『インターステラー』 - 俺たちの地平線(ホライゾン)
インターステラー
INTERSTELLAR
2014(2014)/アメリカ 監督/クリストファー・ノーラン 製作総指揮/キップ・ソーン/他 脚本/クリストファー・ノーラン/ジョナサン・ノーラン 音楽/ハンス・ジマー 出演/マシュー・マコノヒー/アン・ハサウェイ/ジェシカ・チャステイン/エレン・バースティン/マイケル・ケイン/他 声の出演/ビル・アーウィン
必ず、帰ってくる。
それは宇宙を超えた父娘の約束――。
大変楽しかった。
169分という長尺に若干のビビリ、具体的に言うとお尻の心配を隠し切れずにいたのだけれど、もいざ観てみると、理論物理学者キップ・ソーンが監修したとかいう売り文句の数式だとかノーラン一流のインテリゲンチャ趣味こそ私めら人間未満のエテモンキーの鼻につきますものの、お話自体は風癲の寝言というか古典マニヤのレコンキスタ願望と申しますか『SF珍遊記 -マコノヒーとゆかいな仲間たち-』と言上しても差し支えがなかろうものではあるのだが、漫☆画太郎の漫画にいちいち共通点を見出すよりも町山智浩氏が言っていた「『インターステラー』を観る前に『ドニー・ダーコ
とは言い条、「ハードSF」とか「ノーラン版『2001年宇宙の旅
が、何せノーランの仕事なので時間当たりの情報量はガチガチに詰まっている上に当然、矛盾を感じるであろう箇所もあるし正直1回観ただけではその全容を把握する事は難しいだろうと思われる。斯く言う私も半分もこの映画を理解出来ていないだろうと思うのだが、この『インターステラー』タイムライン解説図(ネタバレ注意)を見て一層頭がこんがらかった。にも関わらず、まだ観ていない人に観てもらいたい一心でこうしてキーボードをカタカタと叩いているのであるが、ははは、まさにさらば地球よと居住可能な惑星を求め宇宙に旅立つ主人公クーパーの気分ですな。
相対性理論や数式といったケレンは手法であり、最終的にはとても普遍なる語りへ回帰するところがSFというジャンルに縋るスノッブの威光主義に対して隔壁を建てているようで、ビッグバジェットの商業映画としてその判断は正しいし娯楽映画としても衆人に門戸が開けていると言えましょう。「ではジャンル映画として如何なものか」と青筋を立ててシャドーボクシングをしている向きもあるようだが、本作にはノーランなりに譲歩を引き出してみた形跡が認められる。それはアポロ計画はソ連崩壊を狙った陰謀であったといきなり面白い話を始める行為であったり、巨大津波に襲われるシーンであったり、ウラシマ効果によるクルーの絶望であったりもするのだが、これらはパリっとスーツを着こなしたノーランが精一杯そしてぎこちなく言ってみたジョークのごとき文脈上にあるものだと私は信じたい。元々デビュー作の『フォロウィング
豊穣のアイコンから滅亡のアイコンに変わったコーン畑。
砂塵に襲われる家屋の局所的な困り方から地球の終焉を類推させる作劇は確かにジャンル映画の露骨な見せ方とは趣向を異にする。だがそれは別の低予算ジャンル映画の手法ではないか。のち寂滅とした宇宙で狂騒的な危機が訪れるわけだが、地球というかクーパー一家の描写ひとつ取っても今回のノーランは礼法によってガッチガチに抑制されているわけではないと感じるのでありますな。コーン畑に火付けを働くところや、最後の本棚のシーンなんてジャンルだのノンジャンルだのを越境した純度の高い映画的感動がある。
「純度の高い映画的感動」なんてほざいておいてアレなのだけれども、私は常々自分が明るくない分野、いや明るい分野なぞ殆どないのだが、例えばハードSFなんてなものを十全に理解して主題文脈用語感想言論を自在に口に出せる人間の脳味噌を研究してみたい願望があって、その研究法にもまったく明るくないので悲嘆に暮れる日々を送りつつもこのたび『インターステラー』を観て救済の手が差し伸べられた気がしましたね。百聞は一見に如かずとはよく言ったもので、例えイーガンの小説がニガテな人にでもノーランは視覚でワガのSFを見せてくれるので分かり良い。物理学者のお墨付きで半ば空想科学の世界を現実に照らしつつ。「見て分からなきゃ言っても分からない」なんて言説には耳を塞ぐとして、SFに自信がある人もそうでない人も、ジャンル映画が好きな人もそうでない人も、ノーランが好きな人もそうでない人も、映画館に走りましょう。しつこいけど『ドニー・ダーコ』を観ておくとお得ですヨ。
| インターステラー オリジナル・サウンドトラック ハンス・ジマー by G-Tools |
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20141126 │ 映画 │ コメント : 0 │ トラックバック : 0 │ Edit