電車が発達した地域で育った女性なら、若いころにしつこい痴漢に悩まされた経験が少なからずあると思う。特に小学生〜高校生のころが被害のピークだったのではないか。これは多くの人に共通の認識だと思っていたのだが、先日、男性の友人が「痴漢なんてほとんど冤罪でしょ」と話すので驚いた。見ず知らずの女性を触る痴漢事件は、ニュースやドラマの中だけの珍しいケースだと思っていたというのだ。
話の発端は、ここ10年で増えた電車の「女性専用車両」について議論していたときのこと。私は小、中学校には地下鉄で通っていたのだが、通学途中のラッシュはとにかく痴漢との戦いだった。良識のある男性には理解できないかもしれないが、制服を着ている子供というのはとにかく痴漢に狙われる。痴漢の隣に乗り込んでしまったら最後、うまくよけながらひと駅を耐えに耐え、次の駅に着いたら逃げるしかない。高校生ぐらいになると、だいたい電車に乗る前から痴漢が寄ってきたことが感覚的に分かるので、乗る瞬間に隣のドアに移るなどして防ぐことができるようになる。またそのぐらいの年になれば肝も据わってくるので、大声で「やめてください!」と言うこともできた。しかし、気の弱い小学生のときはこれはなかなかできなかった。念のために断っておくが、私は色気ムンムンの子供だったわけでも美少女だったわけでもない。どこにでもいる一般的な子供だったし、電車に乗っている時間も10分程度だ。それでも、連日のように被害にあっていた。ちなみに、ひと駅の駅間が長い中央線や急行の東横線、旧新玉川線で通っていた友人の被害の多さは私どころではなかったと聞いている。