「一晩で1カ月分のビールが売り切れたよ」
'03年、アデレードで聞いた話である。ワインが有名な南オーストラリアの州都は、それまでラグビー不毛の地だったが、'03年W杯では2試合を開催。その一つ、アルゼンチンvs.アイルランド戦の夜、町のすべての酒樽が空になった。
実はこれは特別な出来事ではない。ラグビーW杯では、緑を着こんだアイリッシュ軍団を筆頭に、白いイングランド党、赤いウェールズ党、黒いNZ党など強豪国のサポーターが大会期間中ずっと開催国に滞在し、観光し、飲み続ける。W杯6大会をフル取材した経験で言わせていただけば、'19年の日本でも、彼らは間違いなく同じ行動を取る。
世界3大スポーツイベントの一つ。これはラグビーW杯を語る常套句だが、実は幾つかの点で世界一のイベントである。
大会中に試合のない日が多いことのメリットとは?
まず大会期間。五輪は通常週末3回の17日間、サッカーW杯は今年のブラジル大会で32日間、対してラグビーW杯は週末7回、期間は1カ月半に及ぶ。
そして最大の特徴は、大会中に試合のない日が多いことだ。今年のサッカーW杯では32日間のうち7日。来年のラグビーW杯イングランド大会では44日間のうち20日もある。メディアにとっては痛し痒しの日程も、ホストにとっては美味しい。ラグビー強豪国は平均所得の高い国が多い。懐の温かい観戦客が、観光地でお金を落とす時間がたっぷりあるのだ!
「北海道から九州まで、バランスよく開催地の申請をいただいたと感じています」
5日、'19年W杯開催都市立候補地の発表会見で、組織委員会の嶋津昭事務総長は、そう言って胸を張った。立候補した14都市には、東日本大震災で大きな被害をうけた釜石市と仙台市の名もあった。
「ラグビーW杯は被災地が復興した姿を世界に示す絶好のチャンス。仙台と釜石が連携して、復興を発信できる」
震災の際には世界中のラグビー仲間が復興へ物心両面で支援してくれた。東北での開催は、世界の人々が被災地を訪れる大きなきっかけになる。国境を越えた友情、地域の活性化、子供たちの希望……開催の意義は多岐にわたる。だがラグビーW杯の隠れた魅力は実利の旨味。5年後へ、開催地では酒樽の拡張を考える必要があるかも。無論、東北以外もだ。
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