原発による諸問題で多大の犠牲者を出すか?
その選択を迫られているだけなのかもしれません。
結局どちらかを選択しても、選択しなかったどちらかにより多大の犠牲者が出るのは避けられないと。
ではどちらを選ぶかと問われれば、私は脱原発を選びます。
海水面の上昇ならば、多大の犠牲者が出たとしても、「その先の再生」という希望を持てますからね。
まぁ推進派の人たちは、従来どおり、原発の抱える諸問題を「将来的には解決可能(なはず)」という事を言って誤魔化し、先送りにすれば済んでしまうのだから楽ですよねぇ。
原発を止めたら温排水もとまり、水温が低くなって環境が改善したという記事も目につきます。
http://nikkan-spa.jp/543714
http://nikkan-spa.jp/549459
もしも原子力発電によって二酸化炭素排出量が減るにしても、この膨大な温排水によって実際に環境を暖めている効果と相殺して考えるべきですよね。
近代産業がなかった1000年前の温暖化に言及することなく、CO2犯人説を唱え続け、よく排出権取引まで考え出したと思います。温暖化をあざ笑うように今年の北半球はおそろしく寒冷化し、天罰だろうかと思うほどでした。
には組みできません。それに、核排気物質の数10万年にも渡る管理の為に費やされるエネルギーを二酸化炭素に換算した計算もこれには含まれても居ない。まさに、洗脳の為に作られた洗脳広告としてのおとぎ話だと拝見致しました。
には組みできません。それに、核廃棄物質の数10万年にも渡る管理の為に費やされるエネルギーを二酸化炭素に換算した計算もこれには含まれても居ない。まさに、洗脳の為に作られた洗脳広告としてのおとぎ話だと拝見致しました。
明日香・朴・西村・諸富「ハンセン氏らの書簡への反論―原子力発電は気候変動問題への答えではない」(2014.1.31)
http://www.cneas.tohoku.ac.jp/labs/china/asuka/_src/2014/nuclear_power-climate_change_jp.pdf
結構、納得しちゃったのですけど、どうなんでしょう?
福島第一原発事故の健康に対する影響は20年くらいするとはっきりするでしょうか。それとも因果関係をめぐってウヤムヤになっているかな。
地球温暖化説が検証されるには、かなりの時間が必要な気がしますが、21世紀末には一定の結論が出ているでしょうか。残念ながら私は、その頃には生きていないけど。
でも、再稼働候補は旧型ばかりという矛盾
でも、原発と結び付けられた瞬間に、何かおかしい!?!
落ち着いて、良く考えたら、日本に有る縄文遺跡の場所が答えを導き出しました。
弥生遺跡は、比較的温暖な地域に有りますが、縄文遺跡は、冬もの凄く寒い場所に有りますよね。
つまり、現在の気候では寒すぎる地域が、ちょうど暮らしやすい気候であったと言う証明。
少しでも知性と知識の有る友人なら、直ぐに納得。
知性のない友人は、縄文人は寒さに強いのだと、あくまでもプロパガンダを指示。
面白いので、リトマス紙に使っています。
●ダイオウイカ1日に2匹
佐渡沖で捕獲 ことし6匹
佐渡の両津湾で26日、深海生物のダイオウイカが2匹相次いで捕まった。県の担当者は「1日に2個体も揚るのは佐渡では初めてでは」としている。ことし佐渡沖で捕獲されたダイオウイカは6匹になる。
1匹目は午前7時前、佐渡市羽吉の沖合に羽吉漁協が仕掛けた定置網にかかった。検分した県佐渡地域振興局農林水産振興部によると、触腕も含めた全長は約4.5メートルで性別は不明。
2匹目は午後1時前、両津港で付近で泳いでいるのを佐渡漁協の漁師が見つけ引き揚げた。全長役4.3メートル。雄で、水揚げされた後もしばらく生きていた。
同部は2匹を国立科学博物館へ送り、生態などを調べる予定。米山洋一振興課長は「1日に2個体も見つかるのは異例で驚いている。頻繁に揚がるので、まだ佐渡近海にダイオウイカがいる可能性があるのでは」と話していた。
・・・しかし、こうも頻繁にダイオウイカが出てくるとなると、本当にこの先日本海側で何かが起きるのでは?と不安になってきます。大地震でなければ良いのですが・・・。
いかん。地球温暖化による海水面の上昇、頻繁に出没する巨大イカ、などなどから、思わずこれを連想してしまいますた(爆)。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BF%A0%E6%98%9F%E3%81%AE%E3%82%AC%E3%83%AB%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%A2