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「引きこもり」するオトナたち

成績優秀なのに仕事ができない
“大人の発達障害”急増の真実

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第11回】

 35年以上にわたって、発達障害を調査研究している星野教授が最近、精神科や心療内科クリニックの外来を受診した80人の大人の発達障害者を調べたところ、約86%にも上る69人に、何らかの合併症が認められたという。とくに、うつ病を併発している人が最も多く、不安障害やパーソナリティ障害、依存症などの複数の合併症を示す人もいた。さらに、引きこもりなどの社会適応が困難な要因の中に「発達障害が隠されているのではないか」と、星野教授は考える。

 「発達障害の症状は、ソワソワと落ち着きがなくてキレやすい『ジャイアン型』(多動・衝動性優勢型)ばかり目立ちます。しかし、一見、落ち着いていても、気が散りやすく、仕事や会議、読書中でも“心ここにあらず”で、相手の話をきちんと聞けない『のび太型』(不注意・注意散漫型)が、見過ごされる傾向にあります。この混合型も少なくありません。モンスターペアレントや、虐待の連鎖も、発達障害が要因になっているのです」(星野教授)

“怠け者”“自分勝手”なのは
心ではなく「脳」の問題

 こうした発達障害が、一般に注目されるようになったのは、ここ最近のことだ。

 2005年4月、発達障害者の自立と社会参加を目指す「発達障害者支援法」が施行。07年4月には、学校教育法に「特別支援教育」が盛り込まれ、大学でも発達障害のある大学生への支援を強化する動きが出ている。

 星野教授は、「職場などにも、想像以上に発達障害者が多いことがわかってきたからではないか。しかも、大人になってから引きこもるような、うつ病や依存症などの2次障害につながる要因であることがわかってきたことも大きい」と指摘する。

 発達障害は、とてもわかりにくく、見えにくい障害。だから、当事者は、怠け者とか変わり者、自分勝手でわがままな人間と思われることが多い。このため、周囲の理解を得られず、ガンバリが足りない、親のしつけが悪い、学校の教育が悪いなどと責任追及されてきたという。

 このように、発達障害が誤解を招きやすいのも「原因が、脳の機能障害にあるから」だと、星野教授はみている。

 「発達障害は、脳の中枢神経系の発育・発達が、何らかの理由で、生まれつき、または乳幼児期に損なわれ、言葉、社会性、協調運動、基本的な生活習慣、感情や情緒のコントロールが、アンバランスになるために引き起こされると考えられています。本質的な原因は脳であり、心の問題ではないのです」

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池上正樹 [ジャーナリスト]

1962年生まれ。大学卒業後、通信社の勤務を経て、フリーに。雑誌やネットメディアなどで、主に「心」や「街」をテーマに執筆。1997年から日本の「ひきこもり」現象を追いかけ始める。東日本大震災後は、被災地に入り、震災と「ひきこもり」の関係を調査。著書は、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)、『ドキュメント ひきこもり~「長期化」と「高年齢化」の実態~』(宝島社新書)、『ふたたび、ここから~東日本大震災、石巻の人たちの50日間~』(ポプラ社)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)などがある。最新刊は『石巻市立大川小学校「事故検証委員会」を検証する』(ポプラ社)、最新刊『大人のひきこもり~本当は「外に出る理由」を探している人たち~』(講談社現代新書)
。池上正樹 個人コラム『僕の細道』はこちら

 


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

「「引きこもり」するオトナたち」

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