気鋭のIT経営者3名―Klab・真田哲弥氏、クラウドワークス・吉田浩一郎氏、WIL伊佐山元氏―が一同に会し、IVS 2014 SpringのLaunch Padの講評を行ったセッション。気鋭のIT経営者である両名が若手起業家に向けエールを送りました。(IVS 2014 Springより)
【前編】「レベルが低い」 KLabの真田社長、Launch Padのトップ5企業をぶった斬り
【スピーカー】
クラウドワークス 代表取締役社長 兼 CEO 吉田浩一郎 氏
KLab株式会社 代表取締役社長 真田哲弥 氏
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Launch Padの講評と日本のスタートアップの現状
参入障壁の低い市場での戦い方
伊佐山元氏(以下、伊佐山):2位のスペースマーケットはいかがでしたか。なかなかこれも今流行りのジャンルではありますけれども、真田さん。
真田哲弥氏(以下、真田):僕も実は、なんで2位になったのかがよくわから……(笑)。僕、これと同じビジネスを今から15年ぐらい前に、こういうのをやったらいいなと自分で思ったこともあって。
過去いろんな学生のこういうピッチ大会の審査員やったりとかいっぱいやってるんですけど、同じビジネスモデルを過去4回も見てますね。多分、世界中でこれと同じことを考えた人は1万人以上いると思うんですよ。そうなったときに差別化要素がしっかりあって、一定以上まで市場シェアを取ってしまう。
こういうマーケットプレイス型って市場シェアを取ったもん勝ちで、ある程度まで市場シェアを取ったら後からはひっくり返せなくなる。まだ現時点では、今日、出られた彼が市場シェアを取れるかどうかがわからないじゃないですか。後から出てきた人が同じことをやって、彼よりもうまくやり切れば一気にひっくり返されますよね。
そういう意味でひと工夫、ひと捻りないしは参入障壁をどうつくるか。競合で同じようなことをやってきたところとどう違うか。
あるいは先行、一気にシェアを取ってしまうために何をするかっていうそのあたりがあると、僕はこのビジネスはいいと思うんですけど、なんかその辺が感じられなかったところが、そこまでだけだったら誰だって考えつくよというポイントですかね(笑)。
吉田浩一郎氏(以下、吉田):私はたまたま、もう15年来ぐらいの友人ということもあって、彼がNTT東日本のサラリーマンの頃から、まさか彼が起業してしかもLaunch Padに立って、しかも今日2位を取るような。もともとNTTのサラリーマンですからね、彼。そこからしたらよくここまで来たなという感じは。
需要を掘り起こすことこそがビジネス
真田:そこは素晴らしいですね(笑)。そこは素晴らしい。偉い。
吉田:彼はちょっとそのストーリーを話してなくて、すみません、身内っぽいんですが、ちょっとフォローしとくと、フォトクリエイトで最後にちょっと話した4万件ぐらいのイベントをやってる中で、イベントには常にスペースを予約する、探すっていうことが必要だと明確にわかってたんですね。
しかも4万件のイベントを自分で全部関わって、社長室でやってたので、その経験が生き、それは強みになりますと。そういうストーリーが、最後にちょこっと出ただけ。
我々もそうなんですけど、ああいうマッチングプラットフォームってデマンドサイドとサプライサイドがあって、今日の話って結構サプライサイドが多かったじゃないですか、こういうスペースがありますよっていう。
でも、結局ビジネスってデマンドサイドで、どうやって需要が掘り起こせるかということだと思ってるんですよね。だからうちも、やっぱり21世紀の新しいワークスタイルとかってサプライサイドの話をしてるんですけど。
結局はどれだけ外注してくれるかという、企業にフォーカスしないといけないんで、そっちの話が確かに少し弱かったというか。でも、私の中でちょっと悔しかったのは、彼が個人的にやっぱりこれをどうしてもやりたいんだっていうストーリーがちゃんとあったのに、その……。
伊佐山:そこがあまり見えなかった。
既存のビジネスをどう再構築するか
吉田:その強さがちょっと弱かったなっていうのが、惜しいなっていう。そういった意味で1位との差。1位はやっぱり完全に。
伊佐山:思いが。そうですね。思いというかすごいありますよね。
吉田:明確ですよね。
