日銀は26日、2014年上半期の決算を発表した。9月末時点の総資産残高は277兆円と過去最高を更新。国債の保有残高は3月末時点に比べ30兆円増の229兆円と、決算発表ベースでは初めて200兆円の大台を突破した。10月31日に決定した追加金融緩和で日銀の資産買い入れペースは速まっており、総資産は年度末には300兆円に達する見込みだ。特に長期国債の保有額は今年度末には市中残高の4分の1を日銀が占めることになりそう。市場での日銀の存在感は増すばかりだ。
日銀が公表している6月末時点の資金循環統計でみると、民間の国債保有が最も多いのは保険(約200兆円)。次いで銀行(約130兆円)、海外(約90兆円)などとなっている。日銀の保有額はこうした民間金融機関をしのぐ規模となっている。
日銀は追加金融緩和の中に、年間80兆円ペースでマネタリーベース(資金供給量)を増やす目標を盛り込んだ。主に増やすのは長期国債だ。毎月の発行額とほぼ同じ規模の長期国債を買い入れることで、9月末時点で179兆円の長期国債の保有残高は年度末には200兆円を超える見通し。市場にある長期国債の約4分の1を日銀が保有することになる。さらに買い入れが続けば、来年度後半には日銀の保有シェアは3割を超える計算になる。
巨額の国債を買い入れていることで、日銀が得る利息などの収益は増加。最終的な利益にあたる剰余金は5878億円と前年同期から5割近く増えた。保有する上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(REIT)の評価益も膨らんでいる。現状では量的・質的金融緩和が好決算を演出している形だ。ただ市場では「保有する国債が多すぎて、金利が上昇すれば巨額の含み損で債務超過に陥る可能性がある」(SMBC日興証券の末沢豪謙金融財政アナリスト)との指摘もある。日銀が債券市場、株式市場のプレーヤーとして振る舞っていることが、足元の株・債券相場の安定につながっていることは確かだ。ただ、巨大なバイイングパワーが市場に負荷をかける可能性は否定できない。政府の成長戦略が経済を回復軌道に乗せるのが先か、市場に不測の混乱が生じるか、残された時間は無限ではない。
〔日経QUICKニュース(NQN) 依田翼、鈴木孝太朗〕