オイル・グリースの基礎知識
オイル・グリースの組成
※グリースとは、オイルに増ちょう剤を分散させ半固体状にした潤滑剤です。
代表的な基油の種類と特徴
基油は、鉱油と合成油に大別されます。鉱油では対応できない高温、低温など過酷な環境下では、様々な合成油が使用されています。
オイル、グリースの耐熱性、低温性、対ゴム・樹脂性などの特性は、基油の種類に大きく依存します。
| 鉱 油 | 合成油 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 合成炭化水素油 | エステル油 | ポリグリコール油 | シリコーン油 | フッ素油 | ||
| 耐熱性 | △ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ |
| 低温性 | × | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | ○ |
| 潤滑性 | ○ | ○ | ◎ | ○ | × | ○ |
| 対ゴム性 | △ | ◎ | × | ◎ | ◎ | ◎ |
| 対樹脂性 | △ | ◎ | × | × | ◎ | ◎ |
◎:優れる ○:良好 △:普通 ×:劣る
代表的な増ちょう剤の種類と特徴
増ちょう剤は、石けん系と非石けん系に大別されます。増ちょう剤は、オイルの中に分散し半固体状にする作用を持つ物質であると同時に、グリースの耐熱性、耐水性などの性能を決定するうえで重要な物質です。
| 石けん系 | 非石けん系 | ||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| カルシウム 石けん |
リチウム 石けん |
カルシウム コンプレックス 石けん |
アルミニウム コンプレックス 石けん |
リチウム コンプレックス 石けん |
バリウム コンプレックス 石けん |
ベントナイト | ウレア | PTFE | |
| 耐熱性 | × | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
| 耐水性 | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ◎ | ○ | ◎ | ◎ |
| せん断安定性 | △ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ◎ |
◎:優れる ○:良好 △:普通 ×:劣る
基油の混合性
| 鉱 油 | 合成炭化水素油 | エステル油 | ポリグリコール油 | シリコーン油 | フッ素油 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 鉱 油 | ○ | ○ | ○ | × | × | × |
| 合成炭化水素油 | ○ | ○ | ○ | × | × | × |
| エステル油 | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × |
| ポリグリコール油 | × | × | ○ | ○ | × | × |
| シリコーン油 | × | × | × | × | ○ | × |
| フッ素油 | × | × | × | × | × | ○ |
○:混合可能 ×:混合不可
基油のゴムへの影響
| 鉱 油 | 合成炭化水素油 | エステル油 | ポリグリコール油 | シリコーン油 | フッ素油 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ニトリルゴム (NBR) |
○ | ○ | × | ○ | ○ | ○ |
| 水素化ニトリルゴム (HNBR) |
○ | ○ | × | ○ | ○ | ○ |
| フッ素ゴム (FKM) |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| エチレンプロピレンゴム (EPDM) |
× | × | × | ○ | ○ | ○ |
| アクリルゴム (ACM) |
○ | ○ | △ | △ | ○ | ○ |
| ウレタンゴム (AU) |
○ | △ | △ | △ | ○ | ○ |
| シリコーンゴム (VMQ) |
△ | △ | △ | ○ | × | ○ |
○:耐性があります △:条件により耐性があります ×:耐性がありません
基油の樹脂への影響
| 鉱 油 | 合成炭化水素油 | エステル油 | ポリグリコール油 | シリコーン油 | フッ素油 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ポリアセタール (POM) |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ポリアミド (PA) |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ポリエチレン (PE) |
△ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ポリカーボネート (PC) |
○ | ○ | × | × | ○ | ○ |
| ABS | ○ | ○ | × | × | ○ | ○ |
| 四フッ化エチレン (PTFE) |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
○:耐性があります △:条件により耐性があります ×:耐性がありません
異なる製品の混合は性能低下の要因になりますのでお避けください。
本項に記載されているデータはあくまでも目安となるものです。各製品のご使用にあたっては、適合性を確認した後ご使用ください。
用語説明
動粘度(JIS K2283)とは
オイルをガラス製毛管式粘度計に採取し、規定条件で一定容量のオイルが毛管内を流れる時間を測定し、この流出時間と粘度計定数からオイルの粘度を算出します。動粘度は、オイルの粘性を表す数値で、数値が大きいほど粘性が高いオイルになります。
ちょう度(JIS K2220.7)とは
グリース中に規定円すいを5秒間落下させ、その進入する深さをミリメートルの10倍で表した数値で、グリースの硬さを表します。ちょう度は数値が小さいほど硬いグリースになります。ちょう度を一定の数値で区切ってグレード分けしたものがJISちょう度番号で、こちらは番号が小さいほど軟らかいことを表します。一般にちょう度と言うと混和ちょう度のことで、グリースを規定混和機で25℃に保ってから、60往復混和した直後のちょう度です。
JISちょう度番号(混和ちょう度の範囲によって分類した番号)