伊佐山:明確な差がありますよね。確かにスペース、これも結構北米で1~2年前すごく流行っていて多いんですよ。Airbnbはたまたま、日本のメディアがいっぱい取り上げるんですごい有名ですけど、イベントに特化したレンタルスペースとか高級別荘に限定したやつとか、いろいろいっぱいあるんですよ、実は。
真田:空いている何々を、今使いたい人に貸すっていうものって、いっぱいありますよね。
伊佐山:本当にベタにイベントがあるときに1回、一時的に引っ越して。1番いい例だとゴルフの大会が、マスターズがあるとあの辺の人はみんな家を1泊20万ぐらいで貸せるから1年分稼げるんですよ、1週間で。
みんなわざわざ他のところに引っ越すわけですよ、その瞬間だけ。そうすると1年分の給与が確保できちゃう。そういうビジネスはあるわけですよ、昔から結構。それを現代ふうにアレンジするとああいう場所を貸すっていう話なんで。
だから着目点は真新しいように見えて結構昔からある。ひとつはこれをどうやって本当に需要をつくっていくのか。ただ単純に空いてるスペース集めたってそこに人がばんばん来るかっていうとそうじゃない。多分彼は彼なりに前職でもそういうニーズがあるんだということがすごく見えてたんだろうなというふうには感じました。
吉田:ちょっとプレゼンが惜しかったなっていう。
おっぱい吸いたいから会社を作った!?
伊佐山: 何でそれを始めたんだっけっていうパッションが、ストーリーが欠けてたりするから、見てて「ふーん」っていうか、「で、何?」みたいな雰囲気になっちゃったのかな。
意外とテクニックに走り過ぎたパターン。結構聞いてて気持ちいいんだけど、逆に面白くないっていう結果だったような気がしますね。
吉田:私最近ちょっと感銘を受けたのが、ピジョンっていう哺乳瓶メーカーあるじゃないですか。あそこの社長さんって、ちょっと真田さんとか盛り上がるかもしれないですけど、実はあの哺乳瓶をつくるために1,000人ぐらいおっぱいを吸ってるんですよ(笑)。これ、すごくないですか。
真田:これすごいですね。
吉田:これ、俺、嘘だろうと思ったんですけど、調べたらちゃんと書いてあるんですよ。
真田:でも、逆だったらどうします? 本当はおっぱい吸いたいからその会社をつくった。実は、本当はそうだったり。
吉田:そうなんですよ。社長はおっぱい大好きだった(笑)。
真田:それ面白過ぎますね。
吉田:でも、それぐらい固有のストーリーは……。
真田:おっぱいが吸いたいけど、正々堂々とおっぱいが吸える方法はないかって考えたあげく、そのビジネスをやり始めたとしたら、それはそれですごいですよね。
伊佐山:すごいですね。
吉田:でも、それはもう固有の、圧倒的なストーリーでそれを元につくってる。
真田:次、なんか正々堂々とお尻が触れるビジネスとかね、やり出したらもっと感銘を受けますね(笑)。
吉田:しかもノートラブルだったらしいですよね。ちゃんと事前交渉してこういう趣旨のもとにこういうことをチェックしたいんだみたいな。
伊佐山:新しいビジネスモデルですね。すごいな。
真田:すごいな、それ。
ハードウェアビジネスの強み
伊佐山:この流れで1位に行くのもちょっと杉江さんに怒られそうなんですけど、WHILLの杉江君のプレゼン、どう思われましたでしょうか。真田さん。
真田:素晴らしいですね。プレゼンもよかったですし、事業としてもやっぱり素晴らしいですね。まねができないじゃないですか。よく考えてつくってありますね。行動半径、回転半径を小さくするための前輪の動き方とか。
ハードウェアって特許を取れるじゃないですか。そこがサービス業とかインターネットのビジネスと違うところで、ああいう細かいところのつくりをしっかりつくって、細かいところでしっかり特許を取ったらなかなか同じものはつくれないですし、これからの高齢化社会っていうのは日本だけじゃなくてアメリカでも中国でも、先進国全ての問題で、社会的なニーズもしっかりあるし、着目点も仕上がりの細部も全てにおいてよかったですね。
伊佐山:吉田さんは。
吉田:非常に圧倒的っていうか、さっきの話じゃないですけど、本当に熱意を持った固有のストーリーが感じられて、それがしかも形になっているんで圧倒的だなと。ただ一方でちょっと思ったのは、別の角度から話すとどのタイミングでLaunch Padに出るのが最適なのかなみたいな。
