"期間限定の「タル鶏天ぶっかけうどん」がヒットした"

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 讃岐うどんチェーン「丸亀製麺」を運営するトリドールが、出店スピードを急速に緩めている。かつて「1000店体制」を目指してどんどん増やしていたが、ここにきてブレーキを踏み“減速”させている。出店を抑制して、何に力を入れているのか。

【グラフ:丸亀製麺国内店舗数推移、他の画像】

 丸亀製麺は2000年11月に、1号店「加古川店」をオープン。その後、外食市場の縮小が続く中でも店舗数を増やし続け、11年目には500店を達成した。国内外食チェーンとしては最速のスピードで規模を拡大させてきたが、既存店の売り上げが悪化。平成26年3月期決算で、既存店の売り上げが前年比94.3%に落ち込み、出店計画の見直しを迫られていたのだ。

 「ショッピングモールのフードコートなどで『丸亀製麺』の看板をよく目にするけど、経営は大変なのね」と思われたかもしれないが、実はそれほど悪くはない。直近の数字(第2四半期)をみると、同社の売上高は前年同期比109.0%の432億円、経常利益は同148.3%の38億円。増収増益の要因として「新商品の『肉盛りうどん』や『タル鶏天ぶっかけうどん』がヒットした。また出店を抑制したことで、開店時経費が減少した」(同社)という。

 かつて「国内1000店体制」を目指し、年間100店舗ペースで出店。実に、3日に1店舗の攻勢をかけてきたが、4〜9月の出店数(グループの国内事業)をみると、わずか13店舗。年間でも21店舗の計画にとどまり、かつての“飛ぶ鳥を落とす勢い”は見受けられない。こうした状況の中で、同社はどのような取り組みをしているのだろうか。11月25日に開かれた記者説明会の席で、明らかになったことを一問一答で紹介する。

●丸亀製麺の出店数が急速に減少

――丸亀製麺の出店数が急速に減少しています。2014年度は国内で88店舗出店しましたが、この4〜9月は10店舗(グループは13店舗)にとどまりました。

トリドール(以下、トリ): 既存店の売り上げが苦戦しているのですが、その要因のひとつに「カニバリ(共食い現象)」がある。不採算店舗については閉店したほか、業態転換したところもある。

――どのような業態に変更されたのですか?

トリ: 埼玉県ふじみ野市の近隣に、丸亀製麺が4店舗あった。ここの既存店の売り上げが減少していたので、2013年12月にふじみの店を「コナズ珈琲」にした。コナズ珈琲はパンケーキなどを扱うカフェだが、この業態に転換することで2つの効果があった。

 1つは「トランスファーによる効果」。丸亀製麺を1つ閉鎖することで、そこの売り上げのうち約2割が残りの3店舗に移転した。もう1つは「売上増の効果」。カフェ業態への転換によって、丸亀製麺のときと比べて売り上げが約2.4倍に。現状、月の売り上げは1500万〜1600万円で推移しているが、8月には1800万円を超えるなど好調だ。

――新業態はカフェ。丸亀製麺とは全く違う業態なので、効率が悪いのではないでしょうか?

トリ: ご指摘のとおり、仕入れコストを引き下げることはできないかもしれない。うどん店とカフェは違うモノだが、全く違うとは言い切れない。どういうことかというと、丸亀製麺の特徴は、店内で製麺したできたてのうどんを提供していること。コナズ珈琲の特徴は、店内でつくったできたてのパンケーキを提供していること。弊社の強みは、“できたて”という付加化価値を提供できることだと思っている。また、丸亀製麺で培ったノウハウ……例えば「粉」についてはコナズ珈琲でも生かすことができている。

――新業態を増やす予定はありますか?

トリ: ショッピングセンターの中で展開している「ラナイカフェ」を含めて、カフェ業態は6店舗ある。ラナイカフェについては、商業施設からの引き合いがあるので、今後店舗数が増えるかもしれない。ただ、まだ実験段階の部分も残っているので、収益性を確保しながらチャンスがあれば店舗数を増やしていきたい。

――丸亀製麺のカニバリは今後も続くのでしょうか?

トリ: 現在赤字の店舗は20〜30ほどある。その店については閉店または業態変更の対象になるだろう。こうした取り組みによって、カニバリは解消されるのではないだろうか。

●海外事業は積極的に展開

――国内と違って、海外は積極的に出店されていますね。2014年3月末には61店舗でしたが、9月末には81店舗に増えています。

トリ: 海外事業については、8月に単月黒字化を達成した。2011年にハワイに海外1号店を出店したが、想定以上に早く単独黒字化を達成することができた。一方で、不採算店舗については積極的に閉店して、経営資源を集中させ収益の改善を図っている。

――今後の海外事業について聞かせてください。

トリ: アジアを中心に丸亀製麺を出店していく予定だ。それ以外の国・地域については、丸亀製麺のほかに、現地の人たちに受け入れられやすい新業態を検討していく。例えば、アフリカのケニアでは「teriyaki JAPAN(テリヤキ・ジャパン)」を年明けにオープンする予定だ。ケニアの首都ナイロビは非常に高い経済成長や人口増加が見込まれるので、2014年4月に現地法人「TORIDOLL KENYA」を設立した。テリヤキチキンを中心にご飯や麺、サラダをワンプレートで提供することで、これまでにないテリヤキチキンの食べ方を提案したい。

――ケニアのほかに、新しい国に進出する予定はありますか?

トリ: 具体的なことは言えないが、進出する予定はある。今後も経営資源を集中させ、グローバルに展開していく予定だ。

[土肥義則,Business Media 誠]