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「引きこもり」するオトナたち

成績優秀なのに仕事ができない
“大人の発達障害”急増の真実

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第11回】

 『発達障害に気づかない大人たち』(祥伝社新書)の著者である福島学院大学の星野仁彦教授(児童精神医学)は、「トップクラスの成績のいい人が多いので、人付き合いが苦手でも、大学などの学校を卒業するまで、発達障害と気づかずに見過ごされてきた」と、大人にも数多い理由を説明する。

 「会社に入ってから困るのは、会話や対人スキルが上手くいかなくなること。一方的に自分の気持ちをまくし立てるんだけど、人の話を聞かないんです。さらに問題なのは、朝の起床を始め、夜の睡眠、お金、時間、食事、整理整頓、提出物などの管理ができない。しかも、感情のコントロールができないため、些細なことでもカーッとなってしまい、仕事上では致命的になりかねないのです」

成績優秀、突出する才能があっても
人間としてのバランスが欠けている

 一方で、発達障害の症状は、何かにのめり込みやすいのも特徴の1つ。酒やタバコ、ギャンブル、買い物、セックスなどの依存症に陥る傾向が強い。だから、自宅に引きこもってしまうと、ゲームやインターネット、携帯電話などにのめり込んでしまい、社会生活が送れなくってしまうのだ。

 最初は「子供の落ち着きがない」などと、子供の症状のことで相談に来る両親が、実は、自分のミスを棚に上げて、部下や妻(夫)を怒鳴る、体罰を加える、人の話を聞かないといった問題を抱えている――星野教授が勤務する福島県郡山市の「星ヶ丘病院」などの外来には、そんな大人の発達障害者が全国から訪れるという。

 「英語、数学、国語がトップクラスの成績だった人は、多少、自己中心的でわがままでも、親や学校の先生たちは何も言いません。ある才能については突出していながら他はダメといったように、バランスが取れていない。職業的には、ITやシステム関係、教師、学者、医師、マスコミ、芸術家などの専門職、技術職に発達障害の人が多い傾向にあります。」

うつ、引きこもりの背景には
発達障害が隠されている?

 かくいう星野教授自身も、かつて発達障害に悩んだ経験者だった。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

1962年生まれ。大学卒業後、通信社の勤務を経て、フリーに。雑誌やネットメディアなどで、主に「心」や「街」をテーマに執筆。1997年から日本の「ひきこもり」現象を追いかけ始める。東日本大震災後は、被災地に入り、震災と「ひきこもり」の関係を調査。著書は、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)、『ドキュメント ひきこもり~「長期化」と「高年齢化」の実態~』(宝島社新書)、『ふたたび、ここから~東日本大震災、石巻の人たちの50日間~』(ポプラ社)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)などがある。最新刊は『石巻市立大川小学校「事故検証委員会」を検証する』(ポプラ社)、最新刊『大人のひきこもり~本当は「外に出る理由」を探している人たち~』(講談社現代新書)
。池上正樹 個人コラム『僕の細道』はこちら

 


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

「「引きこもり」するオトナたち」

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