[PR]

 大阪市の労使関係条例に対し、司法が「適用すれば違憲」とする判断を再び示した。労組事務所を市庁舎内から退去させたことをめぐる訴訟に続き、市にとっては厳しい判決となった。市教職員組合は「妥当な判断」と評価する一方、「不適切な労使関係の改善」をめざす市は控訴するとみられ、問題解決への見通しは立たない。

 「教職員の思いを十分に受け止めてくれた」。市教組の稲田幸良(ゆきよし)・執行委員長は大阪地裁の判決後の26日午前11時すぎ、大阪市内で記者会見。市教組主催の教育研究集会の会場に学校を貸さなかった市の処分を違法とした判断を評価した。

 市教組によると、集会は組合員ではない教職員や地域の人も参加でき、子どもたちによりよい教育を行うことを目的とする。市教組は約40年間無料で学校を借りていた。全国各地の日教組系の組合でも、同じように公立学校を借りて開くことも珍しくないという。

 だが、橋下徹市長は2011年12月の就任後、市議会で「組合と市役所の体質はリセットする」と答弁。市と労組との関係を改める策を打ち出す中で12年7月に「労組活動への便宜供与はしない」と定めた市労使関係条例を制定した。

 条例の制定後、市教組は学校を借りられなくなり、12年度以降の集会は府の施設を有料で借りて開催するようになった。この施設には毎回約300人ほど集まる参加者全員を収容できる会議室がないため、市教組の関係者は「全体会を開くことができない」と話す。

 条例をめぐっては、市が庁舎内の労組事務所を組合に使わせないとする処分が違法とされた今年9月の地裁判決も「不当労働行為を適法化するために適用する限り、条文は違憲で無効」と指摘した。会見に同席した原告側代理人の竹下政行弁護士は「条例を今回のように使えば違憲となる。条例の存在意義はない」と述べ、市に対して改正するよう求めた。

 これに対し、市のある幹部は「判決は条例そのものの違法性を認めたわけではなく、見直しは考えていない」と話しており、今後も条例が適用されれば、同様の問題が生じる可能性もある。市の山本晋次教育長は判決後、「判決内容を慎重に精査したうえで、今後の対応を検討したいと考えている」と談話を出した。(川田惇史、坂本泰紀)