要はもうあれだけのプロダクトが出来て、いわばシリーズAぐらいはもう終わってるというか、シリーズBぐらいまで行ってるんですかね。
伊佐山:いや、まだAですよ。
吉田:Aですか。そのタイミング……もうあれはある意味、結構形になっちゃってるんで、ほかのプレゼンはやっぱり形になってないじゃないですか。まだかなり入口というか。だから、どのタイミングで出るのがいいのかなみたいなことを考えて見てましたけどね。もう圧倒的だと思いますね。
真田:圧倒的でしたね。そういう意味ではかなりレイターステージになってるっていう点でずるいっちゃずるいっていうね。
吉田:そうそう。ちょっとずるいかなっていうのもちょっと感じましたけど。
VCはコスパのいいビジネスに慣れすぎている
伊佐山:他方、逆にああいうハードウェアで、まさにああいういいニッチを見つけてあれだけのものをつくるとすごく面白い。こういうので優勝するぐらい面白いんですが、VCってああいうのに意外とお金を出さないんですよね。
なぜかというと、みんなゲームとかネットサービスみたいに原価がないようなビジネスで、要するに小さいお金で大当たりするというのに、この10年間さんざん慣れちゃったんで。ハードウェアってやっぱり原価があるから利益率が限界あるじゃないですか。
そうすると費用対効果、純粋な投資だけで見るとハードウェアってリスクを取るわりには当たっても見えちゃうよねっていう意味で、いわゆる……。
真田:ただ最近ファブレスが中心になってきて、昔ほど自社で工場を建てて、土地取得して工場建てて製造機械入れてっていう時代でもないので。
伊佐山:コストは下がってるんですよ、確実に。今は3Dプリンターもあれば、いわゆるDIYできるような設備も出てるし。ただやっぱりビジネスとしてスケールしても利益率が低い。だからVCとしては同じ時間を使うんだったらやっぱりゲーム会社のほうがいいって。
これは自分もそういう業界に10年以上いて感じる問題なんですけど、本当にそれだけなのか。リスクっていろんなところに取らせるべきで、ものづくりの世界、こういうベンチャーにお金が流れないとしたら、実際何が日本の強みになるのか。
ああいう、ものをつくってたエンジニアってどこに行けばいいのかっていうのは、結構難しい問題で、せっかく出てきてもやはりこれが、ちゃんといろんな人のお金を受けて、会社が大きくなることに繋がればいいんですけど、意外とそこにお金出すっていう立場になると、利益出してから来てくださいという。
でも、ああいう会社が利益出すようになるって当然大変。量産しないとコスト下がらないし、ものすごく難しいオペレーションをマネージしなきゃいけないんで。
後に引けないビジネスモデル
真田:そうですね。やっぱりメーカー業ってこの後が難しいですよね。資金繰りの問題だったり、経営力がしっかりないと、経営が難しいですよね。生産管理の問題、歩止まりをどう下げるかとか。
吉田:そういう意味ではやっぱりLaunch Padに出る意味があるわけですね。
伊佐山:ああいう会社は僕からするとどんどん出て、とにかく盛り上げてお金が、資金繰りが止まらないようにしてかないと、あっという間にお金って無くなっちゃうし、ハードの会社にするとお金って絶対必要。削れるところの限界があるっていうので。
吉田:そういうストーリーがあったんですね。結構ほかのコンテストで見たことあったんで、このタイミングで何だろうと思ったら、そういう背景があるんだね。
伊佐山:僕からしたら、彼なんかはもうミッドだろうとアーリーだろうとレイターだろうと出るだけ出てたほうがいいんですよ。出し惜しみしてたらしょうがなくて、とにかくいろんな人に面白いと思ってもらって、ファンを増やすということをやらない限りはネットベンチャーのように、「ちょっと儲からないからいったんリストラして1人でやります」ということができない業態だから。
あれはすごい、そういう意味ではプレッシャーの大きなベンチャーのひとつのあり方だと思いますけど、でも、そういうのにチャレンジする人がIVSに出てくるっていうのはすごくいいトレンドなのかなと思うんですけど。
ちょっと残り時間短いんで、ぜひ最後、皆様から。このLaunch Padに出たい、出たいということで、毎回すごい応募があるというふうに聞いてるんですけれども、これから応募したいと思っているベンチャーの経営者に、もしアドバイスをひとつ挙げるとすればいただきたいんですけれども、吉田さん。
