2014.10.15 Wednesday
06『くのいちせぶん』 第一話 「俺の妹がくノ一のわけがない」 その6
☆127
アノアノアノアノ…アタマウニデスカ?
オレ…アタマウニデスカ?
愛の告白中に起きた珍事…ちんじ?…に俺はアタマウニデスカ?
考えるのーりょく発動不可能。
見ている光景を受け入れのーりょくゼロ。
今の俺はただ心臓がばくばくしている生き物に過ぎなかった。
☆128
藍さんの藍一色の姿は…まるで忍者…なのだ…。忍者…なのだ…。忍者…なのだ…。
なんだか大事なコトなので三度言いました。
☆129
地上で起こった爆発の煙がまだ生々しい中、さらに新たなる無数の影が飛び交っていた。そしてまた俺に向かって何本もの矢が放たれた。
藍装束が…藍さんが、その矢を追うようにジャンプした。俺に届くその寸前に藍さんが矢を刀で全て薙ぎ払った。矢はやはり宙で全て爆発した。か、刀?
☆130
藍さんが体をひねり地上に向かい立て続けに手裏剣を放った。しゅ、手裏剣?
手裏剣は地上の影たちにすべて命中し影たちはその場に倒れた。そして、次の瞬間ことごとく爆発した。ば、爆発っ?
☆131
宙にいた藍さんが今度は地上に向かって落下していった。いや、木の幹を垂直に走り下っている。
地上では早くも次の影の集団が現れ弓を引いた。その影たちに突進しながら藍さんはまたもや手裏剣を連投した。
☆132
鮮やかで素早い動きだった。さすが俺の惚れ込んだ藍さん…て、何を俺は呑気な解説をしてるんだっ!
影の集団は矢を放つ前に粉砕された…と、思ったのだが、倒れこむ影たちのひとつから矢が樹上の俺に向かって発射されていた。その矢は必然的に地上に突進する藍さんに向かっていた。
「!」
☆133
藍さんが低く息が漏らし体をひねって避けた…が、矢は腕をかすって抜けた。
藍さんの腕から血がほとばしり散った。
「藍さんっ」
思わず俺は声を出していた。
叫んだつもりだったがほとんど喉に絡まって音にはならなかった。
その瞬間から藍さんのが木の幹から離れ落下の態勢になった。
☆134
今度は本当に落下だった。
そしてっ!
藍さんの腕をえぐった矢は真一文字に俺に向かって飛んで来る。
「ひっ!」
ざぐっ!
矢は俺には当たらず俺が乗っている枝の下側に逸れて刺さった。
藍さんの腕をかすったために的が外れたんだ。
その矢が爆発した。
☆135
俺の乗っている枝は根元が吹っ飛んだ。
俺は木の枝ごと落下しはじめた。
藍さんが地面に転がった。影たちが一斉に刀を抜いて藍さんに襲い掛かった。藍さんはまた刀をまるでバトンの様に振り回し体を回転させながら影を斬った。斬った?
斬られた影たちは倒れこみながらみな爆発した。
☆136
俺は落下しながら頭上に四方から矢の迫り来る音を聞いた。
そう頭上からだった。
今度は敵は木の上にいたに違いない。て、敵て。よくわからないけどとにかく敵だろ。
敵じゃないか?
敵的な敵だろ。
藍さんが再びジャンプした。
俺は俺が乗っていた枝から離れていた。
☆137
地面に向かってただ落ちるのみだった。
頭上背後から迫る矢の音。俺はその矢がすべて俺に向かっていることを確信していた。
俺は何故か知らぬが命を狙われているのだ。それだけは肌でわかった。あとはなんにもわからない。わからないが、迫り来る矢は俺に刺さるのであろう。
☆138
それはなんだかわかる。
そして、それまでのように矢は爆発するのであろう。
つまり俺は…死ぬっ!
死ぬ?
死ぬって?
なんでだっ?
