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瞬発力と解析力を駆使した活動――Controversial Spark、1stアルバム『Section I』をリリース

Controversial Spark   2014/11/26掲載
 アルバム1曲目「Hello Mutants」の冒頭歌詞“朝眼が覚めたら肩から先がない”というカフカの『変身』のような一節、と、ボーナス・トラックとして13曲目に収録された「First Session」の、何の曲とはなく鳴らされた5人の緊密かつ柔軟なジャム・セッション、あれこそがControversial Sparkという得体の知れないこのバンドを象徴しているだろう。いや、得体は知れないが、ポップであれというところに起点と力点と着地点がしっかり置かれている。だから、不気味で錯綜した瞬間も多いのにやたらと人なつこい、という作品に仕上がった。メンバーは鈴木慶一矢部浩志近藤研二岩崎なおみ、konoreという年齢も性別も超えた5人。全員が曲を書き、全員がコーラスやヴォーカルもとれ、アレンジもでき、そしてもちろんそれぞれに他ワークスも多彩な強者たちによる1stアルバム『Section I』の到着である。
 リーダーはもちろん鈴木慶一だ。だが、彼は新作の録音中、決して出しゃばることなく、全員の意見を自由に曲に反映させることに腐心したのだという。鈴木にとって去年から今年にかけては悲喜こもごもの別れや出会いが交錯したシーズンだっただろう。昨年12月17日にムーンライダーズのドラマー、かしぶち哲郎が死去(そのかしぶちの今年の命日にムーンライダーズは一夜限りのライヴを行なうことが先頃アナウンスされた)。一方で今年の頭にはこのControversial Sparkとしての初CDとなるミニ・アルバムをリリースするなど、新たな船出を伝えてくれた。湿っぽい感情に流されることを嫌い、常に新しいことにトライすることこそが友への何よりの弔い、という気持ちもあったのだろうか。しかし、だからこそ、Controversial Sparkのこの1stアルバム『Section I』は、バンド本来の持つスポンティニアスで柔軟で、たっぷりの風通しが効いた最高のポップ・ミュージック集になったのかもしれない。
 以下 1stアルバムを完成した彼らの、メンバー5名揃っての珍しいインタビューをお届けする。次のアルバムに向けてのアイデアが取材終盤には早くも飛び出していたが、それは次のお楽しみ、ということにさせていただこう。
――思っていた以上にポップに振り切った曲が揃いましたね。
鈴木慶一(以下 鈴木) 「自然とそうなったね。決めてたわけじゃないんだけど。最初から、みんなで曲を持ち寄るというやり方は、去年最初にEPを作った時と同じ。このバンドがスタートして1年半ほどの間、ライヴをやるたびに新曲を披露しようってことは何となく決めていたんだけど、ちゃんとアルバムに向けて集中しようって今年の春くらいから作業をちゃんと始めた感じかな」
――曲を持ち寄る際、何かこのバンドのイメージを意識したり、テーマのようなものが設定されていたりしましか?
konore 「いや、特に何もなかったんです(笑)。〈Moonlight N.M.D.〉はもともと自分のソロ・ユニット用に作っていたんですけど、あの曲って割と胡散臭い曲だから、コンスパに合うんじゃないかなっていうか(笑)」
岩崎なおみ(以下 岩崎) 「私は、去年のEPとかでは曲を一切書いていないんです。あまり曲を作ってこなかったっていうのもあるんですけど、でも、このバンドをやるにあたって、かなり前に作った1曲だけ、慶一さんに聴いてもらった曲があって。それが今回のアルバムに入っている〈Sweet Home〉なんです。今回は“一人2、3曲は書くように”とボス(鈴木)からの指令が出たもんで(笑)」
鈴木 「なおみち(岩崎の愛称)の曲は全部で2曲。本当はもう1曲用意してくれたんだけど、今回設定したなおみちのキャラクターからは外れていた明るい曲だったから見送ったんだ」
