こんにちは、田村です。
SR600 Fujiリポート、3回目にして
まだ距離200kmにも達してません……。

高尾を朝5時にスタートし、
走ったり休んだりしながら進み、
16時頃、ようやく長野原の手前に達しました。
お昼過ぎから15時あたりまでの
いちばん暑い時間帯を、軽井沢周辺で
過ごせたのは幸運でした。
SR600は、スタート時間を任意に
決めることができます。
自分の脚力にあわせ、各地点の通過時刻を予想した上で、
スタート時間を設定するべきなのは
言うまでもありません。
気温もそうですし、絶景区間を夜間に通過するような
もったいないことは避けたいものです。
そのため、深夜0時にスタートする方も
いらっしゃるようです。
僕が5時スタートにしたのは、
それより早いと睡眠がうまく取れないし
(結局、取れなかったのですが)
遅いと渋峠の通過が確実に
夜になってしまうと見込んだからでした。
そのうえで、
44時間で完走する楽観的プラン、
48時間で完走する現実的プラン、
50時間で完走する防波堤プランの
3パターンを想定し、各地点の
通過時刻を予想しておりました。
いずれのプランも、上田に到着したら
翌朝5時まで寝ることにし、
そこで時間の過不足を調整するつもりでした。
そしてやっぱり、序盤は
48時間プランに近いタイムとなりました。
なんとか長野原の手前までやってきたのが
16時。しかし、そこで恐れていた睡魔に
つかまってしまったのです。
長野原は、渋峠の麓です。
本来なら、ちゃっちゃと草津まで登り、
淡々と進まないと日が暮れてしまいます。
調子がよければ、日が暮れる前に
湯田中側へ降りることができるかも〜なんて
夢想してましたが、軽井沢あたりで
とうてい無理だろうと分ってきました。
そのうえさらに、長野原を目の前にして
まさかの仮眠を取るハメに。
睡眠不足と暑さにやられ、
飛びそうな意識を回復させるには
寝るしかありません。
万が一、寝過ごしてタイムアウトになったとしても、
事故を起こすよりマシです。
道ばたの駐車場に木のベンチを見つけ、
スマホのアラームを1時間後に設定して
横になると、すぐに意識が遠のきました。
ふっと目が覚めると、20分ほど
経過してました。体を起こすと、
「これなら走れる」と思えるほどには
眠気が薄れていました。
再びスポルティーフにまたがり、
少し下ると、長野原は大津の交差点に到着。
渋峠に至る国道292号への
分岐です。前回は、ここで通行止めを確認し、
DNFを決意したのでした。
この交差点にはコンビニがあります。
もう時刻は16時半になってます。
少し涼しくなったせいか
食欲がわいてきました。もはや焦ってもしょうがないし、
登りの前に、なにか温かいものでも食べよう、
そう思ってコンビニの駐車場に入っていくと、
見覚えのあるランドヌールがたたずんでいました。

竜胆急行さんこと、Hさんです。
宇都宮スタートの「SR600北関東」を
14日の午前2時にスタートし、僕とは逆に渋峠を下りきった
ところで休憩中だったのです。
Hさんとは、昨年のフレッシュをご一緒させていただき、
その縁で『ランドヌール』にもご寄稿いただいて
おります。そしてAJ宇都宮のスタッフさんであります。
そんな方とSR600中に出会えるとは、
なんという偶然! 別々の日時に、別々の場所から
スタートしたHさんと出会えるとは、
神様もたまには粋なことをするものです。
お盆の時期にSR600北関東に挑戦するとは
聞いてましたが、まさか出会うとは……。
確率的には、きっと数万分の一のできごとでしょう。
ここまでで、宇都宮スタートのHさんは
すでに400kmを走っています。
かなり疲弊した様子でしたが、
次の峠に向けて闘志を燃やしているのが
ひしひしと伝わってきました。
「じゃあ、お互い気をつけて!」
ひと足先にHさんが出発していきました。
その後ろ姿を見送りつつ、
僕も夜間の渋峠越えを覚悟しました。
JR吾妻線の長野原草津口駅が近いし、
もう帰っちゃおうかな〜と思わないでもなかったのですが、
Hさんと出会い、少し会話して、温かい焼きそばを
食べると元気がわいてきました。
渋峠は、草津までがけっこうシンドイのです。
勾配はあるし、クルマは多いし、
景色は単調だし……。ふと対向車線を見ると、
高尾をほぼ同時にスタートした
ランドヌールが駆け下りていきます。
ああ、帰るんだ……。
なんだか雲行きが怪しいし、夕暮れが近いし、
これから標高2172mの峠を越えるなんて
常軌を逸してる。帰るのが正しい選択だと思う。
でも、ここのところ、
僕は「大人の選択」ばかりしてる。
もどかしさが消えないブルベが多かった。
今日はちょっとだけ無茶してみよう……。
18時、ようやく草津の街まで上がったら、
雨がシトシト降ってきた。レインウェアを着て、
のろのろと走り続ける。どんなに遅くても、
どんなに遠く標高がある峠でも、
止まらない限りはいつか越えられるはず。