死ぬ理由がない。
すべて鳴かず飛ばずに目立たなく育ってきた俺がなぜ矢にささって爆発して死ぬのですか?
わかんな過ぎるよっ!
☆139
そんなアタマコンラン落下してる俺を、ジャンプして来た藍さんが下から抱きとめた。
「えっ?」
そして藍さんはくるりと身体を回転させ、俺をかばうように体を入れ替えた。
「藍さんっ、なっ!」
なにをするんだっ!と、言いたかったのだが最後まで言えなかった。
☆140
次の瞬間、ドスドスドスと鈍い音がした。そしてその振動が伝わってきた。
藍さんに抱きかかえられている俺はそれを確認することは出来なかったが、頭上から襲い来た矢は藍さんの背中に刺さったのに違いなかった。
そ、そんなバカなことが…!
「藍さんっ!あ…」
☆141
藍さん…ともう一度言いたかったが続かなかった。
俺を抱える藍さんの力がふっと弱まったのだ。
藍色の頭巾で覆われた藍さんの顔が俺の左肩に伏せるようにあった。俺は頭巾から覗く藍さんのうなじを目の前にしていた。
「太吾さま…」
藍さんが俺をそう呼んだ。
☆143
そう弱々しい声で呼んだ。いつもの控えめの藍さんの声だった。
「太吾さま…殿…」
…とも呼んだ。俺のことを…殿…と…。か細く震える声だった。
「…藍…叶うことならば…末長く…太吾さまのおそばでお守りし続けとうございました…」
そう言った…。
☆144
消え入りそうな声で藍さんはそう言った。
その意味は…まるでわからなかったが、藍さんの、その力尽きたような声が、そのすべてを諦めた言葉が…俺の胸にしみてきた。
訳もなく涙があふれ出た。俺の目から。
まるでこれがもう最後のひと時のような…そんなはずないのに…
☆145
そんなはずないのに、そんな気が…そんな…気がした…。
「藍っ!」
「藍さまっ!」
地上からふたりの女の声がした。
それは…。
それは、なんと…
あろうことか…
十季と…
十季とかあさんの声だった…
☆146
藍さんが、十季とかあさんの声に呼応するようにぴくりと動いた。
抜け切ろうとしていた藍さんの身体に再び力がこもった。
藍さんが俺を力強く抱え直し、地上目掛けて突き放した。
俺は、藍さんの身体から離れていった。宙に残る藍さんの藍一色の全身が見えた。
☆147
その背中に突き刺さった矢も…見えた。
「藍さん・・・」
☆ ☆ ☆
10分前。
「ただいま〜」
と、十季はいつものように大萬中学から帰って来た。
「なんかある〜?」
と、十季はのんきに冷蔵庫を開けた。
「プリンあるわよお〜」
かあさんがのんきに答えた。
☆148
「あ、マンゴープリン、なんかでっか〜い」
「大萬フェアやってたのよスーパーオザワで。おおまんにひっかけて大マンゴープリンだって、あははははっ」
「あははは、なにそれぇ〜」
日常だった。
だが…。
ゴンっ!
と、何かが台所の窓ガラスに当たり、ふたりをそっちを見た。
☆149
窓の外に血まみれのデバトンがいた。
萬粕城を飛び立ったデバトンの後を追うように飛びたった武甲衆のクロバトンは竪穴式住居隣の弓道場にいた武甲衆弓組(粕太郎を襲った影の集団である)にいち早く少吾の暗殺指令の発令を知らせていたのだった。
☆150
それに依りデバトンは大萬公園でこの弓組に射抜かれたのだ。
だがデバトンも忍びの鳩。
自ら矢を引き抜き(どうやって?)、目的地の大萬家にたどり着いたのだった。
「デバトンっ」
十季が駆け寄り窓を開けデバトンを抱えた。足についた小さな紙片を取り出し、
広げて文面を確認した。
☆151
再びふたりは見合った。覚悟していたことだった。
すべてが終わり、すべてが始まる。
「太吾さまは?」
かあさんが聞いた。
「おそらく竪穴式住居」
十季が答えた。
「警護は藍のみか?」
「はい」
「デバトンがこの状態で何も起きていない筈がない。急げ十季」
「はっ」
☆152
次の瞬間、ふたりは鴇色と柘榴色の装束で家を飛び出していた。と、鴇色とざ、柘榴色?
