米中西部ミズーリ州ファーガソンで今年8月、丸腰の黒人少年(18)が白人警官に射殺された事件で、地元大陪審は24日、同警官を不起訴とした。
【ニューヨーク=黒沢潤】米中西部ミズーリファーガソンで今年8月、丸腰の黒人少年(18)が白人警官に射殺された事件で、地元大陪審は24日、この警察官ダレン・ウィ…[記事詳細へ]
■大陪審、白人警官を不起訴<11月25日>
米中西部ミズーリ州ファーガソンで今年8月、丸腰の黒人少年(18)が白人警官に射殺された事件で、地元大陪審は24日、同警官を不起訴とした。大陪審(12人)は白人9人、黒人3人で構成されている。
《黒人少年射殺事件》
米中西部ミズーリ州のセントルイス近郊で8月、警察官が丸腰の黒人青年(18)を射殺した。何らかの原因で言い争いになり、数発発砲した。射殺に反発する地元住民ら数百人が警察署の前に集まり抗議した。のちに全米に抗議デモが拡大。軍隊並みに重武装した警官隊が現場でデモ鎮圧に乗り出すなど、人種間対立を先鋭化させかねないとの懸念が強まった。
射殺から1カ月
■改革案提示も…くすぶる怒り
事件から1カ月。警察組織の見直しや、交通違反の罰金に依存する市財政についての改革案が市議会に提示されたが、黒人住民らの怒りはなおもくすぶり、議場に押し寄せた一部住民が市長らに批判を浴びせる光景もみられた。
■「改善案」とは?
・白人主体の市警の捜査に黒人差別がないかを審査する委員会の設置
・黒人側の批判が強い交通違反の罰金収入に依存する市財政見直し
常軌逸した地元警察
■ホルダー司法長官は9月4日、住民と地元警察の間に「根深い不信感」があったと指摘、ファーガソン市警の日常的な活動に違法性がなかったか捜査開始。
ことの発端は…
■丸腰の黒人青年を射殺<8月9日>
米中西部ミズーリ州のセントルイス近郊で9日、警察官が丸腰の黒人青年(18)を射殺した。何らかの原因で言い争いになり、数発発砲した。射殺に反発する地元住民ら数百人が10日、警察署の前に集まり抗議した。
⇒米メディアによると、射殺されたのはマイケル・ブラウンさん。今年、高校を卒業し、大学進学を控えていた。事件が起きたファーガソン地区は黒人が多く住んでいる。警察官は9日午後、別の1人と一緒にいたブラウンさんとの間で路上や警察車両の中で言い争いになったという。
住民の怒りの背景
■支配層はほとんど白人
住民の怒りの背後には、地元警察への根深い不信がある。セントルイス一帯は白人と黒人が対立してきた歴史があり、ファーガソンは住民2万1000人の3分の2以上が黒人だが、市長や市警本部長ら支配層は白人が占める。警察官も全53人のほとんどが白人で、黒人は3人しかいない。自動車を停止させて行う職務質問やその後の逮捕の対象は、9割が黒人に集中していた。
■重武装の警官隊を投入
警察は抗議デモに対して装甲車両に守られた重武装の警官隊を投入し、怒りに油を注いだ。警官隊は軍服のような戦闘服と暗視ゴーグル姿で、催涙弾や特殊閃光(せんこう)手榴弾(しゅりゅうだん)などを使用した。背景には、中枢同時テロ以降、有事に備え地方警察にも軍隊並みの装備を供与する動きが連邦政府に広がったという事情がある。
■「強盗」映像公開で再燃
射殺される直前にブラウンさんがが近くのコンビニエンスストアでたばこの強盗を働いたとする防犯カメラの映像も公開。住民は射殺の事実を正当化しようとする行為だと反発し、沈静化していた抗議デモが再燃する可能性が出てきている。
⇒事件は人種差別問題の解消が今なお遠い米国の現実をあらわにした。
デモが拡大
⇒女性参加者の一人は、ファーガソンの警察と白人優越主義者の秘密結社クー・クラックス・クラン(KKK)は同じだと批判するプラカードを掲げ射殺事件に抗議した。
発砲した警官の名前を公開〔15日〕
◆ファーガソン市警は15日、射殺した警官はダレン・ウィルソン氏だと発表した。白人とみられる。住民側の報復を恐れて名前の公表を拒んできたが、住民の批判に屈した形。
⇒ファーガソン市警は当初12日までに警察官の名前を公表するとしていたが、急遽取りやめた。ジャクソン本部長は「(報復の)標的になるだけだ」と主張していた。
異例の非常事態宣言〔16日〕
州兵を投入〔17日〕
■ミズーリ州ファーガソンで17日夜、黒人住民数百人が警官隊と激しく衝突。現場付近には銃声も響き渡り、近くのコンビニ店などが放火された。事態悪化を懸念するニクソン州知事は現場に州兵を投入すると発表。ただ、混乱が早期に収束するか不透明だ。
警官と対峙するデモ参加者ら=17日、米ミズーリ州ファーガソン(ロイター)
地元の抗議デモ鎮静化へ〔21日〕
⇒沈静化の裏に…
現地に派遣された、黒人初の司法長官であるホルダー氏は地元の黒人団体代表者50人に対して自身の差別体験を紹介し、公正な捜査を期すと熱く語っていた。
「非常事態宣言」解除〔9月4日〕
⇒警察官の処罰を求める住民側の抗議活動は続いているが、州兵の動員に発展した混乱状態は一応収束したと判断。
州警察が一時的に代行したファーガソンの治安権限も地元の市警に戻る。