矢部浩志(以下 矢部) 「なおみちは“性格は明るいけど暗い曲を書く”というキャラクターで今回録音したからね(笑)。僕の曲の場合は、例えば〈Ex-Car〉とかはカーネーションをやめてから作った曲。でも、konoreちゃんの声が絶対合う!って確信があったんですよ」
近藤研二(以下 近藤) 「女性2人は独自の美学を貫く傾向があったように思いますね。もちろん若さもあると思いますが、それが曲にも出てるんじゃないかな。矢部さんの曲にはキーボードが似合いそうなものもあったんですけど、敢えてラフなギター・バンドに仕上がってますよね」
鈴木 「そうやってバンドに持ってきた時に印象が変わってフィットしていくのが面白いよね。僕の曲は全部新曲。でも、全員の曲が集まった時に、不思議とこのバンドに合っているってことに気づいたんだ」
近藤 「慶一さん、まだ女性2名が入ることも決まってなかった頃、“ピンク・フロイドの1stみたいな感じ”にしたいって言ってませんでした(笑)?」
鈴木 「(笑)でも、実際、作業が始まると、変わってきちゃった部分もあった(笑)」
近藤 「そうなんです。だから、今作の自分の曲に関してはピアノ・デモ程度にしか作りこまず、なるべくメンバーの中から出てくるアイデアを聞いてみたいなと思いました。基本的にはメンバー5人で人力で奏でられる範囲内でという制約は、暗黙としてあったと思います」
鈴木 「今回は敢えて“良けりゃいいや”みたいな気持ちで作るようにしたってのはあるね。で、そうやって曲をみんなに持ってきてもらったら、これが自然とポップな曲が揃って、全体的にもそういう仕上がりになったんだ。でも、最初からそういう方向を決めていたわけじゃなくて、自然とそっちにシフトしていったわけだから。もちろん、アルバムに向けて色々なアイデアを考えなかったわけじゃないんだ。例えば、全曲私が曲を書くというアイデア、それを全曲konoreが歌うというアイデア……一瞬だったけどいろいろ考えた。でも、現状で最良の方法、最高の方向をとれたと思ってる。録音してて、あ、いい曲だなって思えればそれでいいっていう結論だよね。すごくシンプルで、でも最高の結論。まあ、でも、こういうことができるのも、なんといっても5世代に渡るメンバー構成だから(笑)かもしれない」
――慶一さんの曲の最初のデモはどういう感じだったのですか?
近藤 「慶一さんのギターはエフェクティヴで時にギターとは思えない音がしているんですよ。で、次々にリフを思いついてはヴォイスレコーダーにメモして、曲の端々にあしらっていました。さすがだなあと思いましたね」
岩崎 「そうなんですよ。慶一さんの曲ってデモで聴いた時に“これ、どうなるの?”ってまったく見当がつかないことがすごく多くて」
矢部 「色んな音が同時に入っているから、どれがリフで、どれが旋律で、みたいなのが全くわからない(笑)」
岩崎 「それが、レコーディングの過程で色んなアイデアをもとにどんどん変わっていく。今までいかに自分の考え方が凝り固まっていたかってことに気づかされましたね。例えば、〈Section 1〉という曲(曲は鈴木、歌詞は鈴木・岩崎の共作)は、ウッド・ベースだと思っていた音が実はアフリカのパーカッションの音だったりしたんです」
鈴木 「意外とみんな頭カタいんだよ(笑)」
近藤 「ギター3本の役割も具体的にわざわざミーティングしたことはないですもんね。例えば、〈くりかえす〉のギター・リフは僕が弾いていますが、作者のなおみちには録音の時に“もっと歌いこまない感じで”って言われたり、ミックス時に“音がリッチすぎるのでもっと歪ませてみていいですか?”なんて言われました(笑)。ペイヴメントみたいなイメージで弾いたつもりだったんですけど、世代の違いかなあ、トシとったのかなあ、って思いましたよ(笑)」
鈴木 「ともすれば“経験”は意味がな。今、僕らはこのバンドでやろうとしていることは経験に基づいたことじゃないんだよ」