☆ ☆ ☆
その10分後だった。
藍さんは体を翻し、周囲の木々めがけ鎖分銅を何本も投げた。く、鎖分銅っ?
しゅるるるるっ
☆153
鎖分銅は蜘蛛の巣のように四方に飛び木々の中に散った。
回転をやめず藍さんが鎖を手繰り寄せた。
分銅に絡め取られた6人ほどの弓組らがひっくくられた。
トンと木の幹を蹴り藍さんは大池の方に飛んだ。
池の中程から奥は水草が茂っていた。
☆154
藍さんと絡め取られた弓組がその水草の中に姿を消した。
藍さんが見えなくなった。
藍さんが俺を宙で抱きとめてから、水草に姿を消すまでの時間は…おそらく数秒…。
俺は地上に落下した。
地上すれすれで俺は柔らかい手で受け止められた。
☆155
鴇色と柘榴色の装束に身を固めた十季とかあさんだった。
かあさんが俺を背後で抱え、十季が俺の上に覆いかぶさった。
俺の視界は十季に寄って遮られた。
俺の顔の上に十季の胸があった。
どおーーーーーん
爆発音と共に水柱が立った。
地面が振動して俺の体が小刻みに揺れた。
☆156
ざざざざざどお…
大量の水滴が俺たちの上に降り注いだ。
俺の上には十季がいた。
ほとんどの水滴は十季がかぶった。
やがて・・・。
水滴の音がやんだ。
全てがおさまった。
俺も・・・十季も・・・俺の下で俺を抱えているかあさんも・・・動かなかった。
☆157(終)
俺の耳に、のどかな鳥たちの声が蘇って来た。
第一話 おわり
アノアノアノアノ…アタマウニデスカ?
オレ…アタマウニデスカ?
愛の告白中に起きた珍事…ちんじ?…に俺はアタマウニデスカ?
考えるのーりょく発動不可能。
見ている光景を受け入れのーりょくゼロ。
今の俺はただ心臓がばくばくしている生き物に過ぎなかった。
☆128
藍さんの藍一色の姿は…まるで忍者…なのだ…。忍者…なのだ…。忍者…なのだ…。
なんだか大事なコトなので三度言いました。
☆129
地上で起こった爆発の煙がまだ生々しい中、さらに新たなる無数の影が飛び交っていた。そしてまた俺に向かって何本もの矢が放たれた。
藍装束が…藍さんが、その矢を追うようにジャンプした。俺に届くその寸前に藍さんが矢を刀で全て薙ぎ払った。矢はやはり宙で全て爆発した。か、刀?
☆130
藍さんが体をひねり地上に向かい立て続けに手裏剣を放った。しゅ、手裏剣?
手裏剣は地上の影たちにすべて命中し影たちはその場に倒れた。そして、次の瞬間ことごとく爆発した。ば、爆発っ?
☆131
宙にいた藍さんが今度は地上に向かって落下していった。いや、木の幹を垂直に走り下っている。
地上では早くも次の影の集団が現れ弓を引いた。その影たちに突進しながら藍さんはまたもや手裏剣を連投した。
☆132
鮮やかで素早い動きだった。さすが俺の惚れ込んだ藍さん…て、何を俺は呑気な解説をしてるんだっ!
影の集団は矢を放つ前に粉砕された…と、思ったのだが、倒れこむ影たちのひとつから矢が樹上の俺に向かって発射されていた。その矢は必然的に地上に突進する藍さんに向かっていた。
「!」
☆133
藍さんが低く息が漏らし体をひねって避けた…が、矢は腕をかすって抜けた。
藍さんの腕から血がほとばしり散った。
「藍さんっ」
思わず俺は声を出していた。
叫んだつもりだったがほとんど喉に絡まって音にはならなかった。
その瞬間から藍さんのが木の幹から離れ落下の態勢になった。
☆134
今度は本当に落下だった。
そしてっ!