暮れなずむ殺生河原。
19時になると、ついに日が没しました。
基本、臆病者なので、暗いのは苦手だし、
動物が出てきそうで怖いし、せっかくの絶景が
なにも見えないし、上がるに連れて冷えてくるし……。
たぶん、渋峠が初めてだったら、
先が読めない不安と、絶景を無にする徒労感とで
引き返していたと思います。
しかし、二回ほど走ったことがあるので、
暗いながらも自分の位置が実感でき、
行程を把握できるのが救いでした。
登りはシュミットのハブダイナモライトだけを
点灯させ、バッテリーライトは点けません。
遅いので、シュミット一灯で十分。
長い下りに備え、バッテリーを温存する作戦です。
もちろん予備バッテリーもあるのですが、
下りの途中で消灯したりすると怖いので……。
幸い、雨は上がりました。

19時40分、白根山のレストハウスに到着。
気温は15℃まで下がりました。
お店はもちろん閉まってますが、
自販機の光に救われる思いがしました。
ミルクティーを飲み、たばこを二本吸って、
トイレに寄ってから走り出します。

20時20分、「日本国道最高地点」に到着。
霧が深くなり、あわや見落とすところでした。
感慨もひとしお、と言いたいところですが、
苦手な下りが待ってるので
体が冷えないうちにそそくさと後にします。
距離30km、登り返しのない
道を慎重に下り続けます。

21時40分、湯田中の道の駅に
たどりつきました。その前にある
コンビニでカップラーメン。日中はあんなに暑かったのに、
夜はこの温かさが救いです。
ブレーキ引きっぱなし(だから遅い…)で
しびれた指と、ガチガチに凝った肩周りをほぐしながら、
次なる峠へ向かいます。
上田へは、須坂から菅平高原を越えて向かうのです。
須坂の街で走行距離は250kmになりました。
もう、30分に一回は休まないと
走る気が起きません。
それなのに、待ち受けるのは標高差800mの登り。
上田の街はまだ50kmも先。
ペースが落ち、休憩に継ぐ休憩で
到着時間は読めなくなりました。
峠道を歩くような速度で
進んで行くと、突如、ギャギャギャ〜〜と
絶叫が遠くから聞こえます。
鹿と熊が戦ってるとか? ついに幻聴か?
ほどなくして、それが
クルマをドリフトさせて走る音だと
分りました。そして僕の脇を走り抜ける
へんなクルマ……。もうやめてよね。
真っ暗闇のなか、
歌詞うろ覚えのアニメソングを歌い尽くし、
頭の中は、ビール、シャワー、ベッドと
三つの単語がぐるぐると回ります。
早く上田に着きたい、
ホテルでビール、シャワー、ベッド、
ホテルでビール、シャワー、ベッド……。

菅平高原着、1時20分。
なかなか絶望的な時間です。
辺りはホテルが多く、こんな時間にも、外で
キャッキャッと騒いでる若者たちを見かけました。
自転車に乗ったオヤジの出現に、
さぞ驚いたことでしょう。

上田のホテルにたどり着いたのは
2時半でした。
送っておいたリュックから充電器を取り出し、
ライトのバッテリー、スマホ、カメラをセット。
そして……。

念願のビールです。
もうこの時、予定の5時に起きるのは
あきらめてました。むしろ、SR600自体を
あきらめていました。
いちおう充電はセットしたけど、
もうここまででイイじゃん。よくやった、俺。
500ml缶二本で轟沈したのでした……。
果たして僕は再起動できたのか?
またDNFなのか?
続きは次回ということに
させていただきたいと思います。
(前回と同じですね……)