矢部 「僕もそうだけど、その場のアドリブでやっちゃおう、みたいな感じでしたね」
鈴木 「個々の曲に対して作った人は愛情がどうしてもある。でも、愛情だけに頼ってしまうとその人個人のソロになってしまうんだ。そこで必要になってくるのは柔軟でいながらも、それぞれ何ができるかを模索する意識。例えば、私はエスニック担当、なおみちはスローなオルタナ担当、konoreは割と若いコらしいけどヘンなことを担当する、矢部くんは16ビートが入っていてメロディがすげえいいみたいなのが得意で、近藤くんはアコースティックなものができる、というようなね。こういう偶発的かつ瞬発力のあるやり方がバンドを作っていくんだな。しかも、それをちゃんとメールとかで言語化して他のメンバーに伝えることができるかどうか。今回のアルバムではそこが試されたというのもあるね。プリ・プロダクションはロジカル、レコーディングはフィジカル、ポスト・プロダクションはロジカル……という具合。それって私が今年考えついたサッカーの取り組み方と同じなんだよ(笑)。ボールが来てないところではロジカル、来たらフィジカルに動く、で、またロジカルっていう」
――脳も体もどちらも活性化させないとできない作業だと。
鈴木 「その通りだよ。アニマル・コレクティヴとかアーケイド・ファイアとかってそういうことをやってるでしょ? 瞬発力と解析力を駆使した活動ね。モノを作る時に一定の期間集中すると、どうしてもいろいろなことが偶然につながることがある。例えば、僕が歌詞を書くのを少し遅らせて、konoreの歌詞を見たりすると、“このジャンプ力は一体なんなんだろう?”ってすごく刺激を受けるわけだ。僕もジャンプ力あると思っていたけど、これはすごいなって感じで影響を受ける。そうやって方向性が一つになっていくと、脳も体もどんどん活性化していくんだよ」
――結果として、とても強度のあるポップ・ミュージックになりましたよね。いわゆるJポップの土俵の上で鳴らされても全く足下が揺らがない大衆性のあるポップスに。
鈴木 「そこは意識していたかもね。ライヴでやって“カッコいい!”って声がかかったらしめたもんっていう、そのくらいのわかりやすさは絶対に必要。実際、フェスとかに出た時にそういう声がかかったからね。普通にそうやって聴いてもらえているんだってことが嬉しかったね。これからどうなっていくのか誰にもまだわかってないわけだけど、そこだけは変わらないでいたいね。そういう意味で、アルバムの最後に(2013年6月11日におこなった)バンド最初のセッション音源をそのまま丸ごと入れたのは意味があると思うんだよ。ここからスタートしたってことを聴いている人も一緒に確認できるわけだし、このバンドのスタートが運命だってことにも気づいてもらえると思うしね」
取材・文 / 岡村詩野(2014年8月)
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Controversial Spark
1stアルバム発売記念ライヴ
Section I / Hello TOKYO

ja-jp.facebook.com/ControversialSpark

[出演]
Controversial Spark(鈴木慶一 / 近藤研二 / 矢部浩志 / 岩崎なおみ / konore) / 豊田道倫 / CHECK YOUR MOM(倉内 太 + 柴田聡子) / フロリダ(テンテンコ + 滝沢朋恵)

 
2014年11月29日(土)
東京 渋谷 LIVE GATE TOKYO
〒150–0011 東京都渋谷区東3-14-19 オークヒルズB1F
03-3400-9001

開場 18:00 / 開演 18:30
前売 4,000円 / 当日 4,500円(税込 / 別途ドリンク代500円)
LIVE GATE 店頭 / ローソン(L: 78608)

 

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