藍さんの腕をえぐった矢は真一文字に俺に向かって飛んで来る。
「ひっ!」
ざぐっ!
矢は俺には当たらず俺が乗っている枝の下側に逸れて刺さった。
藍さんの腕をかすったために的が外れたんだ。
その矢が爆発した。
☆135
俺の乗っている枝は根元が吹っ飛んだ。
俺は木の枝ごと落下しはじめた。
藍さんが地面に転がった。影たちが一斉に刀を抜いて藍さんに襲い掛かった。藍さんはまた刀をまるでバトンの様に振り回し体を回転させながら影を斬った。斬った?
斬られた影たちは倒れこみながらみな爆発した。
☆136
俺は落下しながら頭上に四方から矢の迫り来る音を聞いた。
そう頭上からだった。
今度は敵は木の上にいたに違いない。て、敵て。よくわからないけどとにかく敵だろ。
敵じゃないか?
敵的な敵だろ。
藍さんが再びジャンプした。
俺は俺が乗っていた枝から離れていた。
☆137
地面に向かってただ落ちるのみだった。
頭上背後から迫る矢の音。俺はその矢がすべて俺に向かっていることを確信していた。
俺は何故か知らぬが命を狙われているのだ。それだけは肌でわかった。あとはなんにもわからない。わからないが、迫り来る矢は俺に刺さるのであろう。
☆138
それはなんだかわかる。
そして、それまでのように矢は爆発するのであろう。
つまり俺は…死ぬっ!
死ぬ?
死ぬって?
なんでだっ?
死ぬ理由がない。
すべて鳴かず飛ばずに目立たなく育ってきた俺がなぜ矢にささって爆発して死ぬのですか?
わかんな過ぎるよっ!
☆139
そんなアタマコンラン落下してる俺を、ジャンプして来た藍さんが下から抱きとめた。
「えっ?」
そして藍さんはくるりと身体を回転させ、俺をかばうように体を入れ替えた。
「藍さんっ、なっ!」
なにをするんだっ!と、言いたかったのだが最後まで言えなかった。
☆140
次の瞬間、ドスドスドスと鈍い音がした。そしてその振動が伝わってきた。
藍さんに抱きかかえられている俺はそれを確認することは出来なかったが、頭上から襲い来た矢は藍さんの背中に刺さったのに違いなかった。
そ、そんなバカなことが…!
「藍さんっ!あ…」
☆141
藍さん…ともう一度言いたかったが続かなかった。
俺を抱える藍さんの力がふっと弱まったのだ。
藍色の頭巾で覆われた藍さんの顔が俺の左肩に伏せるようにあった。俺は頭巾から覗く藍さんのうなじを目の前にしていた。
「太吾さま…」
藍さんが俺をそう呼んだ。
☆143
そう弱々しい声で呼んだ。いつもの控えめの藍さんの声だった。
「太吾さま…殿…」
…とも呼んだ。俺のことを…殿…と…。か細く震える声だった。
「…藍…叶うことならば…末長く…太吾さまのおそばでお守りし続けとうございました…」
そう言った…。
☆144
消え入りそうな声で藍さんはそう言った。
その意味は…まるでわからなかったが、藍さんの、その力尽きたような声が、そのすべてを諦めた言葉が…俺の胸にしみてきた。
訳もなく涙があふれ出た。俺の目から。
まるでこれがもう最後のひと時のような…そんなはずないのに…
☆145
そんなはずないのに、そんな気が…そんな…気がした…。
「藍っ!」
「藍さまっ!」
地上からふたりの女の声がした。
それは…。
それは、なんと…
あろうことか…
十季と…
十季とかあさんの声だった…
☆146
藍さんが、十季とかあさんの声に呼応するようにぴくりと動いた。
抜け切ろうとしていた藍さんの身体に再び力がこもった。
藍さんが俺を力強く抱え直し、地上目掛けて突き放した。
俺は、藍さんの身体から離れていった。宙に残る藍さんの藍一色の全身が見えた。
☆147
その背中に突き刺さった矢も…見えた。
「藍さん・・・」
☆ ☆ ☆
10分前。
「ただいま〜」
と、十季はいつものように大萬中学から帰って来た。
「なんかある〜?」
と、十季はのんきに冷蔵庫を開けた。
「プリンあるわよお〜」
かあさんがのんきに答えた。
☆148
「あ、マンゴープリン、なんかでっか〜い」
「大萬フェアやってたのよスーパーオザワで。おおまんにひっかけて大マンゴープリンだって、あははははっ」
「あははは、なにそれぇ〜」
日常だった。
だが…。
ゴンっ!