イメージし続け、マグマをためる
吉田:実は私自身、NILSという、このIVSの前身から参加していて、その当時はドリコムの役員でした。そこからここに至るまでもう10年弱あると思うんですけど、その間、すごくいつもモヤモヤしてストレスを抱えて、なんかいつかはあそこに立ちたいとか、ああいう人たちになりたいっていうイメージをすごくためてたんですよね。
自分がやってたことっていうのは受託で、ウェブ制作とかウェブ開発とかアプリ作成とかで、なかなかそういう芽が出なかったという中で、私自身はクラウドソーシングを見つけたときに、これだ! と思った。
今までの自分のストーリーとしては、自分が下積み時代にやってきた受託のものがひとつになってLaunch Padに立って絶対に優勝するっていう感じで、もう1カ月前からずーっと練習を続けてその場に立った。
そこで優勝させてもらって、そこから3億円の調達、11億円の調達という形で道が開けてきた。私自身は、20代もインターネット業界にいなかったですし、IT業界にいないですし、そういう中からでもLaunch Padは道が開けるチャンスというか。
なのでぜひ手を抜かずマグマをためながら絶対にやってやる! みたいな感じでチャレンジし、ぜひ次のスタートアップを、Launch Padを通して生み出していければなと思っています。
伊佐山:ありがとうございます。
ぼろかすに言われても落ち込まない、鈍感力を持て
伊佐山:真田さん、お願いします。
真田:僕も実は過去3回出てまして、いまだに審査員やってるよりも出る側であり続けたいなと思ってます。永遠のベンチャーでありたいなと思っているんで。ぜひ、これ出てみることに価値がありますから、だめもとで出て、予選通過するとプレゼンの勉強を練習すごいやるでしょうし、いろんな人からいろんなフィードバックをもらえる。
僕、辛口でぼろかす言いましたけども、それが本人の耳に入って、「こう言われてる。じゃあ、こうしたほうがいいかな」という。ぜひチャレンジしてほしいですね。そのフィードバックを元にどんどん改良してもっとよくなればいいと思います。ぜひ頑張ってほしいと思います。
伊佐山:私もいろんなベンチャーに会う立場なんであれですけど、とにかくトライすること。やっぱり日本のベンチャーって結構考えちゃって出るのを躊躇してるんですよね。トライして大体失敗するわけですよ、1回目、2回目は。
だけど、そこから学べることってすごいあると思ってて、そこでキツいこと言われてしゅんとしてるようじゃまだ資格はない。言われてなにくそ! っていってカムバックして、「お前の言ったこと間違ってたぞ」っていうぐらいの図太さというか、鈍感力を持つ人がもっと出てほしいなというのはすごく感じるんで。
やっぱりこういう場をどんどん活用して、もっともっとベンチャートライする人が増えたらいいな、というふうには考えております。ありがとうございました。
【主催】インフィニティ・ベンチャーズLLP
インフィニティ・ベンチャーズは日本と中国のインターネット企業に投資を行うグローバルなベンチャーキャピタルです。グローバルに投資を行うe.venturesグループと提携し、現在約100億円規模の投資ファンドを運営し、約40社の投資を行っています。投資先はfreee、スマートエデュケーション、グルーポン・ジャパンなどがあります。
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インフィニティ・ベンチャーズ・サミットはインターネット業界の経営者・幹部同士のコミュニティを形成する目的で2004年11月からスタートし、現在は最大級のカンファレンスになりました。2006年11月から新サービスの発表場としてスタートした「Launch Pad」は、現在スタートアップの登竜門となるピッチ・イベントになっています。さらに2010年からは主に大学生・大学院生を対象とした起業家の啓蒙活動を行うための「ワークショップ」をスタートしました。
インフィニティ・ベンチャーズは「お金(投資)」「コミュニティ形成」「起業家の育成・啓蒙」を提供する真のベンチャー・プラットフォームを目指しています。
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