と、何かが台所の窓ガラスに当たり、ふたりをそっちを見た。
☆149
窓の外に血まみれのデバトンがいた。
萬粕城を飛び立ったデバトンの後を追うように飛びたった武甲衆のクロバトンは竪穴式住居隣の弓道場にいた武甲衆弓組(粕太郎を襲った影の集団である)にいち早く少吾の暗殺指令の発令を知らせていたのだった。
☆150
それに依りデバトンは大萬公園でこの弓組に射抜かれたのだ。
だがデバトンも忍びの鳩。
自ら矢を引き抜き(どうやって?)、目的地の大萬家にたどり着いたのだった。
「デバトンっ」
十季が駆け寄り窓を開けデバトンを抱えた。足についた小さな紙片を取り出し、
広げて文面を確認した。
☆151
再びふたりは見合った。覚悟していたことだった。
すべてが終わり、すべてが始まる。
「太吾さまは?」
かあさんが聞いた。
「おそらく竪穴式住居」
十季が答えた。
「警護は藍のみか?」
「はい」
「デバトンがこの状態で何も起きていない筈がない。急げ十季」
「はっ」
☆152
次の瞬間、ふたりは鴇色と柘榴色の装束で家を飛び出していた。と、鴇色とざ、柘榴色?
☆ ☆ ☆
その10分後だった。
藍さんは体を翻し、周囲の木々めがけ鎖分銅を何本も投げた。く、鎖分銅っ?
しゅるるるるっ
☆153
鎖分銅は蜘蛛の巣のように四方に飛び木々の中に散った。
回転をやめず藍さんが鎖を手繰り寄せた。
分銅に絡め取られた6人ほどの弓組らがひっくくられた。
トンと木の幹を蹴り藍さんは大池の方に飛んだ。
池の中程から奥は水草が茂っていた。
☆154
藍さんと絡め取られた弓組がその水草の中に姿を消した。
藍さんが見えなくなった。
藍さんが俺を宙で抱きとめてから、水草に姿を消すまでの時間は…おそらく数秒…。
俺は地上に落下した。
地上すれすれで俺は柔らかい手で受け止められた。
☆155
鴇色と柘榴色の装束に身を固めた十季とかあさんだった。
かあさんが俺を背後で抱え、十季が俺の上に覆いかぶさった。
俺の視界は十季に寄って遮られた。
俺の顔の上に十季の胸があった。
どおーーーーーん
爆発音と共に水柱が立った。
地面が振動して俺の体が小刻みに揺れた。
☆156
ざざざざざどお…
大量の水滴が俺たちの上に降り注いだ。
俺の上には十季がいた。
ほとんどの水滴は十季がかぶった。
やがて・・・。
水滴の音がやんだ。
全てがおさまった。
俺も・・・十季も・・・俺の下で俺を抱えているかあさんも・・・動かなかった。
☆157(終)
俺の耳に、のどかな鳥たちの声が蘇って来た。
第一話 おわり